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近県

2023/12/30(土)   妙見山 (377m)   千葉県鴨川市
近県の山のカテゴリーに入れていますが、千葉県は近県ではありません。申し訳ないです。
さて、なぜ近くもなく、高くもなく、有名でもない妙見山に登ることになったのかには理由がある。
いつも年末には慰安のために近場の温泉に一泊するのであるが、今年はいきなりダンナが千葉に行くと言いだした。
なぜかと問うと、千葉県は滝でも山でもまったく足跡を残していない、というのである。
そりゃそうだ。千葉には百選の滝も百名山もない。そんな場所にわざわざ行く理由がない。
しかし、滝めぐりをしているからには、空白地帯があるというのもちょっと気にはなっていた。
千葉県に有名な観光滝がないわけではないのである。私としても空白を潰しておきたい場所ではあった。
だが、滝はいいとして、山は?
千葉県の最高峰は愛宕山といい標高408mしかない上に、自衛隊の施設内にあり、許可なくしては登ることはできない。
あと、めぼしい山はないかなぁ、とダンナが探し出したのが妙見山だった。
この山は私が見ておきたい養老渓谷の粟又の滝からそれほど遠くない場所にある清澄寺の裏山で、30分も歩かずに山頂になる。
ま、滝巡りついでにはちょうどいいではないか。
深く考えずに決めた行先であるので、深く考えずにサラっと読み流してほしい。

さて、当日。
ナビに案内してもらうままに自動車を進める。
この日はまだUターンラッシュの反対方向なので渋滞知らずで都内に入ることができる。
ナビは、首都高を通り、アクアラインを通って千葉入りせよ、とのたまう。
えーと、アクアラインってば、神奈川県の川崎あたりから東京湾を渡るんじゃなかったっけか。
なんで千葉に行くのに神奈川回るの?
すみません、田舎者なので、地図が頭の中でできあがっていません。
ともかく、ナビの案内する通りに、これが首都高か〜、とお上りさんのようにキョロキョロして、わー羽田空港のそばなんだね、とワクワクする。
と、とたんに自動車がストップした。
大渋滞だった。
しばらく動かず、ノロノロ、ノロノロと海底に入って行き、ノロノロ、ノロノロと海ほたるを通り過ぎる。
海ほたるを過ぎたあたりでようやくマトモに自動車が動き始めた。
事故渋滞という表示があったが、年末のアクアラインはもしかしたらいつもこんな感じなのかもしれない。
もともと首都高あたりでもっと渋滞しているだろうと思っていたので、それほどイライラもしない。
問題はその後でして。
あとで調べたら、どうやら首都圏中央連絡自動車道の木更津東ICで下りたらしい。
なんか、田舎である。
千葉といえば、けっこう都会だろうと思っている私としては、この風景は意外だった。
正午近くだったので、とりあえず下りたすぐそばの道の駅木更津うまくたの里で昼食。ここで食べておいて本当によかった。
ナビに清澄寺を入れていたのだが、そこから先はほぼ山の中だった。
最高峰が408mしかない千葉県なのに、どこ見ても山しかない道をうねうねと走ることになってしまった。
ざっくり言えば国道410号、465号、県道81号を乗り継いで行ったのだが、きっと大きな町に出ると信じて走って、結局小さな集落しかなかった。
困ったのがガソリンである。
絶対に町があると思っているので、ちょっと高そうなスタンドには立ち寄らないでいたら、ホントーに山の中になってしまった。
年末でお休みの店もあるし、仕方なくなんとか開いているスタンドに入ったら、信じられない値段のガソリンを入れる羽目になってしまった。
なんてこったい。
結局清澄寺までずっと山の中だった。千葉、恐るべし。

午後1時半頃にようやく清澄寺の駐車場に到着。
これより先は有料駐車場となります、と書かれた駐車場に入れる。
年末なので、駐車場もガラガラな状態だ。
道に沿って歩き出すと、あら、冬桜が咲いている。
青い空にふんわりとした花が美しい。
少し歩くと、ドライブイン重兵衛があり、その脇の道を進んで行く。
門前っぽくなってきたな、と思ったら、赤い山門が出現した。
ここまで、駐車場から徒歩5分ほどである。
山門には仁王様がいらっしゃり、しっかり睨みつけてくださっている。
境内は、二日後の初詣にむけて、出店の準備中。
本堂の彫刻は見事で、屋根の左右の破風の下には小鬼らしき像もある。
境内の手前には国の特別天然記念物である大スギもすっくと立っている。
幹回りは根本で17.5メートル、樹高47メートル。
樹齢は不明だが千年杉と呼ばれている。
新潟にも将軍杉という古木があるが、雪国の古杉は枝をぐねぐねと曲げながら延ばしているので、これほどまっすぐに伸びた巨木には圧倒された。
境内に入り右手を見ると、茅葺の屋根の小さな門がある。
中門というのだそうで、江戸初期のものだとか。
これをくぐると、左側にこれまた大きなクスの木があり、鴨川市の天然記念物に指定されている。
青い空に緑の葉っぱがとても美しい。
さて、山である。
よく調べていないので、どこが入り口かまったく分からない。
きっとこの階段じゃないか、と、中門のそばにある階段を登ってみたら、単にお稲荷さんの社に導かれただけだった。
境内に戻って、ダンナのアプリで位置を見る。
便利だ。方向と距離が分かれば、まったく知らない場所でも行きつくことができる。
山の入り口は、本堂に向かって左手の渡り廊下をくぐった先にあった。
13時53分登山開始。
よく整備された階段状の道がついている。
年末なのに、アザミが咲いている。
まっすぐな杉が天に向かって伸びている。
とにかく杉がまっすぐだ。
おや、ミョウガの葉っぱに似た植物だなぁ。
どうやら花ミョウガらしい。
ゆるゆると階段は続く。
なんともまあ、まっすぐな杉。
ゆるやかに道が右に曲がっていく。
暖かくて、ちょっぴり汗ばんだりして。
むむ、この黄色い花は、コナスビ?
いや、葉っぱからすると、どうもカタバミらしい。
さらに少し登ると、先に建物が見えてきた。
おやまあ、スミレまで咲いている。
建物の手前に石塔があった。
登山口に説明看板があったが、1424年に立てられたもので千葉県の指定有形文化財だそうだ。
ちなみに塔ではなくて、はば辺に童という漢字で紹介されていた。
建物に到着。どうやらここが山頂らしい。
14時過ぎに到着。わはは、10分の登山時間。
三角点でもないかと探したが、無かった。
建物の説明もなかった。
眺望もないので、戻る。
本堂裏にはお地蔵さんがいらっしゃって、その上に鳥がとまっていたのが、なんともほほえましい。
本堂では、まだ真っ赤なモミジがあった。
駐車場に戻る途中に海が見える場所があり、広重が旅した清澄という看板があった。
ここから見える風景を見事に描いた広重の絵もある。
もうちょっと別角度だね〜なんて言いながら見比べると面白い。

私としては、まったく予備知識がないまま来た清澄寺である。
清澄寺は日蓮上人が12歳から修行したお寺さんだそうで、年末の我々が行った時でも、参拝者が絶えない感じだった。
建物なども歴史を感じる古刹である。機会があったら尋ねてみるのもいいだろう。
でも、想像以上に山村です。はい。
さすがに房総の山で、雪の新潟からしたら夢のように暖かい場所だった。まさかアザミやスミレが晦日に見られるなんて思っていなかった。
思いついて行った山のわりに、勉強になるよい山でした。

妙見山
  
ナビに入れるのであれば、清澄寺で入れれば確実に連れて行ってくれる。
ただし、東京方面から行くと確実に木更津東ICで高速道路を下りて、国道410号、465号、県道81号で房総半島を南下することになる。
この道にはガソリンスタンドが少ないので注意が必要だ。もしガソリンの残量が少ないと思った時は、自分の持っているカードのガソリンスタンドでなくても、早めに給油することをオススメする。
山は、本文中でも説明したが、清澄寺本堂に向かって立って、本堂の左側に進むと渡り廊下が頭上にある。その下をくぐるとすぐに登山口がある。
スニーカーでも楽々登れる。


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