新潟の滝116

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2007/10/28  県道335号の滝たち 新発田市
10月も最後の日曜日である。前の週の連休が雨でつぶれてしまったために、我々は紅葉を見たいという欲求で膨れ上がっていた。
このままでは、マトモな紅葉を見ずに今年の秋は終わってしまうんじゃなかろうか。
さりとて、日曜日1日しかないこの週末は、どこか遠くや山奥に行くわけにもいかない。ついでに言えば、歯石取りで入院させられた猫をつれもどしに動物病院に行く用事までできてしまっている。近くで紅葉のいい場所はないか。
前日は台風くずれの雨が終日降り続き、夜もやはり雨だった。ほとんど諦めていたのだが、朝になってみたら青空が広がっていた。これは出かけなければ絶対に後悔する。だけど、どこに行こうか。

ぼんやりとだが、とりあえず方向だけはダンナが決めていた。
内の倉湖のほうはどうだろうか。
内の倉湖は加治川の支流の内の倉川にあるダムで、上流方面に向かえば滝に出会えるかもしれない場所である。七滝という沢登りでもしない限り見られない滝があるのもこのあたりで、前々から行ってみたいと思っていた。
よし、ではそちらにしよう。
しかし、滝があるのかないのかわからない場所だけをターゲットにするのもちょっと心もとないから、滝があると分かっている場所にも行ってみよう。
加治川のものすごく上流にある湯ノ平温泉まで行く道の途中にある、観音滝というのが、確実にわかっている名前のある滝だ。
ただ問題は、数年前から湯ノ平温泉まで行く林道が通行止めになっているのだ。それが解除になっているかどうかはわからない。そうでなくても、林道の終点から湯ノ平温泉までは2時間弱の登山道を行かなくてはならない。観音滝のある場所も、少なくとも1時間は登る必要があるだろう。林道が閉鎖されていたら、行くのは無理である。行かずに心配ばかりしていても仕方がないので、ま、とりあえず行ってみよう、ということになった。

さて、紅葉狩りを楽しもうという自動車が多いせいか、かなり混雑している国道49号から県道14号に出て、三川温泉を通り過ぎて県道335号へと右折して入る。この曲がり角に林道は通れませんと大きな看板か出ていたが、何台か自動車が入って行ったので、行けるところまで行ってみよう、と、自動車を進めた。
県内でも色々な道を通っている我々だが、この県道335号には入ったことがない。集落は比較的すぐに途切れるが、舗装された快適な道である。
しばらくすると、滝谷森林公園の文字が現れ、ここで一旦停止。公園に寄ってお茶を濁すか、それとも先に進むか。道路にはゲートが設けられているわけではなく、まだまだ進めそうなので、先に向かった。
風景は山の奥といった様相になり、秋らしく色づいた木々が道路の両側を覆っている。
と、その木々の向こうに滝発見。「あ、滝!」
すぐさま自動車ストップ。
道路の左側をずっと加治川が流れているのだが、その対岸の岩壁から滝が落ちている。
自動車を降りて木の向こうに目を凝らすと、なかなかいい落差の滝だと分かる。昨日までの雨の水を集めた滝なのか、それとも通年流れている滝なのかはよく分からない。なんとか木を避けて写真に撮れる場所はないだろうか。
さんざん探したが、無かった。どうしても手前の雑木が邪魔になる。だぁぁぁ、ストレスだぁぁぁぁ。
    
こんな感じに見える。赤い矢印の先が滝。
ストレスを抱えながら、さらに自動車を進める。
左手に水道施設なのかプールのような貯水槽を見てほんの少しして、またしても滝発見。「滝!」
すぐさま自動車ストップ。
ちょうど白い建物のある場所で、飯豊川第一ダムと書かれていたと思う。ダムと言っても、堰堤くらいの小さなものである。その下流がわの、やはり対岸の岩壁からこちらは絶対に通年落ちているだろう立派な滝があった。
  
この建物あたりに駐車して、川の向こう側の岩盤を見ると滝がある。

    
滝全体と落ち口。
落差にして20メートル近くは行っているだろう滝で、ちょうど落ち口に色づいた木があって美しさを増している。
建物の裏側に行く感じで川に近づくと、落ち口は隠れるのだがほぼ全容を見ることができた。
この滝の落ちている岩壁は、あちこちから湧き水のような水流がしたたっていて、ものすごく水を多く含んだ場所だと分かる。
  
加治川の向こう側の山。綺麗に色づいている。
ダンナが建物の裏側に行っている間に、私はその湧き水みたいな水流のもっとよく見える場所はないかと歩いてみた。そして、あら?これって下まで行ける?というルートを発見してしまった。
言っておくが、県道335号線は加治川よりかなり上を走っている。道をはずれると10メートルくらい滑空して加治川にダイブすることになってしまう。つまり、対岸の滝を見るために河原に下りるというのは不可能に近いのである。
だが、みつけちゃった。ダンナを呼んで、手袋に登山靴というしっかりした装備をして、その道を行く。詳しく書くと事故になりかねないので、場所は言いませんが、下まで下りて撮影した画像が下のもの。ただし、河原までは下りられなかった。まだかなり下があり、涸れ沢を利用して下れそうだとダンナが言ったのだが、やめさせた。こんな場所で事故をおこされても助けようがない。
    
嬉しいことに下まで下ったご褒美のように滝に虹がかかっていた。

    
ちなみに、同じ岩盤の湧き水のような水流にも虹がかかっていて、なかなか綺麗な眺めだった。
もうこれだけで充分という気分になったが、まだまだ県道355号は先に続いている。もしかしたら、もっと立派な滝に出会えるかもしれないし、などとちょっとだけ期待して先へと自動車を進めた。
発電所らしい施設の脇を通り、片側交互通行の信号付きトンネルを通り、進んで行く。
  
これは帰りに撮影したトンネル。というか雪覆洞である。赤信号が長い。
と、大きなダムが現れて、たくさん自動車が止まっているのが目に入った。それに、道をゲートが塞いでいる。どうやらここが終点らしかった。加治川治水ダムである。
  
林道を閉鎖するゲート。たぶん開通の見込みはない。

  
ダムの反対側まで行って撮影した加治川治水ダム。湖畔の緑の平らな部分がダム公園。
このダム湖の周りをぐねぐねと進んでさらに上流までかなり行かないと加治川ダムにはならない。そこからさらにさらに徒歩で1時間登らないと観音滝にはならない。こりゃあ、観音滝は諦めないとならないな。
それにしても、この自動車の量はなんだ。ただダムに観光に来ただけとは思えない量である。よく見ると、ダムの手前に焼峰山、ダムの向こう側に蒜場山の登山口がある。この自動車は登山者のものか。いや、たった今到着した自動車からおじさんが自転車を運び出して、あらあらゲートを乗り越えて自転車で走って行った。おおー、危険な林道を自転車で走りぬけ、湯ノ平温泉まで行くつもりか、いや、それ以前にまだあるのか湯ノ平温泉。
とにかく、加治川治水ダムのすぐそばは自動車がいっぱいで止められない。せっかくだからダムの上を歩いてみたいと駐車場所を探してみると、ダムの下がわに向かっていく道があった。その道でダム湖の湖畔方面におりて行くと、ものすごく立派な公園が整備されていた。
公園の駐車場に自動車を入れて、そぞろ歩いてみることにする。
ダム湖の対岸の山は綺麗に色づいていて、まさに秋まっさかりである。今日のドライブの第一の目的である紅葉を見ることは、これで充分に果たされた。
    
ダム湖の対岸の山の紅葉。
公園の奥、ダムに近づく方向に進んで行くと、いい水音がした。見てみると、ちょっとだけ人工的に護岸されている滝が流れ落ちていた。なーんだ人工の滝か、と思いながらも近づいてみると、なかなか立派である。もともとこういう形で落ちている滝を公園が借りた格好だ。
      
  
ダム公園の滝。真ん中の大きさ比較からすると、落差10メートル以上ある。
    
  
あまりに人工的な場所にあるので人工に見えるが、自然のままの滝だ。ただし、流れの下流は見事に公園の芝生になってしまう。
滝の落ち口あたりをよく見てみると、あら、この公園のトイレとおぼしき建物が見える。やだわ、トイレの滝みたいじゃないの。だが、遠くから見ると滝の上流がわが谷間になっていて、あの水量が落ちているとしたら、トイレの向こう側にも滝がありそうな気配だ。
公園のテーブルつきのベンチで紅葉を眺めながらカップラーメンとコンビニおにぎりのお昼をとってから、トイレのついでに滝を探してみることにした。
公園からトイレは下の滝の分だけ登る必要があるので、自動車で近づく。それでも道路から階段を登らないとトイレには行けない。けっこう不親切なトイレだ。
行ってみると、どうもこのトイレはあの林道のゲートから近い場所にあるらしい。駐車場も公園やダムのそばよりもずっと広いものがあるのに、ゲートで閉ざされているので自動車では入って来れないのだ。返す返すも不親切だ。せめてゲートをトイレの向こう側にしてくれれば、駐車で困ることもないのに。
で、滝、これは探すまでもなかった。トイレからすぐに見える。
明らかに下の公園の滝の上流である。つまり、沢が林道とトイレで分断された形なのだ。
ただ、ちょっと曲がった谷になっているので、滝全体が見通せるわけではなかった。
      
  
トイレの駐車場から撮影した、公園の滝の上流。中央の写真のダンナと滝の間にあるのが閉鎖されている林道。右は滝のある谷の全体図。
この滝と同じ岩盤には湧き水のように水が流れ落ちていて、岩盤全体が濡れている感じだった。
    
トイレのそばの岩盤は全体が濡れた感じ。右側の赤い矢印が公園の滝の上流で、左側の矢印が上の写真のダンナのそばにある水流だ。
ダムのそばに空きスペースをみつけてダムの上を歩いてみた。ダムは大きく、奥までずっと続いている。熊鈴を鳴らした登山者が蒜場山から下りて来た。調べてみたら登りで4時間半以上かかる山なので、きっと夜明けと同時くらいに登り始めたのだろう。
ダムに注ぐ沢の向こう側も秋まっさかりである。このダムの奥は飯豊山だ。
  
日本じゃないみたいな風景。ダムに注ぎ込む、小俣ノ沢の風景。
さて、ダムの上も歩いたし、拾い物の滝もあったし、今日のドライブはここまで。帰りの途につきましょう。
自動車をスタートさせて、来た道を戻る。
と、一組のカップルが橋から下を覗いているのに気がついて、何だろうと車窓から見てみると、あら、滝。
すぐさま自動車ストップ。
なになに、爼倉山登山口?
  
爼倉山の登山口。登り2時間かかるらしい。
数台の自動車が止まっていて、登山グループを待っているバスまで駐車していた。
カップルが覗き込んでいた橋から下を見てみると、雑木で阻まれているが急流が勢いよく流れている。上流のほうは確実に滝になっていそうである。
橋のたもとから上流に向かえる道があったので入ってみることにした。ちなみに、この道は爼倉山の登山口とは別である。
入ってみたら、これがもう、ぐちゃぐちゃのドロドロの道で、歩くのも困難。
だが、すぐそばの琴沢の水が綺麗なので、とにかく進んでみた。
何かの水道の施設なのか、朽ち果てかけた橋などがかけられている。水路らしいコンクリートの側溝の上を平均台よろしく進んで行くと行き止まりになった。
水流は綺麗だし、急な流れではあるのだが、滝というにはちょっと落差がない。でも、綺麗。来てよかったなぁ。
    
  
琴沢の流れ。右は行き止まりになっていた場所。
        
  
琴沢にも水が流れ込んでいる。中央は水路なのか、コンクリートの側溝。下がなく、橋状になっている。右は中央の写真の水流をアップにした。
    
  
秋の実、見事に紫色。まだダイモンジソウが咲いていた。
  
これは、琴沢橋から下流方向を見下ろした。流れが急だ。
これで今日のドライブのしめくくり、と思っていたのだが、さらに自動車を進めたところでまた見つけてしまった。「あ、滝」
今度は加治川とは反対側の斜面の沢が小さな二段の滝を形成していた。
うまい具合に何かの建物をたてるのか造成されていて駐車スペースが広々とあった。
難なく自動車ストップ。
    
  
小さいながらも見事に二段の滝。夏の葉の繁っている時には見つけられないかもしれない。
さすがに滝はここまでだった。もうすぐに集落に入ってしまう。
来る時に県道14号に出る直前に湧き水らしいものをみつけていたので、そこに立ち寄ってお昼にあいたペットボトルに水を汲んだ。
    
県道335号に入ってすぐ右側にある休憩所ふうの櫓が目印の水汲み場。
その間、ずっと近くの家から犬の吠え声が聞こえていて、てっきり見知らぬ我々に向かって吠えているのかと思っていたのだが、振り返って納得。なんと猿が庭先にいたのだ。
  
猿。慌てて撮影したのでピンボケ。でも、赤ちゃんがくっついているのがわかるでしょ。
よく見ると畑などはネットが張られていて、猿害がひどいのかもな、という感じだった。

紅葉も滝も猿も見て、大満足になったため、この先にある内の倉ダムまでは行かないことにした。そっちに行ってもこれくらい滝があるかもしれないが。
お楽しみは次にとっておこう。
この県道335号は、ちょっと滝を楽しみにドライブ、というには丁度いい道だなぁ、などと思いながら秋の一日を終えた。


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