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旭滝
ダンナ撮影。
落ち口から落ちた水が岩盤に当たって、
美しく分岐している。
「新潟の名水」には二条の滝の
写真が出ているが、
我々が行った時にはこの一条のみ。
本の写真より明らかに水量が多い時に
行ったはずなので、
この滝のとなりに落ちていた滝は、
上流の流れが変わったか何かして、
消滅したのかもしれない。



大きさ比較写真。
赤い○の中に私が立っています。
が、豆粒です(笑)
これも対岸側にいたダンナの撮影。




こちらは私の撮影。
大きさ比較で立っている場所からの撮影だ。
飛沫浴び放題の場所である。




滝つぼ。
立ち位置より少し下になる。
足場を選べば降りられそうだったが、
やめておいた。




ダンナ撮影、滝の中段部。
ここが一番綺麗な所。









西山日光寺には地味だが
清楚な花が咲いていた。

2004/5/23  旭滝  上川村 (落差25メートル)
この滝は「新潟の名水」という新潟日報事業社から出ている本の中の滝のうち、佐渡を除いて唯一未訪問の滝であった。
前々から行きたいとは思っていたが、正確な情報が得られない滝でもあった。
本の出版時にはまだ林道が工事中で徒歩でかなりかかるという話だったが、風の噂で昨年秋に滝の近くまで通じたという情報が流れて来た。これは、ぜひ行ってみなくてはならない。
事前の下調べのおかげで滝へ向かう道は迷わずにすんだ。新しい林道なので、手持ちの地図では、点線状態、登山道の扱いでしかない。どこから入るのかよくわからなかったのである。
行きかたについては、下の交通欄で解説するとして、林道を進んで行くと、いきなり右側に古めかしい山門が見えた。
これが旭滝を目指す上での重要なポイント、西山日光寺の山門である。中には仁王像がビニールで保護されながら睨みをきかせていた。
この奥に日光寺の薬師堂があるが、それはあとまわし。山門の前のスペースに自動車をとめさせてもらって、山門近くにあった矢印の通りに滝を目指した。
  
西山日光寺山門。この中に仁王像がある。

  
旭滝の入り口。手前は林道。この日の工事の進行状況では、入り口まで舗装してあったが、そこから先は未舗装。
山門を右にみながら坂を少し上ると、「旭滝20分ちょっと」と書かれた矢印が出てくる。その矢印にそって林道からはずれる。
あとは山道である。
前夜に雨が降ったのでしっかりとしたトレッキングシューズをはいて行ったのだが、やはり滑りやすい。なだらかに下る道は、杉の落ち葉が土の上に積もっている状態だ。
  
滝への山道。ずっとなだらかに下っている。
しばらく歩くと初老のご夫婦らしい2人が滝の方から登って来た。あいさつをすると、「ヒルがいるから気をつけなさい」と教えてくれた。
ヒルか〜。私は見たことがない。気持ち悪いという評判だが、いったいどんな形をしているのやら。
とにかく、いるというからにはいるのだろう。どう気をつけていいのかわからないが山道を下って行った。
少しするととても小さな沢に出る。跨げる程度の沢だが、少し道が分かりづらくなっている。沢にそってちょっとだけ下って行くとすぐに反対がわに道の続きが見えた。
そこからさらになだらかに山道は下る。これは、帰りはキツイかもしれないなぁ、と、思っていると、さわさわという音が聞こえた。
道が右にカーブした所で、先行していたダンナが「あった」と私を振り返った。
ダンナの所まで行くと、あったあった。木々の間から、予想よりかなり大きい白い滝が落ちているのが見えた。
  
最初に滝が見えた所から旭滝を望む。直線にすれば近い。
すぐそこにある。と、見えた。
ここからが長かった。いや、距離的には短いのだと思う。が、滝に背を向けるかんじで急な坂を下りることになるのだ。これがかなり急である。しかも、雨後のため滑りやすい。足を踏み外すと、一気に下まで転げ落ちて、泥だらけになるだろう。慎重に下りて、沢に出た。沢の上流に滝が落ちているのが分かる。『旭滝』と書かれた白い杭もあったが、ここから滝へはかなり遠い。沢を左手にみながら滝に向かって進むように道はできている。
  
左下に旭滝と書いてある杭が写っている。中央の木の向こう、白く光っている部分は滝。
しかし、である。途中で道はなくなっていた。沢の向こうになにやら古い建物らしきものが見えるが、きっと沢を渡って行く必要があるのだろう。
道がなくなっている所で滝が見えればそれで充分満足の位置までは来ているのだが、なんと、滝のまん前に立派な2本の大木がたちはだかっていて、見事に滝を覆い隠しているのである。沢は見える。滝の音も聞こえる。飛沫だって見える。だがしかし、滝本体は見えない。
なんとかして対岸に出たかった。飛び石状態の岩を渡れば行けないこともない。が、沢の勢いが強くて、渡れる場所が無いのである。
冗談ではない。滝を前にして滝を間近に見ずに帰るのか?
ついにダンナが意を決して、少し距離のある岩をジャンプした。向こう側の岩がすべりでもしたら、カメラごとアウトの状態である。が、なんとか成功。
私・・・。私はどう考えても無理だ。
ダンナに写真を撮影して来いと言って、滝に向かわせ、私は下流に渡れる場所が無いか探すことにした。
かなりウロウロしたが、渡れそうな場所は無かった。
ダンナのジャンプした場所まで行って、私もチャレンジしようと足を延ばしてみたが、どうしても踏み切れなかった。
ならば、上流である。滝に向かって歩くしかない。
道が寸断されている場所は沢が砂地の浅瀬になっていて、なんとか進めなくもない場所である。その先の行く手を阻む大岩は、生えている植物をつかんでへばりついて登ればその先の2本の大木の根元まで行けそうな気配だ。
その時点でヒルがなんぼのもんじゃ、目の前の滝に勝るものはない、という気分になっている。
悪戦苦闘して、浅瀬を渡り、岩を回り込み、道なき茂みを進んで大木の向こう側に出たら、滝が目の前に広がった。
飛沫だらけだった。
雨のように滝の飛沫が降りかかって来る。
ものすごく嬉しいのだが、そのままそこに留まっていたらびしょ濡れになる。デジカメもびしょ濡れになってしまう。あわてて写真を撮影。
それでも懲りずに木の根元からさらに上に行くと滝つぼが見えた。滝つぼは浅く、ほとんど無いといっていいくらいだった。
気がつくと、沢をはさんで対岸にダンナがいる。
彼は滝に向かって左側から滝を見て、私は右から見たということになる。ダンナのいるほうは、崖になっていて、滝つぼまでは下りられないようだった。私のがわからは踏み跡もないシダをかきわければ行ける可能性もあるようだったが、やめておいた。これ以上ビショビショになりたくない。
わたし、どうやってここまで登ったんだ?という状態のシダの中、元来た場所に戻り始めた。が、途中、足場にしていた岩が滑って、片足だけ水につっこんでしまった。
自慢じゃないが、濡れるのがキライな私はほとんど足も濡らしたことがない。ここまで濡れてしまうのは珍しい。そして、濡れたことでとんでもないことになる。
対岸からダンナが行きより怖い思いをしてなんとか戻って来た。
あとは、えんえんと登って帰るだけである。
まずは急な登りになる。そこで初めて、行きに出会ったご夫婦がヒルに注意しろと言ったのか分かった。急な登りということは、地面が目線に来る。その目線の先にヒルがうにょうにょ見えるのである。これは怖い。なにせ、普通のナメクジみたいにひらたくはいつくばっているのではないのだ。立っているのである。なにか理不尽なものさえ感じる。空中をめざしてうにょうにょしながら立っているのだ。寒気を感じた。
途中の休憩で気になって靴を見てみたら、どひゃ〜、いる。くっついている。靴だけじゃない。靴下にも来ている。悲鳴をあげてダンナに取ってもらった。
靴下にくっついているやつは、かなりの力でひっぱっても取れなかった。もしこれが靴下でなく、皮膚だったとしたらと思うとゾッとする。ヒルには塩がきくそうだから、これからは持参しなくてはなるまい。
登りはキツイし、目を下にするとヒルがウニョウニョしているし、自分にくっついているかもしれないし、とにかく体力的にも精神的にも疲弊した。
自動車に戻って、恐る恐る靴だの靴下だのジーンズだのを調べると、濡れたほうの足だけ集中してヒルがくっついていた。幸い靴と靴下だけだったが、とにかく気持ち悪い。濡れなかったダンナの両足と私の片足にはヒルはついていなかったので、やはり濡れるというのはヒルのくっつきやすい条件なのかもしれない。
とりあえずヒルをとっぱらって、靴をはきかえて、お昼にすることにした。
コンビニであらかじめ買っておいたおにぎりと、途中の道の駅みかわで売っているおいしいと有名な豆腐のお昼である。この豆腐はいつ行っても売り切れで、今日は朝開店少し前の掃除をしている所に入って行って売ってもらったのだ。
山門から杉の並ぶ参道を進んで、薬師堂まで行き、薬師堂は少し暗いので、その下にあるだれも住んでいないらしいお寺の建物の階段に陣取って昼食にした。
豆腐は滝に行っている間中自動車の中においておいたのだが、まだ冷たくて、滝で疲れた身にしみこむように美味しかった。
  
日光寺薬師堂。築百年近くたっている。

  
道の駅みかわのとうふ。絹ごしなのにしっかりとした固さ。105円也。
それにしても、林道が開通する前は、だいぶ手前から徒歩で歩かなければならないような山奥である。いったいなんでこんな所にお寺があるんだろう。しかも、普段は誰もいないのに。
お昼を食べ終えてコーヒーを飲んでいると、一組のご夫婦がやって来た。薬師堂を見に行ってから我々に近づいて来て、「滝には行けますか?」と訊く。滝までは足場の悪い坂道を20分以上歩くこと、ヒルがたくさんいること、軽装では無理なことを教えてあげた。奥さんのほうが、「30何年かぶりなんですよ」とおっしゃっていた。その頃はいったいどうやってここまで来たのか。きっと林道ができて自動車で来られるようになったので、来てみたのだろう。そんな人が多いのか、私たちがお昼を食べているあいだに2台ほどの自動車が山門の前に止まった。
帰りは日光寺山門の前の道を滝とは反対側のほうに行き着くところまで行ってみようと自動車を走らせてみた。途中まで綺麗に舗装、そこから先もすぐにも舗装されそうな状態だったが、その状態でストンと道はなくなっていた。どこにも通じていないらしい。
結局来た方向と同じ道で戻り、鹿瀬温泉の赤湯に立ち寄って汗を流した。
ヒルには本当に怖い思いをさせられたが、それ以上に滝の迫力がすごかった。
もう10年もすれば、きっと林道は全て完成され、滝への道も遊歩道として整備されそうな感じがする。それがいいことなのか悪いことなのか分からないが、少なくともヒルの恐怖なく落差25メートルの滝を楽しめることになるのだと思う。
そうなったらまた訪れてみたいものである。

交通
 
磐越自動車道津川ICを降りて、国道49号線に出る。右折して福島方面に進む。すぐに「津川警察署前」という交差点になるので、ここを右折。あとは、道なりに進めばよい。
途中でかなり不安になるが、高速道路をくぐって少し行くと右手に姥堂川という小川が見える。これに沿って進んで行くとやがて払川という集落になる。
集落内は道が細いので注意が必要。集落を出ると道は砂利道になる。そこからが林道である。林道はしばらく砂利道だったり舗装だったりする。
やや走ると右手に「林道払川線」という地図看板が立っている少し広いスペースになる。これで現在位置を確認できる。ここから遊歩道らしい入り口もあるが、自動車は「西山日光寺」の山門まで行けるので、自動車で進もう。
ここから少し進むとT字に出る。舗装した立派な道だ。ここを左。1分も走らないうちに山門が右側に見える。
滝の入り口は山門からもう少し先に行った所の左手だ。
林道から滝の名前が書いた杭まではずっと下りで20分。ただし、杭のある場所からは滝の全容は見えない。がんばって対岸に行けば滝前までは踏み跡がある。対岸まで行かない場合は踏み跡なんだかわけのわからないシダの間を掻き分けて進んで行くことになる。
もちろん、軍手は必需。足回りもきっちりしたほうがいい。ヒル対策も万全にしたほうが安心だ。


余録
とりあえず、離島を除いて新潟日報事業社の『新潟の名水』で滝として紹介されている滝はひととおり巡ってみた。
一通りめぐってみて、あらためてこの本のスタッフの苦労を感じずにはいられなかった。
おそらく短期間で取材したのだと思うのだが、簡単に行ける滝ばかりではないのである。
むしろ、秘境と言ってもいいくらいの滝もあるのだ。
山奥にひっそりと落ちている滝に脚光をあてて、私たちのような土地勘の無いものでも尋ねてみようかという気にさせたことは、この本の功績である。
しかし、逆に罪といえないこともない。
例えば、広神の不動滝、夫婦滝、布引の滝などは、素人がハイキング気分で熊の出る秋などに行ってしまったら、命の危険さえ伴う。
また、本の性格上、気楽に行けるように説明され、よくよく読まなければかなり歩くことがわからない滝などもあるし、自動車で行けると書かれてあっても、よもしろうの滝のようにとんでもない林道を行くことになる滝もある。
滝を紹介してくれる本はとてもありがたい。
しかし、できればどんな危険があるのか、とか、どのような足回りで行くべきか、とか、幼児は連れて行けないとかの注意書きは必要かと思う。
みなさんも、本に書かれた内容を鵜呑みしないで、滝に出かける際には、実際に行ってみた人のレポートをホームページで探すとか、滝のある自治体に問い合わせるとかしたほうが無難である。
かくいう我々もほとんど下調べらしい下調べをせずに、今回もヒルという怖〜い危険に遭遇した。
快適に素晴らしい滝を見たいということであれば、下調べは重要である。


2007年1月20日の訪問レポはこちらから。
2018年12月23日の訪問レポはこちらから。


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