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ゼンデラ滝
よく晴れた日だったのに、
谷間にあるために真っ暗である。
上段下段ともにVの字になって落ち、
水量も豊富で姿のいい滝だ。




上から見下ろすと、こんな感じ。
ものすごく綺麗な水である。
ダンナは20センチ以上ある魚が
泳いでいるのを見たらしい。




右欄のゼンデラ滝という看板から
川に向かって進み、
やや上流に歩いた場所から見える図。
最初は普通の2段の滝に見える。




下までおりてみると、
上段が2つの流れだと分かる。
右が本流。左は流れ込む沢。




左の細いほうは、
勢いよくジャンプしている。




上の段を落ち口から撮影。
右が本流。
まるで自然の堰堤のように直線的な落ち口。
左の水流は、
真ん中の上から落ちている沢である。
とにかく水が青く澄んでいた。





ほんとうにいいお天気だった。


この山が三十三丈滝を抱えているはず。

2004/11/23  ゼンデラ滝  加茂市 落差15メートル?

11月23日勤労感謝の日。週の真ん中にぽっかり頂いた休日、不幸なことに晴天だった。
今年、我々は晴天に飢えている。本来であれば先週末雨の登山はするわ、やぶこぎはするわでこんな休日には家でのんびりとして、庭仕事でもしているのが一番のはずなのである。
しかし、朝から雲ひとつない青空が広がっている。どこかに出掛けなければ、今後今年いっぱい晴天の休日など無いかもしれない。
そんな焦りにも似た気持ちで自動車に飛び乗ってしまった。
目的地は近場の滝である。
近場といっても、登山の必要がある滝で、ずっと行くのをためらっていた滝だ。
三十三丈滝。
この滝は地図にもしっかり載っていて、比較的近い場所にあるので、以前から行程を調べていた。だが、粟ケ岳の登山道から音が聞こえるという記述をみつけられた程度で、その姿も行きかたもさっぱり分からない滝だった。登山となると躊躇する。しかも、音が聞こえるだけというと、きっと下田村の大滝のように木々の葉っぱに阻まれて緑の濃い頃にはよく見えない滝なのだろう。しかも、粟ケ岳を含む下田・川内山塊はヒルが多いので有名だ。ちょっと行きたくない。
だが、11月も終わりに近いこの日なら葉っぱも落ちてヒルもいないに違いない。それに、地図を(と、いってもわれわれの持っている地図はただのライトマップルなのだが)見ると登山道はいくつかあって、三十三丈滝の落ちる沢にそった登山道もあるじゃないか。滝の手前で山の内側に入ってしまうので滝から離れるが、それほど遡行しなくても滝にたどりつけるんじゃないか。とにかく沢から離れる場所まで行ってみて、可能であれば遡行して滝に近づこう。
と、その日の朝、ほとんど自動車に乗る直前に決めてしまった。

断言します。無謀でした。

とにかく手持ちのライトマップルを見て、小俣登山道(という名前があるのをあとで知った)の入り口に自動車を進めた。入ってすぐに林道になり、細くてすれちがいは全くできない道を進むことになる。入る直前に「山止め」と書かれた看板があって、「集落のもの意外に入山を禁止する」旨の注意書きがいくつかあった。山菜を乱獲するやつがいるんだなあ、くらいに思っていた。
やがて本当に道が細くなり、しまいに路肩が崩れている場所になってしまった。げ、こんな所、通れない。ギリギリ自動車の幅くらいはあるのだが、一歩間違うとタイヤがハマってしまい、脱出はできなくなりそうだ。しばらく躊躇したが、バックするにもかなり長い道を行かなくてはならないし、もちろんUターンするスペースもない。ここを通り過ぎれば林道の終点らしく、そこならUターンも駐車も可能なのだ。
仕方がないので自動車を降りて、そこいらじゅうから木の枝だの石だのを集めて路肩を補強。そんなのは気休めだろうとは思ったがしないよりマシかもしれない。
私が降りてタイヤが路肩から落ちない位置か確認しつつ一気に走ってその難関を通り抜けた。今はなんとかなったが、帰りも通るんだよなぁ。

とりあえず、駐車スペースに到着した。 この道でいいのどうか分からないが、とにかく右手には川が流れている。これが三十三丈滝が落ちる沢なのだと信じて、歩き始めた。
ちょっと歩くと「小俣登山道、山の神まで1.5キロ、30分」と書かれた看板が出てきた。おお、ここが登山道に間違いない。確信を持って歩ける。
  
我々が駐車した場所。右に進む。

  
山の神まで30分。
ところが、その登山道、いきなりパッツリと途切れていた。どうも沢が増水して登山道を流したらしい。よくさがすとエスケープルートがあり、そこを降りて沢を渡る。看板から15分ほどで山の神に着いてしまった。ちょっと道は荒れているが、分かりやすい登山道で迷うこともないなぁとここまでは思っていた。
  
山の神。丸木の鳥居だ。  

  
三月峠って、いったいどこだったんだろう。
ここから道のりは困難を増すことになる。
山の神の所に「小俣登山道、三月峠まで2キロ、60分」という案内があった。三月峠って、どこだ?とにかく60分歩けばまた案内があるんだろう、と、気楽に考えて歩き出した。
道は右手に川を見ながら、だんだんと細くなっていった。ほとんど山の斜面にへばりついているくらいの幅しかなく、足をふみはずすと5メートルほど下の川に落下する。もっとも木々が生い茂っていて、落下の前にひっかかりはするだろうが。
ついさっきまで幅広の里の川といった雰囲気だった川もあっという間に狭くなり、急流と化している。水はものすごく綺麗で、渓谷といってもいいくらいの流れなのだが、木々が多くてよく見えない。その川に流れ込んでいる小さな沢をいくつも渡った。どれもこれも跨げる程度の沢なので問題は無い。
    
   
沢をいくつも渡る。
  
時々崩れている沢もある。
問題はそんなことではなく、藪だった。ほとんど人が入っていない道らしく、踏み跡はなんとなーく分かるのだが、草だの笹だの木だの棘のある植物だのが覆いかぶさっている。それをかき分けて進むものだからものすごく時間がかかる。さらに落ち葉が積もっていて、足場もよく分からない状態になっているのだ。
普通登山道ならリボンだのテープだのか木に巻かれて目印になっているのだろうが、それもまったくない。山に投げ出されたような不安がつのる。
斜面に沿った道では木の根だろうがなんだろうが頼りにしてつかまないとズルズルと下に落ちてしまいそうである。整備のされた登山道なら鎖がつけてあるんだろうになぁ。

行けども行けどもそんな感じの道を進み、もういいかげんイヤになったあたりで、目標としていた川を渡る場所に出た。山ノ神から50分かかっていた。
  
渡渉点。
地図によるとここから登山道は山に向かって進み、川からは離れる。
三十三丈滝を見たいのであれば、この川を遡行しなくてはならない。
一応長靴で来たのだが、渡渉箇所はちょっと遡行するには大変そうだった。川の中の石もヌルヌルしていて、すべりやすい。
ふと対岸を見ると登山道が続いていて、まだ川に沿って進んでいるようだった。では、登山道を利用しよう。
渡渉して対岸の登山道にたどり着く。滑るが水深は長靴でも充分なくらいだ。
今度は川を左に見ながら進んで行くと、急に広場のような場所に出た。細い木が林のようにまばらに立っている広い空間である。その木の一本になにやら文字の書いてある看板がある。近づいて見ると「ゼンデラ滝30メートル→」と書いてあった。
おお、滝がある。
  
いきなり出現するゼンデラ滝の看板。
矢印の方向に進むと、川に突き当たるが、あれ、滝らしいのは無い。沢が川に入り込んでいるらしいのは見えるがあれが滝かしらん。いや、ちがうだろう。
ウロウロしながら川の上流にむかって歩くと、あったあった。見事な滝だ。

最初見えた時には2段になっている滝に見えた。やや上から見下ろす感じで見ていたので、河原の近くまで降りてみようということになった。降りてみたら上の段は2本の沢がV字になって合流しているのが分かった。下の段もきゅっと川の幅から狭まって落ちている。なかなか美しい姿の滝である。
ただ、両側が崖になっていて河原らしい河原がないので、滝つぼまでは下りることができない。滝を堪能できる場所は限られている。

もう歩くのに疲れたので、ここで昼食にすることにした。日向を歩いている分には暑くて仕方がなかったが、滝のある谷に来るとなんだか寒い。それもそのはず、11月も終わりなのだ。
見上げると真っ青な空。いいお天気だ。
  
さて、三十三丈滝。
とにかくこの川の上流にあることは確かだ。だが、ゼンデラ滝クラスの滝があるとしたら、長靴で遡行しましょうというのは、絶対に無理な話である。
まだ登山道は続いているので下田村からの登山道に合流する「粟薬師」まで行ってみよう、と私は思っていた。前に調べたときに、そのあたりで三十三丈滝の音がするという記述を読んだことがあるのだ。うろ覚えだけれど。(こらこら)
そこでゼンデラ滝から登山道に戻った。
踏み跡は薄い。たぶんこっちじゃないのかなー、程度にしか跡はない。それでもそこをたどって進んだが、しまいに本当に踏み跡が消えてしまった。
どっちに行っていいのかさえ分からない状態である。
マズイ。これでは遭難する。
とりあえず戻る方向がわかっている段階で戻ったほうが安全である。
きっと三十三丈滝のすぐそばまで来ているはずだ。我々は過去何度も直前まで行って戻っているという愚をおかしているが、今回もそんなことになりそうである。
だが、滝を見れたが遭難するよりずっといい。三十三丈滝のヒントがあるとおぼしき「粟薬師」には正式な下田村からのルートが存在するのである。いつかそちらから登ればいいじゃないか。
ということで、撤退することにした。

帰りは帰りで登りより辛かった。長靴なので、体重が爪先にかかってしまい、足が痛い。足元がさらに分からないので滑って転びそうになる。いや、転んだ。またしても泥だらけである。
こんな所通ったか?という場所をいくつもクリアして、山の神の近くまでたどりついた。
そしたら、なんと人がいた。こんな場所に人だと。ものすごくびっくりした。
話によるとキノコを探しに来たらしい青年である。彼もこの道を進み、ゼンデラ滝の先で迷いそうになったとのこと。だいぶ前から廃道なのだなぁ。三十三丈滝の話をしたら、あれはザイルでもないと行けないでしょうね、とのことだった。
山の神を通り過ぎ、駐車スペースに来ると、先の青年の自動車がごっついRV車だと分かった。ラッキー。これで、あの路肩が崩れている場所でもしもハマってしまったとしても助けてもらえる。気がちょっぴり楽になった。
幸い彼の自動車に助けてもらうでもなくその場をきりぬけ、林道を戻ることができた。

トイレに行きたかったので、県道に出てすこし加茂川の上流にある「粟ケ岳県民休養地」まで行ってみた。貯水池にモミジの木が植えられ、青空のもと散策を楽しむ家族などがいた。普通こんなふうにのんびり過ごすもんだろう、週の半ばの休日って。などと思いながら山を振り仰ぐ。
もちろん、滝は全く見えなかった。
  
粟ケ岳はこの山のずっと向こう。
それにしても、廃道であれば廃道であると入り口にきちんと書いておいてくれないと、せっかく粟ケ岳を目指して登山しようとして来た人があればがっかりするんじゃなかろうか。いや、それどころか無理やり山頂を目指して遭難する危険もあるんじゃなかろうか。
「粟ケ岳県民休養地」の登山道の案内にもきっちり小俣登山道の存在は記されていたし。あまりにもほったらかしの管理に少し腹立たしくなった。
もっとも、あとでアウトドア店で大きな地図を調べたら、小俣登山道は表記さえされてなかったが。よく調べない登山者はよく管理しない管理者よりタチが悪い。
ちなみに、まだ私の腕には10本以上のひっかき傷のあとがあります。棘のある植物、名前は分からないが、一生恨んでやる(笑)
交通
一応交通のご案内はするが、行かないほうがいいと思う。ものすごく滝に興味がある、もしくは、登山の経験が豊富であるという方以外は、避けたほうがいいルートである。

最寄ICは、北陸自動車道三条燕IC。加茂市街の混雑を避けるためにはちょっと遠回りに思えるがICを出たらそのまま国道289号で下田村に向かったほうがいいだろう。下田村の中心に入る前に国道290号との交差点があるので、そこを左折して新五十嵐橋で五十嵐川を渡る。あとは山の中を走る。
やや走ると加茂市に入り、すぐに右折すると「加茂美人の湯」に行くという看板があるので、右折。
とにかく「美人の湯」の看板はあちこちにある。加茂市から入るのにもいい目印になる。
県道244号に入って、「美人の湯」を通り過ぎ、さらに進むと右側につり堀の文字が見える。道の入り口には粟ケ岳登山道の看板が水源池に向かって出ている。
このつり掘が目印。つり掘といっても我々が行った時には営業していなくて、ビニールハウスのようになっていたが。
この細い道を入り、「山止め」のたて看板をものともせずに林道をかなりの距離進むと右欄の入り口に出る。道がY字に分かれていて、左側にはチェーンが張ってあり、「中央ハイキングコース小俣入り口三叉路まで30分」と書かれた杭がある。
小俣登山道は右側の道を行く。Y字から少し行ったところに駐車スペースがある。
ここから山の神までは20分かからない。山の神から渡渉点までは50分ほど。渡渉点からゼンデラ滝は5分ほどである。
とにかく道は無く、藪を進むと思っていたほうがよい。
また、緑の濃い時期には道が全くわからないうえ、滝も木々の葉に隠れて見えない可能性もある。
なるべく近づかないほうがいいし、もし行こうと思うのであれば充分に安全を考えて行動してほしい。


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