番外

近県の山

2014/7/26  蔵王  熊野岳(1841m)   
夏山シーズン真っただ中である。
スロースタートの我が家も、いいかげんガッツリ登る山に行かないと、せっかく買った登山の装備が泣くではないか。
と、いうことで、この週末は新潟県の山を登っている人なら、ここは登っておかなきゃダメでしょう〜、という山の一つ、八海山に登るつもりでいた。
ところが、である。
いきなり真夏が来た。
連日30度超えはあたりまえ、日中の最高気温はヘタをすると猛暑日の35度を上回る勢いになってしまった。
そして、われわれが八海山に登るつもりでいた7月26日の魚沼地方の最高気温も35度。
ひぇぇぇぇ。低い標高から出発して低い標高に登りつく新潟の山に、その気温はあり得ない。ヘタレの我々では確実に干からびる。
そんなこんなで急遽、高い標高からスタートできて、自動車での移動時間を差し引いて日帰りで帰れる短時間の登山行程で、ついでにお花なんかも楽しめたら最高だけどぉ〜、
という山を探した。
実は、新潟県にはそんな贅沢な山は少ないのだが、近県に足を伸ばすと、けっこうあるのである。
で、今回選んだのが蔵王の熊野岳だ。この季節はコマクサが咲いている。それに、蔵王に行けば百選の滝である三階滝にご挨拶もできる。
くそ暑い気温のせいで、ガソリンと高速代のことは頭からふっとんでしまった。蔵王に行くぞ。避暑に行くぞ。

   ちなみに、あちこち遊んでしまったので、写真がきわめて多いのでサイズが小さいです。申し訳ありません。
結局早起きするでもなく、午前7時ころに自宅を出発。
新潟から山形がわの蔵王に入るには、実はほとんど高速道路が無いので、お釜に到着したのは午前11時である。
駐車場は一番遠い場所に入れたくらいの満車状態。
レストハウスのトイレを利用して、お釜に出る。おお、あれが今日登る熊野岳か。
左写真、しっかり熊野岳、と案内がある。
右写真、ちょっと展望台から離れて撮影した熊野岳。お釜の向こう側のこんもりした山の左端の一番高いあたりが熊野岳のピークだ。
まずは、刈田岳から攻めよう。
とはいえ、お釜の駐車場まで自動車で来たなら刈田岳はサンダルでも簡単に行けちゃう。
私の足で4分で山頂の神社に着く。
11時17分 刈田岳山頂。
山頂は意外に広くて、石碑だのケルンだのがたくさんある。
神社からお釜を見下ろすたりに刈田岳山頂と書かれた看板があり、それが一番わかりやすい山頂表示だ。
ここからお釜を見てみたら、なんとすぐ縁まで人が行っていた。ちゃんとルートがあるらしく、道も見てとれる。
お釜の水、触れるのかしらん。
右写真が道と粒々にしか見えない人。
さて、ここから先が本番である。
刈田岳から下りて、またもう一度レストハウスでトイレに行ってから熊野岳に向かって出発。11時30分。
馬の背と呼ばれるお釜を見下ろす道はリフトの終点もあるので、しっかりとした道になっている。
途中、道をはずれて人がしゃがみこんで何かを撮影しているので、近寄ってみたら、もうコマクサ出現。
ただし、馬の背のあたりのコマクサはほぼ終わりかけで、くしゃっとなっているものが多かった。
お釜を見下ろす場所の柵が途切れるまでがたぶん馬の背だと思う。
荒涼とした風景で、空の青さばかりが目立つ。
3メートルないくらいの杭が道沿いに点々と立てられていて、ルートの目印になっている。
そのルートは、直進すると山頂とほぼ同じ高さを直登して避難小屋に至る道と、ゆるやかに斜めに登って山頂に至る道に分かれている。
12時ちょうど、その直登ルートと緩やかルートの分岐。
緩やかなほうにはいくらか緑色の濃い場所があり、その中にオノエランを発見。ここでもオノエランが見られるんだ。
ハクサンチドリも少しだけ遅い感じだったが、可愛い姿を見せてくれた。
写真を撮影しながらなので、ゆるゆると登り、平らな場所に出る。
12時11分。遠くに山頂の神社が見える。
12時13分 山頂到着。
鳥居の奥は石積みになっていて、その塀の中に神社と避難小屋がある。
こちらの山頂もかなり広く、たくさんの人がおのおのお昼にしていた。
我々は神社の石積みに腰かけて昼食。
風がけっこう強く、この石の塀は冬場の厳しい風を避けるためなのかしらん、とも思った。
大量のトンボが風に乗って川みたいに流れていた。
12時50分 下山開始。
下山もガレた下りが怖いので同じルートで戻るつもりだったが、せっかく別ルートがあるので行ってみることに。
知らないとは恐ろしいことで、実はこっちがわのルートにコマクサがたくさん咲いている場所があったのだ。
いや〜、適当に来た道を下らないでよかった。
登りのルートの合流点から少しだけ歩いただけで、左右のガレ場にとんでもない数のコマクサが出現した。
げげ〜っ。このピンク、全部コマクサか。
ロープが張ってあって、近づけないし、腕に黄色い腕章をした人が数人山頂の神社に待機していて見張っているので、ロープを跨ぐわけにはいかないが、本当にすぐそばにも咲いているので、撮影するのに困らない。
おいおいおい、コマクサってば、こんなに手軽にこんなに大量にみられる花だったのか。
そりゃまあ、シーズンによるとは思うが、それにしても、我々の中にあった「コマクサは希少植物である」という概念が壊されるくらいたくさん咲いていた。
13時ちょうど 下から見えた避難小屋に到着。
石づくりの頑強な建物で、これもまたここまで頑丈にしなければならない気象的な理由があるのだろう。
途中、昔の避難小屋の跡もあった。周りの石積みの塀だけが残っていた。
道はほぼ水平だ。
右側前方ににお釜。
左側も切れ込んでいて、下のほうから道が合流しているのがよく見える。
避難小屋のすぐそばから踏み跡だけのまっすぐ下る道もあったが、少しだけ先に進んで、地蔵山から熊野岳を経由しないでお釜に至るコースとの分岐まで行って下ることにした。
13時05分 分岐から馬の背に下る。
この分岐の道しるべの下にどわっとした株のコマクサがあった。
道しるべから馬の背に至るガレ場もコマクサだらけだった。
あっちにもこっちにもコマクサが咲いている。
エメラルドグリーンのお釜をピンクのコマクサが見下ろしている。
13時33分 手すりのある場所まで下ってきた。
この先はほぼ水平移動だ。
13時45分 観光客でごった返すレストハウスに到着。
ご苦労さまでした。
せっかく蔵王に来たのだから、と、エコーラインを来た道とは反対側に進んで、滝見台に行った。
もちろん、百選の滝である三階滝を見るためである。
2007年9月に見て以来だ。(2007年のレポはこちら
あの日もかすんでよく見えなかったが、今回も空気自体がなんだか白っぽくて、谷を挟んですぐ近くの滝なのにぼんやりとしか見えなかった。
上段左:三階滝上部。上段中:三階滝全体。上段右:不動滝。
左:三階滝下部。右:三階滝と不動滝の位置関係。
どうせなので、不帰の滝と振り子滝も見て行こう、とコマクサ平に。
これがまあ、この2つの滝がコマクサ平という場所にあることをすっかり忘れていて、自動車から下りて滝見台に向かう途中のガレた場所にたくさんのコマクサが咲いているのを発見してかなり驚いた。
お釜周辺よりもガレ場の色が赤茶色をしている。
左:不帰の滝。右:振り子の滝。
よくよく見ると、白っぽいコマクサも咲いていた。
ここだと、滝の一部を背景にしたコマクサが撮影できる。
滝好き、花好きにはちょっと嬉しいスポットだ。
これで今回の避暑は終了、と思って、自動車を山形側に進める。
と、蔵王山頂リフトの乗り口の大きな駐車場を通り過ぎたところで木道を発見してしまった。
実は熊野岳の山頂でお父さんが子供に「あとは湿原の木の道をちょっと歩いて花を見よう」と言っていたのをちらっと聞いたのである。
蔵王に湿原なんてあるのか?
木道があったじゃないの。
エコーラインはなかなかUターンする場所がなく、かなり通り過ぎてから戻って、駐車スペースを探したがなかったので蔵王山頂リフトの駐車場まで行って駐車。そこから歩いて木道の入り口に行った。
入り口には「御田ノ神園地コース案内図」という看板があり、総延長0.8キロと書いてあった。
これが見事に拾い物の素晴らしい湿原だった。
規模は大きくないが、蔵王で期待していなかった湿原の風景がみちっと集約されている。
入り口にまずトキソウがあって、キンコウカはどっさりあるし、シャクナゲが咲いているわチングルマの穂はあるわ。
少し進むとワタスゲが風に揺れていて、本当にここは蔵王かしらん、と思うくらいである。
なんだか一か所で二度美味しい思いをした感じだ。

さんざん遊んでたくさん花を見て、帰路に着いたのは午後3時半。午後7時半頃の帰宅になって、腹を減らした猫どもに怒られた。
しかし、蔵王は我々にはお得なエリアである。涼しくて手軽な山があって花と湿原があって、百選の滝もある。これで近ければ言うことないんだけどなぁ。
それにしても、コマクサは本当に多かった。
コマクサといえば、多少の苦労をして高い山に登って、それでもガレ場にちらほらとあるのを見るか、植栽されたものを見るかくらいしかできないと思っていた。
蔵王は、駐車場から10分も平らな場所を歩けば、どわっと見られる。ホントにすごい山だ。

蔵王  熊野岳(蔵王ハイライン利用)
最寄ICは、山形がわからだと、山形自動車道山形蔵王IC。
ただし、今回我々は国道113号、国道13号とほとんど一般道を利用して蔵王エコーラインに入っている。
2007年に宮城側から高速道路を途中の福島飯坂まで使って三階滝まで行ったのだが、時間的にもほぼ同じ感じだった。
お釜へは有料道路のハイラインを利用する。普通車は540円。
お釜には広い駐車場とレストハウスがある。
熊野岳は緩やかに登る坂を利用すれば本当に気軽に登れる。実は刈田岳のほんの4分の坂道が一番キツい坂道である。


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