番外

近県の山

2014/8/13  燧ケ岳(2356m)   
2014年の新潟の夏は、前半は猛暑に見舞われ、涼を求めて県外に逃げた。
そのおかげでロクに山歩きをせずに、8月のお盆休みになってしまった。
このままでは、今年は登山と言える登山をしないまま終わってしまう。
せっかく長い休みである。多少疲労しても仕事には支障ない。今の体力ギリギリで登れる山に登ろうじゃないか。
と、いうことでお盆休みのメインイベントに選んだのが燧ケ岳だった。
この山は、実は2009年の10月に登ろうとしている。実際に途中まで登っている。
だが、早い尾瀬の冬に阻まれた。10月11日にして降雪。山頂は積雪しているという情報を下山してくる人から得て、山シロウトの我々は途中撤退したのだ。
そんな経緯もあるし、尾瀬ヶ原に行った時に見た燧ケ岳の美しさも心に残っているし、絶対に登りたい山だったのである。
日程的に考えて、8月14日に登ろうと思っていたのだが、天気予報が13日のほうがよさそうだった。急遽13日に予定を変更。
12日の夜は早々に就寝して、翌朝3時に起床、4時15分に自宅を出発した。
我が家からだと、関越道を利用して小出インターから奥只見シルバーラインを通って、銀山平を経由して樹海ラインを突き進み、御池の駐車場に行く、
というのが実は一番近くて速いルートである。
しかし、どうしても奥只見湖沿いのあのぐねぐねとした道がイヤで(私が車酔いする)今回は田子倉湖沿いを走る国道252号で福島入りすることを選択。
どれほど到着時刻に違いがあるのかはよく分からないが、ぐねぐね感は多少少ない。
夜明け過ぎの桧枝岐は20度を下回る気温なのね〜、なんだか歌舞伎があるのね〜、などと言いながら、七入りの駐車場に。
過去何度もここでストップさせられて、乗合バスに乗る羽目になったのだが、今回はスルー。
さすがに早く出ただけある、と思っていたが。
7時30分 御池駐車場到着。
あららら〜、満車しか見たことのないこの駐車場が、ガラガラである。10分の1くらいとまっている程度だ。
いくらなんでも、この空き具合は時刻が早かったせいではあるまい。
もしかしたら、だけれど、原発事故の影響だろうか。
7時40分 仕度を終えて、出発。
車いすでも大丈夫な広い木道を少し歩くと分岐になる。
燧ケ岳には左に進む。
いきなり階段で下って、化けたミズバショウのある沢を渡ってまた登る。
少しだけ木道は続いているが、すぐに岩と泥の道を登ることになる。
7時52分 1合目。
少し木道があったり、ガッツリ岩と泥の道があったり。
木道が濡れていて、滑りそうで怖い。
スパッツをつけるべきだったが、もう遅い。
すでに泥だらけなので、つけなくても同じだ。
途中、転がり落ちそうな岩が木で支えられているように見える岩があり、これは前回も見た覚えがあった。
こんなにドロドロ岩岩で歩きづらい道だったかしらん。
8時11分 2合目。
ほぼ崖をよじ登る感覚で岩の道が続く。しかもドロドロ。
いきなり上の方からヤッホーと明るい声がしたかと思うと、私よりもかなりお姉さまな2人組が実ににぎやかに登山中。
彼女らも実にかしましく頑張っている。
いいかげん最初の田代に着いてもいいのに、と思っていても、階段が出現したりする。
いつまで登るのかなぁ、と思っていると急にポンと開けた場所に着いた。
8時32分 広沢田代の端っこに到着。
今までの悪路がなんだったのよ、というくらい、広沢田代は開けていて、しかもキンコウカの海だった。
ああ、尾瀬だ。これを味わいに来たんだよな〜、としみじみ思う。
8時35分 広沢田代の道標。
広いというよりは、長い感じの田代で、ゆるゆると登りになっている。
ちなみに、前方に見えるこんもりとした山はもちろん燧ケ岳ではない。あの頂上あたりが次の田代だと思えばいい。 それにしてもまっ黄色。
見渡す限りキンコウカだ。
貸切のように見えるが、お姉さま2人組は追い越したし、もう一組、子供とお父さんがいたが、これも田代の出口で追い越した。
いや、決して我々が早いワケではなく、彼らが自分のペースを守っているのである。
木道が階段状になり、木立の中に入って、広沢田代を出た。
8時44分。
木立の中に入ると、やっぱり泥と岩の悪路だ。
8時53分 4合目。あれ、3合目を見落としたぞ。
9時11分 悪路をひいひい登って行くと、拷問のような階段出現。こいつ、空中に浮いているんじゃないか、というくらいとっかかりがない。
そういえば、2009年に途中撤退した時もこの階段には唸ったぞ。
え、あの時は広沢田代で引き返したと思っていたが、どうも熊沢田代まで行っていたみたいだぞ。
振り返れば、眼下に広沢田代が広がり、そのちょっと向こうに駐車スペースも見てとれる。
ずいぶん登ったなぁ。
奥にどっしりと座っている山は、会津駒ケ岳である。かっこいいなぁ。
9時13分 5合目。階段に標識がとりつけられている。
ここまで、いやっちゅうほど階段だ。
9時25分 またしても、樹林帯からポンと開けた場所に出る。
熊沢田代の入り口だ。
前方に初めて燧ケ岳が姿を現した。
ここですれ違った人にあと2時間くらいですかと言うと、いや、2時間もかからないですよ、と言われた。嘘だろ〜、あの頂上だぞ。
田代の入り口からゆるゆると木道で下って行く。
ここもキンコウカの海で、広沢田代よりもずっと広い。
よくよく見ると、モウセンゴケやタテヤマリンドウも咲いている。
前方に木道の両脇に池塘がある場所が見えてきた。
あれ、この風景、やっぱり記憶にあるぞ。
2009年はここまで登って雪のために引き返したのだ。
9時33分 熊沢田代の道標。
ベンチがしつらえてあり、2組が休憩中。
一組がすぐに出発したので、開いた場所に座らせてもらって、エネルギーゼリーで栄養補給だ。
冷たい風が吹き抜けて、汗まみれの体に心地いい。
先に我々とほぼ同年代の女性2人組が出発。
我々もほどなくあとを追った。
池から木道はけっこう急な角度で登って行く。
が、この木道、損傷が激しい。かろうじて体裁を保っている程度のもので、平均台よりもあぶなっかしい。
しかも、木道、ドミノ倒しのように支柱が全部倒れていて、床板が折り重なっている状態だ。
右写真は振り返って見た熊沢田代の池。2つ並んだ真ん中に木道が通っている。
左写真でなんとかわかるかな〜。支柱が倒れた状態の木道。
積雪のためなのか。
それでもしっかりしているので、木道を外れることなく歩くことはできる。
9時54分 6合目。
木道は続いているが、両側が笹で覆われて、再び樹林帯だ。
樹木が折り重なって流されたのを伐採したような場所もある。
どうやら沢のようで、沢に迷い込まないようにロープが張られている。
10時12分 7合目。
とにかくじめっとした感じの登山道で、小さな沢と交差しているようなのだが、沢にはそちらに行かないようにと必ずロープが張られている。
登りは迷わないが、登山道自体が沢みたいなもんだから、下りの時にはこのロープの進入禁止がなければ迷い込むかもしれない。
あまりに沢っぽい道で泥が削られて段差ができてしまって、かなり先行していたはずの熊沢田代で休んでいた女性2人組が登れずに困っていた。
ドロドロで足のかける場所が見当たらないらしい。
我々も一緒になってあっちに足をかけろとか言って登ってもらった。
ちなみに、私は藪漕ぎは慣れているので、さっさと登山道から外れてクリアしましたとさ。
突如目の前の坂がゴロゴロした石だらけの場所になった。
つい最近土砂崩れでもあったのか、と思うくらい、傾斜があるガレ場だ。これが登山道なのか、登山道が埋められたのか、初めて登る我々は戸惑ってしまった。
女性2人組が下山してくる人に尋ねているのが聞こえてきた。
これを登りきって、左に水平移動して、もう少し登ったら山頂らしい。
しゃくなげがたくさんあったらもうすぐですよ、とのこと。もう咲いていないけど。
足場の悪い場所でどこをどう選んで登っていいのやら困りながら進むと、だんだんと両側が迫ってきて、ついにガレ場が途切れた。
途切れたと思ったら、左に曲がれという。
途中であんぱんを食べて休憩したけど、このガレ場だけで15分かかってしまった。
笹の中水平移動。
その笹の中にこのルートは沢に迷いやすい。直進して沢に迷い込まずに進むように、と看板が立てられていた。
10時46分 8合目。
今度は土が露出した場所に平均台のように木道が渡されている場所が出現。
いや、これは木道というよりは、もはや滑り止めである。
この滑り止め木道がなければ、けっこう怖い斜面かも。
その後はハイマツの間を階段が延々と続く。
10時57分 その階段の途中に9合目の標識。
このあたりですれ違った下山者に「御池からですか、すごいですね〜」と言われてしまった。
え、すごいの?新潟からの我々はこのルートしか選択肢がなかったけど。
やがて、シャクナゲの木の葉っぱが両側に目立つようになった。
と、思ったら、ゴッツンゴッツン岩が出現。
これ登るのかよぉ〜。両側がシャクナゲだけど、咲いていないしさ〜。
なんて文句を言いながら登ると、岩の向こうに木々が無い場所になった。
11時17分 山頂に飛び出たようだった。
ゴロンゴロンした岩の一角に祠があり、岩に登山者がたくさん休んでいる。
9合目付近で我々を駆け足で追い越した驚異の小学生が一等地的な岩の上で家族を待っていた。
しかし、こちらは双耳峰の一方である俎板ーだ。標高が高いのはもう一方の柴安ー。
俎板ーには二等三角点がある。
こちらからは尾瀬沼がとてもよく見える。
さて、柴安ーは、と、岩の高見から見てみると、ひえぇぇぇぇぇ、激しく下って、激しく登らなくては着かないではないかぁぁぁぁ。
さすがにヘロヘロになっていたので、どうするか協議したが、ここで柴安ーを断念したらこのヘロヘロも無駄になる。
ヘロヘロに鞭打ってゆっくりでいいから登りきることにした。
後ろで驚異の小学生の父親がほかの登山者にここではなく向こう側が山頂だと教えられていて、じゃあここは何?と聞き返していた。
その気持ち、よく分かります。ここでやめる登山者もけっこういるみたい。
11時23分 柴安ー出発。
驚異の小学生一家はどうするのかしらん。
11時32分 鞍部到着。
柴安ーったら、雲の向こうだしぃ〜。
中間点の目印の大岩が我々を見下ろしている。
とにかく、もう体力的に限界で、亀の歩みで登る。
3歩登ったら立ち止まる状態だ。
11時39分 大岩通過。
登っている足元の岩がどんどん大きくなってきたな、と思ったら、また空が近くなった。
おお、岩の向こうに真っ黒い山頂の石碑があるぞ。
11時51分 柴安ー山頂到着。
ふぁぁぁぁぁぁぁ、辛かった〜ぁぁぁぁ。
山頂は俎板ーよりも平らな場所が多くて広かった。どこでもお昼を食べられる状態だ。
10名近い登山者が昼食中。
我々もゆっくり休むつもりで場所をとった。
ここからは尾瀬ヶ原がよく見える。
そして、その向こうに至仏山がそびえている。
なるほど、両方の峰を登らないと、尾瀬を一望したことにはならないのか。
山頂はさすがに涼しくて、汗まみれになった体が冷えはじめてしまった。
慌てて着替えて、さらにトレーナーも着込む。
今年初めての本格登山に燧ケ岳はちょっと過酷だったかなぁ。
12時35分 下山開始。
12時48分 鞍部。
13時05分 俎板ー。登り返しはやっぱり過酷で、ぜいぜい言いながらたどり着いた。これをクリアすればほぼ登り返しが無いのが救いだ。
13時21分 9合目。
13時30分 8合目。
14時13分 6合目。
14時23分 熊沢田代。
今日は熊沢田代まで、と決めて来たらしい3人組がベンチで休憩中。尾瀬を歩き慣れた人たちのようだった。
たくさんヒメシャクナゲが咲いているというので、登りには気がつかなかったピンクの花をみつけることができた。ここでちょっと小休止。
14時48分 5合目。3人組にあっという間に追い越されてしまう。
15時03分 4合目。
15時20分 広沢田代。
ここまで来ればもうすぐだと思っていたが、実はこの先が下りでは大変だった。
こんな場所通ったかというくらい悪路である。
午後3時を過ぎたあたりだというのに、樹林帯で薄暗く、疲労も手伝って本当に疲れてしまった。
15時46分 2合目。
16時16分 燧裏林道との分岐。
16時18分 駐車スペース到着。
ごくろうさまでした。

実は、この登山の前々日くらいから連日足がつるという最悪の状況の登山だったりする。
何が原因なのか、とにかく足がつって、市販薬ではあるが飲んでみても効かなかった。
それでも、前に登ったことがあるという記憶から、ま、大丈夫なんじゃないかな〜と決行したのである。
結果、足はつらなかったが、とにかく疲労した。燧ケ岳は、御池をピストンする山じゃないな〜。いや、他のルートを知っているワケじゃないけど。
ただ、途中に2か所の田代があって、それがお楽しみなっている。
帰りの熊沢田代で一緒になった尾瀬慣れした人たちは長英新道で登ったけど長かった〜っと言っていたし。
それぞれのルートがそれぞれのいいところ悪いところがあるのだと思う。
まあ、宿題を片づけた、ずっと綺麗だと思ってあこがれていた山に登った、という満足感はあります。
余談ではあるが、この日はちょうどお盆で、平家の落人の里である桧枝岐あたりでは各家にしっかりとお盆の迎え火がたかれていたのが印象的だった。
ちょっと新潟では見ない竹で作った簡単なモニュメントみたいなやつを立てている家もあった。
それにつけても、本当に御池の駐車スペースは以前と比べものにならないくらい空いていた。
混雑するからと避けている人がいるとしたら、燧ケ岳や会津駒ケ岳は今が一番いいかもしれない。

燧ケ岳(御池登山口)
最寄ICは、関越自動車道小出IC。国道352号に出て、トンネルばかりのシルバーラインの途中から銀山平に出て、奥只見湖の岸をぐねぐねとした道を走る。
奥只見湖を離れて樹海ラインになった国道352号をさらに走り、福島県に入る。
さらに走って、平ケ岳登山道入り口や小沢平を通り過ぎ、やや進むと、右に曲がると御池だという案内がある。
ちなみに、ではあるが、我々は高速道路を利用せずに、上記術通り、国道252号の田子倉湖沿いの道から
国道289号、国道352号を経由して桧枝岐村がわから御池を目指している。
こちらは、多少遠回りになるが、奥只見湖沿いのぐねぐねした道よりはぐねぐね感が少ない。
ただし、かなり長い間冬季閉鎖になる道なので、注意が必要だ。
登山道は田代は木道が続いているが、そのほかはおおむね岩と泥の悪路である。
悪路でなければ、階段だ。
泥対策は必ずしておいたほうがいい。


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