番外

 近県の山

2019/8/12(祝、山の日)  至仏山 標高2228.1m  群馬県
今年の夏休みは昨年に引き続き長い。山の日が休日になったのが大きく、これとお盆休みを合わせて連続でお休みになる。
しかし、これまた昨年に引き続き、今年の夏は暑い。
連日35度近い猛暑の中働いて、私もダンナも疲弊していた。
夏休みはゆっくり休もう。そんな雰囲気だった。
ところで、登山に一番いい季節である7月は、どういうワケか週末に限って雨になり、ついに高い山には登れないままでいた。唯一、意地で登った月山も濃霧の中。8月にはある程度ついているはずの登山用の体力もほぼゼロに近い。
休みたい、体力もない、でも夏休みは一座くらいは登ろうよ。
ということでチョイスしたのは至仏山である。鳩待峠からなら3時間かからずに登頂できると山地図にある。夏休みのこと、尾瀬の山では大混雑が予想されたが、至仏山は花の山。以前からぜひ登りたいと思っていたのだ。
3時間未満の登り、お花たくさん。登らない手はないでしょう。
混雑をみこして、午前3時起床、4時過ぎに自宅を出発。7時過ぎに戸倉の駐車場に到着した。

尾瀬には何度か行っているが、新潟県民の我々は御池、つまり福島県側から行ったことしかない。関東に近い鳩待峠がわからは未体験なので、多少不安もあったが、さすがに午前7時では第一駐車場も余裕があった。券売機では片道分だけのチケットしか買えない。チケットを買うと、案内の人が手際よく人数を聞いて乗り合いタクシーに振り分けてくれる。まったくストレスなくタクシーに乗車。大人片道980円なり。
7時30分。 鳩待峠の駐車場に到着。バス35分とあっが、タクシーは30分かからずに着いた。トイレがあるが、少し歩いたところに大きなトイレがあると書かれてあった。案内に従って、道路を登る。
7時35分。 あ、これがよく山レポで目にする鳩待峠休憩所か。広い広場があって、この時間はまだ人はまばらだ。
道案内があって、至仏山は休憩所を背にしてほぼ正面方向。
ほとんどの人が山の鼻方向に行くが、我々はピストンなので至仏山の登山口へ。
入り口には登山者数調査のセンサーがある。
登山届を提出し、登山開始。  7時50分。
入るなり、ほぼ背丈の笹の道だ。本当にだれも登っていない。大半が山の鼻から周遊コースを選ぶのか。失敗したか、私たち。
傍らに見慣れない白い小さな花が咲いている。
アリドオシランというらしい。ちっさーい。
8時6分 ちょっとだけ木道がでてきた。道はずっとほぼ平坦だ。
8時12分 至仏山まで3.5キロの道標。鳩待峠までは1キロ。
なんだ、もう4分の1じゃん。このあたりまでは楽勝と思っていたんだけどなぁ。
道は、時々階段状になり、時々新潟の藪山みたいな樋状の削れた泥道になる。
じめっとしていて、尾瀬に来た感ゼロだ。
花もオトギリソウやツルリンドウくらいしか咲いていない。
8時35分 右写真のような木道に出る。山のへりに木道をくっつけたみたいな場所で、アザミの仲間がたくさん咲いていた。が、直射日光がガンガン当たって、暑いこと、暑いこと。
おかしい、このあたりで標高1800メートル以上あるはずなのに、高山感もゼロだ。
8時48分 至仏山まで2.5キロの道標。半分よりちょっと手前ということだ。木道が続き、「木道階段は滑りやすいので気をつけてください」という看板がいきなり出てくる。今までだってずっと木道だったのに、今更注意喚起ですか。と思ったが、この先は木道そのものが坂になっていて、やっぱり危なかった。
注意喚起看板からすぐに視界が開けた場所に出た。  8時55分。
おお、キンコウカがたくさん咲いているぞ。いきなり高山感アップ。
ウスユキソウ、イワイチョウなどが咲いている。
ちょうど下山してきた男性が、草花を撮影している我々に「さすが花の山の至仏山、この上のほうは小さな花がたくさん咲いていたよ、名前はわからないけど」と教えてくれた。
名前がわかるようになると、また山の楽しみが増えますよ〜。
小湿原から左写真のような岩場や急な階段を登って行く。
この先、岩場っぽくなるかと思いきや、またじめっとした道になる。
9時19分。 水場。階段と階段の間に目立たない感じであった。
ダンナの見ているほうに水場があって、チロチロと出てはいたが、この水は飲めませんと書かれていた。沸かせば飲めるのかなぁ。
水場の先もじめっとしたえぐられた道だ。
ゴゼンタチバナやモミジカラマツなどが咲いている。
そして、おおおおおおーーーーー。
大サプライズが待っていた。
右の写真でダンナの見る先にちっさーーーい生き物が。
そう、オコジョがいたのよ。
すぐ逃げると思いきや、いつまでも階段の段差の間に出たり入ったりを繰り返していた。
後ろから来た人をせき止める形になってしまったので撮影を諦めたが、もうちょっと付き合いたかったなぁ。
後ろの人にも教えてあげたんだけど、あまり興味ないみたいだった。
山に登るんだから、山の住民にも興味持ってよ〜。
下にオコジョちゃん4連発。
一番左の写真、どこにいるかわかりりますか。ちっさいのよ。
 
オコジョと別れて、ちょっとした湿原に出て、すぐに笠ケ岳との分岐に出た。9時36分。
おぼろげにここにベンチがあると地図に書いてあったと記憶していたが、笠ケ岳がわにちょっと入った場所に倒木がありベンチっぽくなっていた。あ、ここか。
そこに座って凍らせたエネルギーゼリーをとる。
暑くて死にそうだったが、これで体が冷えて元気が出た。小休止、約5分。
9時44分。あれが小至仏かなあなどと見上げながら登って行くと、また視界が開けた。木道が続き、張り出してテラスとちゃんとしたベンチなどがある。あら、地図に書かれていたベンチってここだったのか。こっちで休憩したほうが気持ちよかったなぁ。
テラス近くにヒオウギアヤメがたくさん咲いていた。
木道を少し進むと、進行方向とは別にV字に張り出した木道が。
最先端まで進むと燧ケ岳と尾瀬ケ原がよく見えたが、そのためにわざわざ木道を作り足したのかしらん。
先端にはシャクナゲの木もあった。
  この場所にはコバイケイソウもたくさん咲いていた。
もこもこの花がかわいらしく原を見下ろしている。
 
さらに進むと、木道近くの岩からニョキッとクルマユリが咲いていた。
この岩のあたりにはたくさんのクルマユリのオレンジ色が揺れていた。
あれが小至仏だね、と見通せる。
たぶんウサギギクと思うが、これもたくさん咲いていた。
左写真、すごく危険な場所に見えるだろうが、ぜんぜん危険じゃありません。すぐ下にちゃんと道がついているのよ。
右はクモマニガナかな。
テラスから先はほぼ木道か階段か岩場である。
岩には色とりどりの花が咲いている。
右はホソバツメクサかな。
10時21分 小至仏山。
意外にたくさんの人がこの岩の上で休んでいた。
右はコゴメグサ。
小至仏山からこれから向かう道がよく見通せた。
よーし、あれが至仏山、ゴールだな。・・・だな?
右はウメバチソウとたぶんヒメシャジン。
ところがですね、よーしあそこが頂上だ、と思ってたどり着いた景色がこれです。
まだ先があるじゃないの〜っ。
右はハクサンチドリ。
さらに、上の写真の頂上だと思って頑張って登った先に見えたのが左の写真です。なんじゃあの巨大な岩は。
山頂はどこよ〜っ。
右はイワショウブ。
上写真の巨大岩を右から迂回する形で道がついている。
この道がまた細いんだ。
下って来る人を待たないとすれ違えない。
右はダイモンジソウ。ミヤマダイモンジソウっぽくないけど、どうかな。
巨大な岩を迂回した先に見えた風景。
人がたくさんいるようなので、あそここそ山頂だ。
右はミヤマキンポウゲかと思ったが、葉っぱが違う。
どうやらキンロバイらしい。
初めて見る花だが、近づけない場所にあった。
  11時12分。 山頂到着。
それほど広くない山頂のあちこちに休んでいる人がいる。
我々も岩場の一つに陣取って昼食。
我々が来たコースのちょうど向かい側が山の鼻からのコースで、そちらからも次々と登山者が到着していた。
 
山頂からは尾瀬ヶ原と燧ケ岳。
雲に隠れたり出てきたりしていた。
11時43分。 下山開始。
 
   
   
花時期が7月というのであきらめていた
オゼソウが咲いていてくれた。
 
下山時にもちょっとした山のプレゼントがあった。
羽化したてのキベリタテハが目の前に。
きれいな金色の縁と青い斑点を見せてくれた。
   
  それにつけても、至仏山登山は騒々しかった。
常に物資を運ぶヘリコプターの音がしていたのだ。
深い山の中にあっても文明の騒音がする。
仕方がないことだけど、あまりいい感じはしなかったなぁ。
12時40分。 小至仏山。
13時12分。 笠ケ岳の分岐。
13時25分。 水場。
 
 
  13時52分。 鳩待峠まで2キロの道標。
14時19分。 鳩待峠まで1キロの道標。
14時36分。 鳩待峠休憩所到着。

それにしても暑い。私は下山時にはほとんど水も飲まずにそれほど乾きもしないのに、手持ちの水分を飲み尽くしてカラカラになった。
冷たいものは口にすると体調を崩すタイプなのに、ここでソフトクリームに手を出しても、全然大丈夫なくらい暑くて乾いてしまった。
ちなみに、これは花豆ソフト。400円なり。美味でした。
帰りの乗り合いタクシーも待ち時間まったくゼロで乗れた。
鳩待峠と戸倉の交通はストレスゼロだった。
 

前々から行きたいと思っていた至仏山。だが、登山口までバスか乗り合いタクシーを利用しなければならないので、行くのをためらっていた。登山できる期間が限られているので、関東の人が押し寄せて混雑しそうだし。だが、長い夏休みの一日を利用して、早起きして登る決意をした。
できれば、7月の花のたくさん咲く時期に行きたかったんだけどなぁ、と思っていたが、8月半ばでもどっさり花が咲いていてくれた。ものすごく嬉しかった。特にオゼソウは至仏山に行ったらぜひとも見たい花だったが、花時期が7月というのであきらめていたところ、下山時に発見。も、ホントに嬉しかった。
それから、オコジョね。かわいいの一言。まさか人馴れしたオコジョというわけではないだろうが、全然逃げずに階段のあいだをチョロショロしていた。夏の毛色は茶色だが、実物を見ると紫がかった茶色なんだね〜。そして、最後にキベリタテハ。毎年あちこちで見ていたキベリタテハも最近は撮影できる機会がなかった。下山時にいつまでもそばにいてくれて、じっくり撮影することができた。
いいことづくめみたいな至仏山なのだが、とにかく暑いのだけは困った。汗が噴き出て止まらない。どこまで登っても涼しくない。それもそのはず、日本中で35度以上の猛暑日になった日なのだ。いくら標高が高くても、夏の高気圧にはかなわないのかも。
小至仏山から先は樹木の日陰もなく、本当に辛かった。花がたくさん咲いている場所なのでなんとかがんばれたのだが。さらに小至仏山から先の岩のピークが続くあたりも辛かった。どこが山頂なのか、イライラするくらい先が見えない。初めて登る山だからなのだが、地図で見るより手強かった。
ともあれ、あこがれの花の山、ものすごく満足のいく登山でした。

至仏山 
尾瀬に至る道にはいろいろと制約がある。簡単にマイカーで直近の入り口に行くことはまずできない。
それぞれのプランでそれぞれの入り方が異なるので、行きたい場所を決めたらじっくりと調べることをオススメする。
我々は今回はごくごく一般的なルート、鳩待峠からのピストンで小至仏山を経るコースを利用。多くの人は鳩待峠から尾瀬ヶ原の山ノ鼻を通って至仏山を登り、小至仏山を経て下るコースを選ぶようだ。
最寄インターは、関越津自動車道沼田IC。インターを出るなり尾瀬への道案内はでっかく出ているので、案内に従って国道120号をひたすら走る。これがけっこう長い。百選の滝である吹割れの滝を通り過ぎ、ずんずん進む。進みすぎると栃木県になってしまうが、途中で曲がる場所もわかりやすく案内されているのでまず迷わない。戸倉温泉にバスの連絡所がある。駐車場がどこか迷うかな、と思ったが、これも案内がちゃんとしていて大丈夫。初めてでも心配はいらない。早めの到着だった我々はシーズンでも第一駐車場に入れた。道の右手を流れる川を渡った先が第一駐車場で、バスや乗り合いタクシーの発着所のすぐそばだ。
駐車料金は一日普通車は1000円。待合所にある自動支払機で払う。
同じ場所で鳩待峠への交通費大人一人980円を自動販売機で購入。
すると待ち構えていた係の人が人数を聞いて待機している乗り合いタクシーに振り分けてくれる。
我々の行った時間(午前7時台)で待ち時間ゼロ。30分ほどで鳩待峠の乗り合い所に到着する。
乗り合い所から道路を5分ほど歩くと休憩所のある広場になり、大きなトイレもある。ここには軽食やソフトクリームもある。
登山口もとてもわかりやすく書かれている。
注意しなければならないのは、至仏山は5月上旬から6月下旬の残雪期は入山禁止であることと、山ノ鼻から至仏山への登山道は登りだけの一方通行だということ。我々は承知の上で鳩待峠から直接登ったが、途中で「あれが至仏山ですか」と我々に聞いてきた初めて登る人が、下山してくるのにすれ違ったときに「尾瀬ケ原のほうへは下れないんですね。頂上で初めて知りました」と言っていた。そこはちゃんと調べておいたほうがいい。
今後またいろいろな制約が増えるかもしれない。行ってみようと思ったら、とにかく調べて行くことをオススメします。それだけの価値はあるし、調べないでもったいないことになっちゃうかもしれないので。
花を撮影しつつ、ゆっくり登る我々の足で、山頂まで3時間20分かかっている。あ、
最後に、帰りのバスと乗り合いタクシーの最終時刻を把握すること。これに乗り遅れると、通常料金のタクシーを依頼することになる。歩くにはちょっと辛い距離なので、気をつけよう。


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