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近県

2022/9/17(土)   雄山 (3003m)   
コロナ禍で唯一よかったことがある。観光業の落ち込みに対して、政府行政が援助する形で様々な補助が行われた。
2022年の秋は、県民割として、隣県や地域ブロック内であれば宿泊の割引とクーポン券がつく、というものがあった。
我々はお得となると、ついそれに乗ってしまいたくなる性格をしている。夏には長野県民割を利用して、お得に白馬大池まで行くことができた。
さて、富山県である。
もちろん、富山県も新潟県のお隣なので、隣県割が利用できるはずだ。
だが、今回のお得は、この富山県民割ではない。
立山黒部アルペンルートの会社が行っていたキャンペーンにより割引で、富山県と隣県の住民に限られたチケットが販売された。
こいつがむちゃくちゃお得だった。アルペンルートの立山駅から大観峰まで行く往復運賃11000円が5500円に、それにプラスして運行会社からのクーポンが2000円、富山県のクーポンが2000円、合計4000円のクーポンがつく。このクーポンは当日限り利用できるものではあるが、一人4000円はデカい。
どうしてもこのチケットを入手して、百名山である雄山に登りたかった。
しかし、さすがに人気のチケット、登山できる時間帯のチケットは完売で、完全に諦めざるを得ない状況だった。
ところが。
台風が近づいていた。
この秋、週末ごとに台風がやってきて、地方によっては甚大な被害も出ていた。
幸いなことに、日本海側の新潟にはほぼ影響はなく、同じく富山県にも影響は出ていない。
この週末に上陸しそうな台風はとんでもなく大きな台風らしいが、日本海側にはフェーン現象で高い気温になるくらいの影響しかない予報である。
とはいえ、西日本からアルペンルートに行こうと予定していた人もいるようで、3日前にチェックしてみたら、キャンセルが出ていたのである。
9時40分立山駅発。これなら、なんとか雄山に登れる時間帯だ。
本当はもうちょっと早い時間がよかったのだが、チェックした時にはこの時間しか空きがなかった。
これを逃したらもう取れないかもしれない。と、いうことで、ポチっと予約。
それから、宿を予約したが、こっちは富山県の隣県割の利用はできなかった。できなかったが、ごく近い場所に宿を確保することができた。
よっしゃぁ。
山に登る、というより、お得なチケットを利用するというのが目的みたいになってしまったが、とにかく台風の近づく9月の週末、我々は富山を目指すことになった。

  (右欄の花の写真は、中欄の記事と同じ場所に咲くものではない場合があります。)
  大きな写真を見たい場合はダンナのYamapのレポをご覧ください。こちらから。

9時少し前に立山駅に到着。
しかし、近くの駐車スペースはすでに満車で、案内の人に戻って橋を渡って右折した先にある、と空いている駐車場を教えてもらった。
と、遠い。
駐車して、支度をして、徒歩で立山駅を目指す。
橋を渡り、線路を渡って。9時5分くらいに立山駅に到着。10分近くかかった。
立山駅の周りでは木陰で予約の時間待ちをしている人などがいた。
我々はWEBチケットなので、発券機でチケット入手。
さらに、お得チケットについているクーポンを特設カウンターでもらう。
もう少し混雑しているかと思ったが、発券機もカウンターもまったく待ち時間なし。
9時40分のケーブルカーに乗るので、少し時間がある。
駅前の木陰に座って、クーポンの利用の仕方などを検討する。
9時30分 ケーブルカーに乗り込む。
こっちは、ギリギリ入れるだけの人を押し込む感じで立って乗るのも当たり前。
でも、かなり大きなケーブルカーで、ホントに乗れるのか、という人数が乗り込んでしまった。
9時45分 高原バスに乗り込む。
全員着席のバスなので、増便したようだ。
室堂までは50分ほどのバスの旅だ。
前に乗った時に左側に称名滝が見えるのだと知っていたので(前回は見えづらい位置で悔しい思いをした)とにかく左の席を確保。
すると、意外にもこの道は巨木の多い道だと分かった。
立山杉という巨大な杉が何本も立っている。この厳しい土地なのに。
杉を目当てに歩くのもいいなぁ。
ほどなく、称名滝の見える場所に到着。
下車はできないが、バスが徐行してくれるので、写真撮影ができる。
車窓はとにかく広大な自然が広がっている。
弥陀ヶ原の高層湿原は、どこまでもどこまでも広い。
苗場の湿原と比較にならない広さがある。
室堂にかなり近づいたところでバスがまた徐行してくれた。
左手の山が滝がさわさわと落ちている。
そうめん滝だそうだ。
あまりにも景色が壮大すぎて、滝の落差や規模がまったく分からない。
10時30分頃、室堂のターミナルに到着。
少し早いがここでクーポンを利用してお昼にすることに。
1000円で白エビかき揚げそば。クーポン利用者には温泉卵つき。
ちょっと高いか、いや、こんな場所だしな。
クーポン利用でなければ食べないけど、ちゃっちゃと済ませてしまう。
ターミナルが混雑していてお昼が食べらないかもしれないと想定していたので、11時前に食べられてラッキーだ。
外に出ると、たくさんの人が散策中だった。
立山玉殿の湧き水がコンコンと湧き出ている。
石敷の道が整備されていて、どっちに行けばどっちに出るのか、すぐに分かるようになっている。
我々は一の越、立山(雄山)方面へ。
かなりの人がそっちに向かって歩いて行っている。
10時55分 ターミナル出発。
この石敷の道が意外に歩きづらい。
どんぶりくらいの大きさの石をコンクリートでつないでいる感じの道で、デコボコしているのだ。
ちょっと気を抜くと躓く。
ずっとだらだらとした登りだ。
それにつけても、前方の左側の山。あれが雄山か。
とんでもない角度なんだけど。
ホントに2時間で登れるのか。
だらだら登る道と山の風景を見ただけでポキっと心が折れる。
無理だろ〜。
2時間であの建物の見える場所まで登るなんて、死んでしまうに違いない。
11時04分 室堂山荘前の広場。ここから室堂山への道が分かれているが、我々は直進。
11時07分 ぐるっと回ってキャンプ場方面に向かう道なのか、細い登山道が分かれている。
まだ夏の花が咲き残っていたりするのだが、小さい秋もあちこちにある。
ナナカマドが赤くなりかけている。
それにしてもまあ、一の越までのこのなだらかな坂がキツいこと。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、ボディブローのように足に響いてくる。
でも、景色はいいんだなぁ。
あの山の上に登るなんて、まだ信じられないけど。
うお、雪が残っている。
この青空、この炎天下で雪を見ると現実がどこかに吹っ飛ぶ。
確かに標高3000メートル近い場所なのだ。
11時40分 何やら祠らしいものが建っていた。
何の説明書きもなかった。
が、ベンチがいくつかあって、休憩する人がたくさんいた。
まだまだだらだら坂は続く。
いや、ホントに心を折る坂である。
一の越で帰ろうかな、と、本気で思う。
途中で、完全に心が折れきった人がしゃがみこんでいて、一緒に登った人にリュックを背負ってもらって、なんとか歩き出した。
ふと来た方向を振り返ると、みくりが池とターミナル周辺の建物と、ちょっと谷のほうに何やら色とりどりのものが見えた。
ズームするとテントだと分かる。たくさんあるなぁ。
一の越に近づくと、坂も階段状になり、ジグザクと登るようになる。
おや、その急坂の石の間にイワギキョウが咲いているぞ。
青空と同じくらいの青だ。
11時55分 一の越山荘にヘロヘロになりながら到着。
ちょっとだけ休む。
ガッツリ休むとそのまま倒れこみそうなので、先に進む。
進むぞ、進んでやるぞ。
ああ、なんてとんでもない山だろう。
この石ころだらけの急坂をホントに登るのかなぁ。
あれ、赤い矢印が登りで黄色い矢印が下り、とある。
一方通行なのか。交錯しないのは、登りやすいし、安全だ。
何度見上げてもひたすら岩と坂と青空が広がる。
たくさんの人がその岩にひっつくように登っている。
岩と石ころが果てしなく続いている。
12時41分 小さな祠が2つ、みくりが池を見下ろす場所にある。
ここはちょっとだけ平らな広場っぽくなっている。
三の越だそうだ。
あれ、二の越は?
いや、もう、どうでもいい。
とにかくこの難行苦行を終わらせなくちゃ。
赤い矢印に背中を押されながら歩く。
三歩登っては大きな岩にもたれかかって休み、二歩登っては立ち止まる。
たくさんの人が同じ感じでゆるゆると登っている。
時折、心折れた人が先に行った仲間とスマホで連絡をとって、ここで待っている、と言っている。
とにかく、キツい。
ホントーにキツい。
でも、じわじわとでも前に進めば、必ず山頂に到着する。
なんだか建物があって、たくさん人が休んでいる場所に出た。
山頂だ。
13時10分 正しくは山頂の手前、と言うべきか。
標高3008メートルまで行くには、参拝料2000円を支払って鳥居をくぐって行く必要がある。
まさか、ここでアルペンルートのクーポン使えますか、とは言えないだろう。
一番高い場所を踏むためだけに信仰もしていないのに2000円払うのはいかがなものか、と手前にある三角点を踏んだだけでその先には行かなかった。
左写真が鳥居と雄山の一番高い場所。
その鳥居の手前に小さな矢印があって、大汝峰、20分、とあった。
実は立山の最高峰が雄山ではないと知ってはいたが、その名前が大汝峰だとは記憶していなかった。
最高峰まで行ってターミナルに戻るにはぐるっと周遊しなくてはならないような記事を見たのが頭の片隅にあり、そっちまで行くのは無理と判断していた。
あとあと調べたら、大汝峰こそ最高峰で、ピストンで行けば登頂できたのだと判明。
大失敗だった。いいお天気だったので、さぞ気持ちのいい稜線歩きができただろうに。
勉強不足は、あとあとの後悔になる。
しかし、その時点では思考能力が欠如するほどヘロヘロだったのだ。
とりあえず、三角点とそのそばにある方位盤を撮影。
あの向こう側に見えるとんがった山は槍ヶ岳だろうか。
方位盤で確かめてみたら、確かに槍ヶ岳のようだった。
昼食はすでに食べているので、ほんのちょっと景色を楽しんでから下山開始。
13時20分。
13時33分 三の越。
14時ちょうど 一の越。
あとで写真を見たら、下山時、山頂から一の越までの写真がほぼ無い。
写真を撮影できる状況ではないのだ。
あまりの急降下にひたすら足元だけに注意を払って下っていた。
14時11分 祠。
一の越から先は遊歩道と言ってもいいくらいなので、下りは楽なものだ。
14時35分 室堂山荘前の広場。
振り返ると、あれほど晴れていた雄山の山頂方面がガスで覆われていた。
山の天気は目まぐるしい。
14時43分 みくりが池への分岐。
実はこのあたりで、ほんのわずかではあるがポツポツと雨が降ってきた。
台風の流れの雲だろうか。
今日の青空は本当に奇跡かもしれない。
帰りはみくりが池に立ち寄ってみることに。
14時49分 みくりが池。
みくりが池の周辺にはたくさんのイワイチョウの葉っぱがあった。
ああ、だからイチョウという名がついたのか、と、イチョウの葉っぱに見える黄色くなった葉っぱを眺める。
ダイモンジソウなども咲いていた。
15時03分 室堂ターミナル。
16時30分が最終なので、時間の余裕のある到着になった。
でも、空も曇ってきたし。上々の一日だ。
余裕のある時間で室堂ターミナルの立山ホテルのカフェでお茶をしてのんびりする。
大混雑する前のバスとケーブルカーに乗ることができて、暗くなる前に立山駅近くのホテルにつくことができた。
温泉つきのホテルで、今日の疲れを癒すことができましたよ。
ご苦労様でした。
さて、今回のアルペンルートの行程には、なんと一人4000円分のクーポンがついていた。
どちらも当日に使い切らなければならないので、限定的にはなるが、ものすごくお得である。
で、我々は何に使ったかといえば、右→室堂ターミナルにてお昼ごはん。白エビのかき揚げのついたお蕎麦。クーポン利用者には温泉玉子つき。1000円也。
←左、室堂ターミナル、ホテル立山でのお茶。けっこう大きなシフォンケーキと玉殿の湧き水で入れたコーヒーのセット、1500円也。シフォンケーキはダムシフォンケーキというそうで、クリームが観光放水かしら。雷鳥のクッキーつき。
右→玉殿の湧き水を使ったビール、500円也を4本、おつまみの白エビせんべいのこわれ、1000円也。
わはははは、全部自分たちの飲み食いに使いましたとさ。

この夏は青空の下の登山がほとんどなかった今年、ついに抜けるような青空と素晴らしい眺望の山歩きをすることができた。
室堂に向かうバスの中からもう素晴らしい眺めに来てよかった来てよかったと連呼する私。
雄山までの登山はホントーに苦しいものだったが、諦めなければちゃんと山頂に着くんだと実感した。
ただ、惜しいことに、実は3000メートルには到達していない。少し足を延ばして大汝峰に行っていれば今年初の3000メートル超えができたのになぁ、と、未だに後悔している。
お得なチケットがなくても、また行ってみたい、と思うくらい素晴らしい眺めと後悔が重なっている。
ところで、人間、あぶく銭を手にすると、何に使うか迷いますな。
二人で8000円也のお得クーポン、お昼を食べるというのは最初から考えていたが、あとはお土産でも買うつもりだった。
けど、開けてみたら、お茶に使うわ、ビールを買うわ。自分のお金だったら、絶対に食べないシフォンケーキだの、高い地ビールだの白エビせんべいだの。
あ、いや、全部おいしかったです。この機会に食べられてホントによかったですよ。
クーポン発行した会社や地域は、宣伝効果抜群だと思います。次行ったら、白エビせんべいは買うかもな〜。
雄山(室堂ターミナルより)
 
 我々は、新潟からなので、富山がわからのアルペンルートの利用になる。
  ついでに、今回利用したお得チケットも富山県の立山駅発のチケットになる。
  長野県がわからのチケットも色々お得なものがあるらしいので、思いつきで尋ねるよりは、あらかじめ調べておいたほうがいいだろう。
  北陸道立山ICを下りると、しっかり案内があるので、まず間違わずにアルペンルート立山駅に到着することができる。
  ただ、シーズンや休日など込み合う時には駐車場が遠くなり、そこから徒歩で駅まで行かなければならないので、かなり余裕を持って到着するように心がけたい。
  立山駅からケーブルカーとバスを乗り継いでほぼ1時間ほどで室堂ターミナルになる。
  そこから登山開始。山頂まではゆっくり喘ぎ喘ぎ登って、我々のタイムでは2時間15分で雄山山頂。
  立山連峰の最高峰は、その先約20分、と案内の書いてあった大汝峰なので、そちらにも足を延ばしてみてもよい。


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