番外

 近県の山

2011/7/9(土)  月山 標高1984m  山形県
月山は、実は我が家では登山する山には入っていなかった。というか、県外の山は最初から登山リストには入れないつもりでいた。
ところが、どこもかしこも雨模様の梅雨の週末、山形方面だけが晴れるということがあって、じゃ、月山でも登ってみる?と戯れで言ってみた。この時点で、実は私は月山と羽黒山を混同して考えていて、月山はほんの数百メートルくらいの標高しかないと思っていたのである。だから、山形でもドライブついでの登山で登れるだろう、というワケだ。
では、ということで、調べてみたら、おいおい、月山ってば、標高2000メートル近い山じゃないか。こりゃ、日帰りは無理だろう。だけど、あら、まあ、クロユリが咲くのか〜。という事実をみつけてしまった。
最初から登山できる山のリストに入っていない山なので、何が咲くのか全く知らなかったが、クロユリが咲くとは驚きだった。
というのも、クロユリ、かねてから見てみたい花の一つなのである。
ところが新潟にはクロユリが咲く山が無い。いや、あるかもしれないが、そうそう簡単に行ける山ではない。(ちなみに、新潟から登ることのできる飯豊にはクロユリが咲くそうな) クロユリが見られる山というので、登山コースも調べてみた。
すると、リフトを使えば1時間半で山頂まで行ける姥沢口と3時間半かかる表参道である羽黒口があることがわかった。リフトはお金がかかるので、除外。羽黒口はどうもずっと石畳のなだらかな道らしいぞ。
調べれば調べるほど、もしかしたら、登れるかもしれないと分かった。クロユリを見るには、我が家からだと月山は一番楽でお手軽な山かもしれないぞ。
そう思ったらもう、クロユリの咲く週末、晴れの予報を信じて自動車を走らせていた。
午前4時起き、5時過ぎに出発。無料実験の終了してしまった日本海東北自動車道を利用して朝日まほろばまで行き、国道7号を北上。鶴岡から羽黒山方面を目ざす。県道45号から林道の県道211号に入り、とんでもないヘアピンカーブの連続を路線バスに先導されながら登る。この路線バス、絶対に自家用車に先を譲らない。結局下車する人がいたので先に行かせてもらえたが、なにかしらのポリシーがあって自家用車の前を走ることにしているのかと疑うくらいゆずってくれなかった。
それはさておき、どんどん標高を上げながら、バス停の示す合目の表示を数えていく、7合目が過ぎて、いよいよ8合目の駐車場だ。
げ、満車。大型バスのスペースは空いているが、他は手前の路肩に至るまで自動車で一杯である。午前9時ちょうどあたりでこの状態か。しかし、ここまで来て駐車できないから戻るというワケにもいかない。
仕方がないので、駐車場の入り口よりもちょっと手前になる道路まで戻って、1台だけギリギリ入れるスペースをみつけて駐車した。昨日が山開きだというから、晴れの予報の今日は混雑は必至というわけだろう。
トイレまで遠いので、一式仕度を終了してからトイレに向かった。
        (写真が多いためにサイズを小さくしています。花の写真は、ダンナのサイトからご覧いただけます。)
路肩にはみ出した自動車、自動車、自動車。駐車場はまだ向こう側である。
ちょうど山開きの物資を山小屋に運んでいたらしい。ヘリコプターが何度も往復していた。
このヘリのスペースも潰されていたので、駐車できる台数が少なくなっていたのかも。
我々の後から来る自動車は大型バスの場所に入れてもらえたようだ。
下を見下ろせる場所に月山八合目の表示がある。
だが、雲の下で何も見えない。
右写真はレストハウス。トイレの前くらいから撮影。
トイレは協力金100円が必要。水洗でペーパーもある。
9時07分。新奥の細道と書かれた月山への登山道に入る。と、すぐに分岐になった。
我々はどっちに行くんだ?
ちゃんと案内図があって、どっちに行っても登山道に出るが、右がわを進んだほうが若干早いらしい。
と、いうことで、右を選択。
登山道に出るまでは弥陀ケ原のお花畑一周コースを半周することになる。木道の気持ちのいい道だ。
池塘が点在して、小さなミズバショウも咲いていた。
実は駐車場の路肩あたりですでにハクサンチドリやらコバイケイソウやらアカモノが咲いていて、歩かずとも充分に味わえる高原だ、などと話していた。
9時20分。分岐に到着。ここを右に行くと登山道。左に行くと御田ケ原参籠所を経由して駐車場に戻る。帰りはそっちから戻ってみよう。
木道が終わり、石のなだらかな登りになる。
振り返ると、遠くにレストハウス。池塘が光って緑がとても綺麗だ。
30分も歩かずにこんな高層湿原を見られていいんだろうか。
ずっとなだらかな道かと思いきや、ちょっと階段状に登る道になった。笹などが生い茂り、見通しも悪くなる。
だが、そんな場所にもイワカガミやイワナシが咲いているし、あらまあ、シラネアオイも咲いている。
だけど、ちょっと待て、ものすごくちっちゃいぞ、ここのシラネアオイ。
10時03分。最初の残雪出現。
太陽が出ていたので、目が痛くなるくらいまぶしかった。
けっこうな斜度の登りが続き、さすがに疲れて小休止。
大きな岩を敷き詰めて道にしたような登山道で、意外な筋肉を使うのだ。
そこから少し登ると、登山者がめいめいにカメラを草花に向けている場所に出た。
ホソバイワベンケイ、ミヤマシオガマ、チングルマ、ハクサンイチゲ、ミヤマウスユキソウ。アオノツガザクラ。
たくさんの花が咲いている。
ミヤマシオガマはこんもりとピンクの山を作っているので、とても綺麗だ。
10時18分。ここはたたみ石であるという表示。
他の登山者と一緒にしばらく花を撮影した。
10時28分。前方に小屋が見えてきた。仏生池小屋だ。
霊山らしく、お地蔵さまや古い石碑などが並んでいる。
かなり古そうな九合目の表示。
仏生池は真名井神社でもある。
小屋もオープンしたてで、中で飼い犬のダックスフンドがきゃんきゃん鳴いていた。
小屋に向かって右手にある小さな池が仏生池かしらん。サンショウウオのタマゴがごっそりあった。
小屋の裏から山頂に伸びている登山道を進む。
あの山が山頂かなぁ。
いいえ、あれはオモワシ山。
と、表示が教えてくれた。10時40分。
今度は岩が積み重なったような道になる。とはいえ、よじ登るような場所はない。足場を選んで運べば自然と登る感じだ。
また残雪。左手を見下ろすと、見事なまでの高層湿原が広がっている。
花に向かってカメラを向けている登山者がヒナザクラが群生してますよ、と教えてくれた。
白い小さな花だ。
これは白いハクサンコザクラみたいな感じだなぁ。
そういえば、この山にはハクサンコザクラが無いなぁ。
道わきの石に赤い文字で山頂まであと1600メートルと書かれていた。
目の前に岩が積み重なったような壁が出現。
おお、これが行者返しか。10時57分。
鎖場などの経験がある人なら、なんてことのない岩場である。唯一の急登箇所らしいが、それほど困難ではない。
途中にも石碑などがあり、なんでこんな急な場所に?と思いながら覗き込む。
どうも、この行者返し、原因不明の事故が多いらしい。
言い伝えとしては、月山山頂を目指していた役行者をまだ修行が未熟だとして童子が追い返した場所、らしい。
我々は追い返されないでよかった。
ほんのわずかの急登である行者返しを登りきると、目の前に見事なまでの石畳が続いていた。
この場に来てこの石畳にはただただ感動。
何か書かれている表示があったので、近寄って見てみると、「月山とお花畑をめぐるみち」と書かれていた。場所の名前じゃないのぉ?
11時13分。
このあたりがモックラ坂かしらん。
ちょっと階段がちな登りになる。
このあたりからキバナノコマノツメが目立ち始めた。
階段を登りきると眼下に残雪が美しい山並みが見えた。
どんどんと雲が湧いては昇って行く。
11時18分、木道出現。
と、いうことは、このあたりが大峰。
それほど歩かないうちに雪渓が出現。
雪を避けた踏み後が岩場のほうにあったので、我々は流されるようにそっちに進んでしまったが、結局雪の上を歩くのが一番楽と判断。
途中で雪の上に戻った。
岩のほうにはヒナザクラなどが咲いていた。
あら滑る。長い雪渓、と思っている間にポンと建物の裏みたいな場所に出てしまった。
11時36分。
その建物こそ月山神社本宮。建物の脇を通って回り込むと入り口になる。
ただし、お一人様500円の御払い料で身を清めてもらわないと中には入れない。
我々は500円を惜しんで入りませんでした〜。(こらこら)
ところで、てっきり三角点はこの神社の中にあるものと思い込んで探さなかったのだが、実は神社の裏側、つまり我々の来た道の途中にあったらしい。
ちょっと分かりづらい枝道があって、どこに通じているんだろうね、などと言っていたのだが、まさかそれが三角点とは。
ちゃんと書いておいてくれよぉ〜。
ちょっとだけクロユリを見に小屋のほうに行って、クロユリを見てから神社の下の斜面で昼食。
たくさんの人が思い思いの場所に座って休んでいた。
小屋やトイレや神社なんかがあって、本当に2000メートル近い標高の場所なのかしらん、と思ってしまうくらいだ。
リフトを使えば短時間で登れるコースもあるし、我々の利用したコースはとてもなだらかで安全なので、子供やお年寄りも多かった。
昼食のあと、もう一度小屋のほうに下って、クロユリを撮影。
しかし、クロユリ、思っていたよりずっと小さかった。
てっきりヒメサユリくらいの大きさだと思い込んでいた。この小さい形だとクロコバイモじゃないの、とダンナに言ったら、あとで調べてくれて、クロユリはバイモ族なのだとのこと。なるほど、コバイモのほうが近いのか。
右写真、人の姿が写ってますが、こんな感じで地味に咲いています。
小屋からさらに下って行くと、歌碑が立っている。
「雲の峰いく川崩礼亭月の山(くものみね いくつくずれて つきのやま) 桃青」と書かれているそうだ。桃青とは松尾芭蕉の改まった時に使う俳号とのこと。
歌碑の近くは少し広くなっていて、方位盤などもあった。ここで休憩している人も多い。
振り返ると、小屋や神社がとても格好よく見える。
13時ちょうど頃、下山開始。
13時25分、行者返し。
13時45分、仏生池小屋。
13時57分、たたみ石。
14時43分、弥陀ケ原の分岐。
来た方向とは別の御田ケ原参籠所方面に進んで帰ることに。ところがこちらがわは、木道ではなく、石だたみの道で、ちょっと歩きづらかった。
でも、気の早いキスゲやハクサンチドリが咲いている。ヒナザクラの姿もあり、花が目当てならここだけでも充分かも、と思ったりして。
右はウズラバハクサンチドリ。最初こいつは斑点病かと思ったが、そういう種類の花だった。
14時50分、御田ケ原参籠所。
東日本大震災の犠牲者の慰霊などがされていたが、デンとウサギの彫刻があって、何だ?と考えた。そして、ハッと思い出す。ここは、月の山、月山。ウサギはつきものじゃないか。で、山頂にも「月山卯歳御縁年」と書かれたものがあったのを思い出した。やっとここにきてウサギと月山の縁がシンクロした。いや〜、偶然にしても、卯年に月の山に登っちゃったよ。
先月の光兎山と合わせて、なんか、妙な達成感があるよ。
御田ケ原参籠所から、木道が続く。意外に長かったが、キスゲやヨツバシオガマなどが咲いていて飽きない。
15時ちょうど、駐車スペース。
ご苦労さまでした。

登ってみて、こりゃマズい山を知ってしまったぞ、と思った。
というのも、花だけが目当てなら、この月山ほど簡単な山は無いのだ。
なにせ、無料で8合目まで行けて駐車できる。で、駐車場にすでにコバイケイソウが咲いている。
樹林帯を全く通らずに、出発段階ですでに高層湿原である。
すがすがしい高原の空気の中、雪渓の上を歩き、ほとんど辛い場所もなく、クロユリの咲く山頂に立てる。
なんだか、辛い登山がバカらしくなっちゃうではないか。
いや、花が全てでも、眺望が全てでもないんだけどね。
と、言いながら、実は山頂で私は原因不明の吐き気に襲われ、もしかしたら緊急であの山小屋に泊めさせてもらうハメになるかも、と思った。しばらく安静にして、トイレで汗になったシャツを着替えたらなんとか治まったが、ちょっと怖い感じだった。山で体調不良は冗談ではすまされない。軽い気持ちでの登山は禁物である。
とはいえ、本当に月山は花好きにはオススメの山だ。クロユリにつられて登ってみて、本当によかった。

月山 
最寄ICは、山形自動車道鶴岡IC。県道47号鶴岡羽黒線を通って、羽黒山方面に進む。案内がいたるところにあるので、大丈夫。月山、とか、羽黒山、とか書いてあるほうに向かえばよい。出羽神社などがある羽黒山の有料道路とは反対側にビジターセンターがあり、そこの脇から県道211号月山公園線に入る。この県道はほとんど林道である。あとはうねうねくねった林道をひたすら終点まで進めばよい。ただし、けっこう長いし、すれ違いが困難なくせに大型バスが通るので注意が必要である。
8合目駐車場にはレストハウスやトイレがある。トイレは協力金が必要だが、数も多く、綺麗だ。
登山道はほとんどが石畳や石の積み重なったなだらかな登り。樹林帯ではないので、日光対策は必要だ。
公式タイムで3時間半。我々のペースで2時間半で山頂。クロユリは6月下旬から7月はじめがシーズン。山頂には小屋があり、綺麗なバイオトイレもある。


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