番外

 近県の山

2017/8/14(休)  月山 標高1984m  山形県
今年のお盆休みはカレンダーの都合でいつもの年よりも日数が多い。
本来の我々のスタンスからすると、喜んで遠い場所に遠征の計画を立てるのだか、今年はちょっと実家で重要な行事があって家を空けられない事情が生じた。単発で近場であれば行けるので、天気予報を読みながら夏山に登ることにした。
さて、今年の夏。
どういうワケか大気が不安定な状態がずっと続き、日本全国いつどこで豪雨になるかわからない状態だった。
天気予報もコロコロ変わり、どこの山が登山に適した天候になるのか、まったく読めないでいた。
そうこうするうちに、夏休みも進んでしまい、14日か15日のどちらかに登山する以外なくなってしまった。
うーむ、どちらも地元では雨マークが出ている。どこに逃げても雨か? 
調べましたともさ、ネットを駆使して。日中Aマークが並んでいる山はないか。
近場で登れる山があった。月山。月山だ〜。
月山はもう、我が家では定番の山になりつつある。とにかく、自動車の移動の距離を除けばこれほど簡単にこれほどゴージャスに花を楽しめる山は無いのだ。が、実は私にとってゲンのいい山ではない山でもある。
この山の山頂では、必ずといっていいほど具合が悪くなるのである。
さらに、一度は雨のために途中撤退したこともある山だ。
ちょっと躊躇していたら、ダンナが今度はリフトを使って行ってみよう、と提案してきた。
リフトを使えば、お金はかかるが登山時間が1時間短縮できる。
さらに、リフト乗り場は月山道路のインターからそれほど距離がないので、自動車の時間も短縮できる。
つまり、家を出発する時間を1時間ほど遅くしてもいいんじゃないか、という計算が成り立つ。
よし、とんでもない早起きをしないでいいとなれば、私のあてにならない体調も持つんじゃなかろうか。その計画、乗ろう。
そんなこんなで、前日14日のほうが雨の確率が高かったので滝を見るのにあてて、15日、山形に向かって出発した。

6時30分に家を出て、実は土砂降りの雨の中新潟県を北上した。ホントに月山に登れるんだろうか。
ま、雨ならまた途中撤退も視野に入れておこう。
山形県に入ってもなんとなく空はどんよりとしている。
日本海東北自動車道の無料区間である温海温泉から鶴岡をありがたく利用して、さらに月山道路に入ったのはいいが、ナビめ、またとんでもない道を案内した。
自動車専用道路である月山道路は一応国道112号ではあるのだが、自動車でない場合はほぼ並行して走っている旧国道112号を走る必要がある。ほぼ並行、と書いたのは、月山道路のほうはトンネルで広い道路になっているが、旧道はトンネルなしで峠を越えているぐねぐね曲がった林道なのだ。月山リフトはその旧道から入るスキー場にあるリフトで、ナビが案内した道は間違ってはいない。
だが、手前のインターから下りて(多分、湯殿山へ行く道の入口と思う)、林道を延々とぐねぐねと走る道を選択してくれた。長かった。
新潟から行く場合は、月山道路をそのまま月山インターまで乗って、山形道には乗らずに国道112号を少し走って弓張平公園に入る入口が左に分かれるので、そっちから入ったほうが絶対にいい。途中の志津温泉までは道路も広くて走りやすい。
林道でじたばたしているうちに、空は青さが広がっていたようだ。
駐車場に入るときにはすっかり晴れていた。今日にしてよかったなぁ。

10時10分ころ、月山スキー場の駐車場に到着。
かなり広い駐車場は八割くらい埋まっていた。
トイレに入って準備を始めたところで、ダンナが重大発表。
「カメラ、忘れた」
どひゃ〜、一眼がない。
仕方がないので、私のコンデジをダンナに渡す。
それにしても、駐車場から見回してもリフトが見えないんだけど、どこ?
宿泊施設などある方に歩いて行き、右にカーブして少し歩くと、仮設小屋みたいな場所があり、月山登山の協力金を徴収していた。一人200円也。パンフレットつき。
そこからさらに左にカーブしてコンクリートの坂道を登る。
ちなみに、この仮設小屋あたりから右にそれる歩道があり、それはリフトを使わずに姥ケ岳方面に行く登山道だ。
パンフレッによると、リフトに乗ったコースに合流するまで100分かかる。リフトに乗ったのと時間の差は70分とのこと。
傾斜のキツい坂道を登ったさきにやっとリフト乗り場。
遠いぞ〜っ。駐車スペースから10分以上歩くぞ〜っ。
待つこともなくすぐにペアリフトに乗る。往復1030円也。
このリフト、かなり長いこと乗る。
リフト代、高いな〜と思っていたが、こんなにガッツリ上に連れて行ってくれたなら、ものすごくお得かもしれない。
足元にヨツバヒヨドリがたくさん咲いていて、アサギマダラもたくさん飛んでいたが、写真には撮れませんでした。
10時50分 山頂駅到着。トイレに行ったりして、準備を整え歩き出す。目前に山が見える。よく調べていない私は、あれが月山かと思うが、いやいや、そんなワケありません。
山頂駅のそばにある地図看板であれが姥ケ岳とわかる。あれを登って月山に向かうコースと裾野を回って向かうコースがあるらしい。
山頂駅から木道が続いている。
傍らにはキスゲやヨツバシオガマなどたくさんの花が咲いている。
11時ちょうど。姥ケ岳に登るコースと裾野を歩くコースの分岐。ダンナは迷うことなく姥ケ岳方向へ。
あ、登るんだ〜。
あとから聞いたら、裾野を歩くコースは知らなかったんだって。
いや〜それにしても花が多い。
チングルマがまだキラッキラのきれいな状態で群生している。
雲が開けて、リフトの下駅やはるか下の月山湖が見える。
姥ケ岳までの登りはひたすら一本調子。
雲が切れると直射日光が当たり痛いくらいだ。
でも、とても小さい子供から確実にオーバー70エイジのお姉さまグループまで登っている。
タテヤマリンドウとミヤマリンドウが同居している。
月山は雪が解けるともう秋まで全力疾走である。
11時23分 姥ケ岳山頂。
一面のお花畑になっていて、あちこちにベニヒカゲが飛んでいるのだが、なにせコンデジなのでピントが合わないしシャッターがすぐに切れない。とほほ。
姥ケ岳からなだらかに下ったり登ったりして月山をめざす。
雲の中にその道が隠れたり、わっと浮かび上がったりして、とにかくきれいな景色だった。
たぶん、金姥という湯殿山に向かう道との分岐のあたりだと思うが、このあたりからハクサンイチゲが姿を見せ始めた。
トモエシオガマ、エゾシオガマもちらほら。
それにしても、見事な石畳だ。
実際のところ、石がデコボコしていて歩きやすいわけではないが、この道を整備した人たちには頭が下がる。
一見、この石畳がずーっと続いているみたいに見える。
だとしたら、月山、楽しい気楽な山なんだけどな。
ハクサンフウロ、アカモノ、ウサギギク。
とにかく花が絶えない。
12時18分 牛首という分岐。ここで姥ケ岳の裾野を歩くコースと合流する。
ここから登り。
とにかく登り。
ひたすら登り。
雲の中に突入したらしく、すっかり横殴りの霧になり、風がもろに当たる左側のメガネだけ曇ってまったく見えなくなり、遠近感がめちゃくちゃに。
しかも、寒いし。でも、登りなのでひいひい息がきれてるし。
ヤバいなぁ、また山頂で具合悪くなるかも、と、ひるむ。
石段はただのガレ場のようになり、どこをどう歩くかわけがわからなくなる。
これねぇ、坂道に見えるけど、現場じゃ垂直の壁みたいな感じなのよ。
行く先は白い霧の中で、どれほどこの壁が続いているのかわからずに、ちょっと絶望的になる。
その絶望的な壁をひいひい言いながら登ると、前方になにやら見える。お地蔵さんだ。13時ちょうど。
右に曲がるとすぐに赤い鳥居の鍛冶稲荷神社。
その鍛冶稲荷神社のわきからまだ登りが続く。
小さい子供がぐずっているのをしかりつけている母親がいたりして。子供も母もすごいぞ。
なにせ、霧と風がひどくて、寒いんだかなんなんだか感覚さえもわからなくなっている。
13時10分。 なんじゃあの石碑は、と息も絶え絶えの中見ていたが、一番最初に月山に登った時にこの石碑まで来ていた。
松尾芭蕉の歌を彫った石碑である。
さらになだらかに登ると霧の向こうにうっすらと建物が。
やっと山小屋だよ〜っ。
13時15分。 山小屋と山頂神社の間の斜面で昼食。いつもここで高山植物を敷いて昼食だわね。
私はトイレで汗になった衣服を着替えて復活。
体が冷えてどうにかなりそうだった。
月山には山頂にきれいなトイレがあって、本当に助かる。
暖かいカップめんとおにぎりでさらに復活。
以前8月に来た時には山頂の広場にもヒナザクラが咲いていたのだが、見当たらない。
少し三角点がわまで歩いて探してみることに。
しかし、霧がさらに濃くなり、ついには大粒の雨になってしまった。
慌てて雨具を身につける。
あまりに雨がひどいのでヒナザクラも三角点もあきらめて退却。
13時57分 山小屋から下山開始。
14時05分。 鍛冶稲荷神社。
まだ霧は深く、雨も降っている。
さらに10分下っても雲の中だ。
ようやく雲の下に出た。と思ったらあっという間に日差しが突き刺してくる。
はるか下が見通せて、圧巻の風景だ。
しかし、ガレ場も石畳もゴロゴロした石でけっこう歩きづらい。
私は登りの疲労がここにきて、足首が安定せずにびいびい文句を言いながら歩いた。
思ったように歩けないよぉ。
14時48分。 牛首。
上の道は登りの時に使った姥ケ岳を経由するルート。
我々は下山時は裾野を行くルートである下の道を選択。
下の道にはまだたくさん雪が残っている。
雪はそのまま季節のタイムカプセルだ。
もしかしたらヒナザクラも咲いているかも、と思ったら。
もんのすごい数咲いていました。
群生するんだ、ヒナサクラも。
ただ、白いからハクサンコザクラみたいに目立たない。
裾野を歩く道は、残雪の下がわを歩くので、その解けた水が沢になる場所を何か所か渡る。
8月の今はそれほどの水量もないので、渡るのは大変ではない。
それにつけても、すごいお花畑だ。
チングルマ、イワイチョウ、キスゲ、ヨツバシオガマ。
道の脇、斜面、そこらじゅう花だらけ。
木道になって歩くのも楽になった。
リフト乗り場まで少し登ることになるが、石ゴロゴロの下りよりもずっと楽だった。
15時20分。 リフトを使わないコースとの分岐。
15時34分。 姥ケ岳コースとの合流点。
15時40分。 リフト上駅。
15時55分。 リフト下駅。
16時05分。 駐車スペース。
ご苦労様でした。
帰路、志津温泉から月山スキー場に至るぐねぐねした道の途中で湧水を汲んでいる人がいるのを来る時に見ていたので、その場所で水を汲んで帰った。
地図にはないが、これも名水百選の月山山麓湧水群のひとつに間違いないと思う。

リフトを使って楽々登山と思っていたこのコース、実は山頂直下の登りがとんでもなくキツいことがわかった。晴れていればもう少し楽だったかもしれないが、このキツい登りで我々は霧と強風になってしまって、さらにキツさ倍増の印象である。
こんなに登りがキツいのなら、たとえ登山時間が1時間長くなっても弥陀ヶ原からのコースのほうがいいなぁ。あっちは、無量坂がだらだら長いけど、概ねゆるやかな石畳だ。
ただ、景色は圧倒的にこちらの姥沢コースのほうがいいと思う。残雪と緑と花と、遠くに光る月山湖。姥ケ岳までなら、志賀高原の夏リフトで高山植物園に行くよりずっと高山植物の宝庫を見られるお得な場所である。
またクロユリの季節にこちらのコースから登ってみるのもいいかもな〜、と楽しみが増えた感じだ。

月山(姥沢登山口月山リフト利用コース) 
最寄ICは、山形自動車道月山IC。インターを出て山形市方面に進むと、月山入口という表示がある。弓張平公園3.2キロという表示のほうが目に入るかもしれない。その矢印にそって左折。あとは、弓張平公園を通り過ぎ、志津温泉を通り過ぎ、道案内の示す通りに月山スキー場を目指せば大きな駐車場に着く。
ちなみに、新潟方面から行く場合は、山形自動車道が湯殿山ICと月山ICの間がつながっていないで、途中、自動車専用道路の月山道路という国道になっているという、実にややこしいことになっているので注意が必要だ。つまり、新潟からは、月山道路の終点まで行けばいい。まちがっても途中から国道112号の旧道に入ったりしないこと。いや、林道運転が好きな人はいいんですが。
しかも、日本海東北道と山形自動車道もつながっていないので、鶴岡で一度高速を下りるひつようがある。実にややこしい。
リフト駐車場からリフト乗り場まで徒歩10分ほど。
リフトは往復1030円。運行時間の注意は必要である。
へたれきった我々の足でリフト上駅から姥ケ岳経由で2時間20分で山頂。ただし、山頂直下はものすごい風と霧だった。
トイレは駐車場、リフトの上駅と下駅、山頂にある。


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