番外

 近県の山

2019/9/7(土)  蓼科山 標高2530.7m  長野県
実は夏休みに登りたい山の一つが蓼科山だった。
いや、登りたい山というのには語弊がある。登りたい山は本当は八ヶ岳だったのである。
しかし、新潟からだと八ヶ岳は遠い。日帰りには無理がある。
それでも、長い休みの夏休みであれば、ものすごく早くに起きてものすごく遅く帰るつもりで、最短で登れるコースを選べばなんとかなるんじゃないかしらん。
と思って山地図を買った。
そしたら、八ヶ岳には南と北があって、北八ヶ岳と言われる山々であれば、お隣の長野県から登れるとわかった。
しかも、七合目というかなり高い位置から登れる山があるじゃないですか。
蓼科山。なんと、百名山だし。
ここなら日帰りできるよ、登山時間も短いし。
と、いうことで、夏休みには蓼科山に登るつもりになっていた。
だがしかし、天候が思わしくなかった。
どこに行っても雨っぽい。
唯一なんとか雨じゃない天気予報が出ていたのが月山である。雨じゃなかったけどね。濃霧だったけどね。(レポはこちら)
そんなこんなで、夏休みを潰してしまった。
9月に入って花の時期も過ぎようとしている。
この時期に登る山を探していたのだが、そういえば蓼科山は岩ばっかりで花はあまり期待できない山らしい。であるなら、花の季節じゃない時に登っておいたほうがいいかも、と考えた。
夏休みが終わり、次の週から三連休が二回連続するカレンダーだから、きっとこの週末はあまり登山客もいないだろうし。
天気予報も上々だ。
よし、9月の初めは蓼科山に登ろう。
そうね、ピークハンターではない我々にしては珍しく、ただ登るためだけの登山を決意したのだった。
いや、ホント、ただ登るためだけの登山でしたとさ。

自宅を午前6時半前に出発。
お隣の長野県とはいえ、長野自動車道からも少し離れた蓼科高原である。ナビに案内してもらい、上信越道上田菅平インターで下りて、国道152号をひたすら南下。白樺湖の脇を通って、目的地の七合目登山口のある御泉水自然公園を目指した。
到着してびっくり。けっこうな台数とめられる駐車スペースがすでにいっぱい。道路わきもいっぱい。止める場所がなくて、困ったが、トイレ脇に軽自動車ならなんとか止められる場所にねじ込んだ。この中途半端な時期にも人気なんだ、蓼科山。
支度をして登山道入り口の鳥居をくぐる。
10時35分。
余談ではあるが、この日、ダンナは体調不良だった。後日診察を受けて、胃腸炎だったと判明。時折差し込む腹痛を抱えての登山だったらしい。
とんでもないですぅ。
  道は最初平らな石を敷き詰めたようななだらかな坂だ。
小さな兄弟二人とお父さんと、ほぼ同じペースで歩くことになった。ずっとこのグループとデットヒートかな〜と思ったが、意外にお兄ちゃんが根性なしで我々が先になってしまった。
 
広めのなだらかな坂のまま道は続く。
花はほとんどなく、きれいな苔にマイヅルソウのハート型の葉っぱが見えるくらいだ。
10時48分 馬返しの標識。
この先もなだらかで馬、大丈夫じゃん、とか言って歩く。
11時ちょうど。 道に敷き詰められた石が盛られて小山になっている。ケルンとは違う感じだが、ちょっとした目印になる。
どうやら左手は沢だったようで、まっすぐ行くと沢の上流。右手にカーブするのが登山道であると示す標識が出てくる。
11時13分。
ここをすぎるといよいよ登山道が急になってきた。
坂の角度が違う。
11時23分。 天狗の露地の標識。なんじゃそりゃ。よく分からないが、別の入り口からの登山道の合流だろうと思い込む。あとでガイドブックを見たら、100メートルほど行くと礫地が広がり、眼下に女神湖が見下ろせるらしい。
いよいよ道は険しくなる。
花もない。ただ、とにかく苔は美しい。
コケマニアは毎日来たくなるくらいの山だろう。
道はしまいに階段だったらしい横に渡された丸木が半分崩れたような急な角度の道になる。
すんげえ辛いんですけど。
ところで、私は七合目があるなら八合目があると思っていた。
いっこうに八合目が出てこない。
自分がどこにらへんまで登っているのかもさっぱりわからない。
たくさんの登山者がいたのだが、みんなちょっと進んでは休み、休んではがんばって登っている。
みんなキツイと思っているのがよくわかる。
これが山地図にあるザンゲ坂というやつだ。
ザンゲして救われるなら、いくらでもザンゲするけど。
11時57分 突然前方の木々が切れて青空が見えた。
おお、小屋がある。あの小屋はいったい何合目なの。
八合目はどこ〜、と疲労困憊で見上げる
ここは将軍平で、大河原や北横岳方向からの登山道の合流点である。小屋は蓼科山荘。
小屋前にテントがあって、Tシャツなんか売っていたり、テラスがあってアイスクリームが売っていたりと、なんか軽くお祭りしているような明るさがあった。
今までの辛さはなんだったんだろう。
アイス食べようかとも思ったが、ダンナの調子と私の胃の弱さも考えてやめておいた。
ここにはわずかにフウロが咲いていた。
ほぼ休まずに山頂に向かう。
小屋に向かって右手に進むと山頂への道になる。
ここまでの急坂をザンゲ坂というとあったが、この先のほうが実はすごい。
ほぼ岩。
みんな岩。
とにかく岩。
登れは登るほど角度か急になる。
しかも、登りはじめが遅かった分、下山する人たちが多い時間帯になり、すれ違いを待つケースが増えてくる。
みんながんばって登った人たちで、口々にあとがんばれとかあとちょっととか教えてくれるのだが、あとちょっとと言われて見上げると延々と岩の壁が続いてる。
言われれば言われるほど絶望的になる。
なんじゃ、この山は。
あまりにキツすぎて、途中で引き返すことを決意した女性もいた。
先が見えないから、その決断はわからないでもないが、彼女が戻ったあたりから山頂はもうひと頑張りだった。
ここまで頑張ったのに、ちょっともったいない。
それまで振り返っても霧に包まれて、下界はほとんど見えなかったが、ここで途切れて小屋の屋根が見えた。
高度はかなり上がっているが、距離的にはほんのちょっとしか進んでいない。
 
  山頂の景色は素晴らしいですよ、と教えてくれた人がいる。
雲が出てくる前に登れるかなぁ。
 
石に黄色いペイントで矢印が書かれている。
あ、山頂まであと5分だって。ホントーだな。
と思ったら、ダンナがあと15分と書いてあったと教えてくれた。文字が薄れているらしい。えーーー。
12時33分。  15分の文字
いや、しかし、そこから10分しないうちに建物の屋根が見えてきた。
なんだか青空に人工物の建物が天国みたいに見える。
12時43分。  蓼科山頂ヒュッテ到着。
ここでもTシャツだのバンダナだの売っていて、しかもテラスでラーメン食べている人までいて、今までの岩だらけの道はなんだったの状態だ。
ここが山頂かと思いきや、山頂はもうちょっと先。
ヒュッテの脇に地図があり、よく見ないとわからないが、いや、これだけ登山者がいたら、登山者がたくさんいる方向が山頂に決まっている。
ヒュッテの先に進んでみたら、信じられない風景だった。
岩。岩。岩。
とてつもなく広い山頂なのだが、全部岩。
二抱えほどもある大きな岩が広い山頂を埋め尽くしている。人が歩くとカロンカロンと音がする浮石もある。
人がたくさんいる方向に岩を選びながら進むと、ありましたよ山頂表示。
うわ〜、風化して文字なんかわからないじゃないの。
でも、とりあえず、2530メートルだわよ。
12時49分。  山頂到着。あ、ホントに15分かかっているぞ、黄色いペイントから。
広い山頂のど真ん中に小さな鳥居と小さな祠がある。あれが蓼科神社奥社。こいつを囲んでぐるりと回ることができる。
山頂表示の対岸には方位盤があるらしいが、そちらには行かなかった。かなり遠いのよ。
たくさんの人が方位盤に乗って記念撮影しているっぽいのが見てとれた。
山頂は広い。どこででも休める。
だが、休みやすい岩を探さないといけない。
平らであったり、浮石でなかったり、適度な広さがあったりする岩がいい。
我々は八ヶ岳を眺められる岩をみつけて陣取り、おにぎりとカップラーメンの昼食。
本当にたくさんの人たちが同じ八ヶ岳を眺めてのランチをとっていた。
遠くには南アルプスの山々まで見えて。
景色は最高だったなぁ。
13時25分。  下山開始。
岩だらけの山頂なので、方向を見失いかねない。
黄色いペイントはいい目印になる。
別方向に行く登山道もあるので、よく確認しなくちゃね。
山頂直下の岩場で、登山口で一緒だった兄弟とお父さんとすれ違った。根性ナシのお兄ちゃん、よく頑張って登って来たなぁ。
実は滝などで大岩の河原を歩くことが多い私は蓼科山荘までの岩だらけの下山はむしろ得意だった。
問題はその先のザンゲ坂。いや〜、怖かったです。
下りのほうがずっとイヤだった。
14時07分。 蓼科山荘。
14時36分。  天狗の露地。
14時45分。  沢に進まないようにの標識。
14時58分。  石積み。
15時11分。  馬返し。
遠くにたぶん女神湖が見える。
登りの時には霧の中だったから分からなかった。
15時21分 登山口到着。
ご苦労様でした。
駐車スペースにはすっかり自動車がなくなっているかと思いきや、まだまだけっこう駐車していたので、ヘンな場所にとめた我々の自動車も目立っていなかった。
帰りはビーナスラインを松本まで出る道を選択。
白樺湖畔の池の平ホテルでは紅葉し始めた黄金アカシアが見事なまでにまっ黄色だった。
ビーナスラインから見る蓼科山は穏やかで、あんなに岩ゴロゴロだとはとでも想像できなかった。

単純に登山時間が短いのと百名山である、というだけで登ることにしてしまった蓼科山。
本当に本当に本当に大変だった。ザンゲ坂から先はずっと「いったい何の罰なんだ」と思いながら登っていた。
今までにないくらいたくさんの登山者がいる登山道だったのだが、歩行時間歩行距離が短い分、バラけようがないのだ。
山頂小屋に到着した時には、もう立っているのもイヤなくらい疲労して、ものすごく不機嫌になってしまった。
広い山頂に、本当にたくさんの登山者がいた。
特に小さな子供づれがたくさんいたのには驚いた。こんな子供ががんばって登って来たのに、私はヘロヘロになってしまっている。ちょっと情けない。
さて、ヘロヘロと登っていた我々ではあるが、実は山地図とそれほど違わない歩行時間で登っている。
10分ほど多くかかっているのは、将軍平から山頂までの岩場ですれ違いのためにかなり待つ必要があったからだ。
あまりにキツい登りだったので、待つのはむしろありがたかったけれど。
問題は下山で、特にザンゲ坂の下りは怖い。下りが苦手なので、必要以上に時間がかかった。
得意不得意はあるとは思うが、山地図の数字だけで登山行程を判断しちゃいかんなぁ、と、今回は身をもって体感した。

蓼科山 
我々は御泉水自然園の近くにある七合目登山口から登った。
ナビには御泉水自然園で入れれば連れて行ってくれる。
ちなみに、新潟からだとナビは上信越自動車道上田菅平ICを下りて国道152号を南下。白樺湖にぶつかって、池之平ホテルの間を通って、県道40号で蓼科牧場、女神湖方面へ向かい、ホテル四季の森前を通って自然園への道を案内した。白樺湖あたりでは道案内が各所にあるので、とにかく御泉水自然園を目指すとよい。
登山口は自然園のチケット売り場などがある場所からさらに先に進む。やや進むと右側にトイレの建物、それから鳥居が見える。駐車スペースはトイレの手前と鳥居の向かい側にある。
ただし、中途半端な時期に行った我々だが、午前10時30分到着で完全に満車で路肩駐車になった。シーズンのピークだと駐車困難になるかも。
登山道は、最初広いなだらかな道だが、ザンゲ坂ではゴロゴロの砂利の急登。将軍平の蓼科山荘から先は一抱えもある大岩が積み重なったジャングルジム状態の道になる。体力はかなり必要である。
しかし、たった2時間で別世界の高山まで来た達成感を味わえる。


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