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御滝
ついなお目にかかれた御滝。
垂直に落ちた流れが途中で岩盤に当たって、
綺麗に分岐する。
滝に向かって左側に
細く一条水流があるが、
岩盤の途中から湧き出ている。


やや横から見た。
まっすぐ落ちた水が岩盤で分岐する
様子がよくわかる。


分岐部分。


大きさ比較。
滝つぼから一段下がった場所に
Youさんが立っている。
滝からは少しだけ離れている。
この写真で滝全体の様子がわかる。
沢方面だけに開けたすり鉢上の地形だ。


落ち口。
意外と勢いがある。


見上げるとこんな具合。
横の清水がいきなり出ているのが
よく分かる。


滝つぼ。
それほど深くない。


でも、水は綺麗。




途中にあった滝。
この滝はかなり落差があった。
第二の堰堤を越えるとすぐ右側にある。



流れ込んで来る小沢は、
すべて滝状になっている。



沢が流れ込んでいるな、
と思って覗き込むと、
だいたいが滝だ。





こちらは駐車した場所から沢を見下ろすとある滝。
扇型に広がる形のいい滝である。
名まえが無いのが惜しいくらい。



落差はそれほどない。
でも、滑り台にしたい感じの
いい斜度の滝だ。



滝つぼはやや深く、青い。
2006/11/19  御滝(落差15M?) 柏崎市
旧高柳町に御滝という滝があるというのは、地図にも載っているので知っていた。
知っていたし、探しに行ったことも2度ほどある。滝を探しに行ったのに、白倉の源水という清水を汲んですごすごと戻って来てしまった。
おそらく御滝は素人では見られない滝なのだろうと結論づけていた。
ところが、柏崎にお住まいで林道散策から滝探しなどをされているYouさんとおっしゃる方から御滝の存在を写真つきで教えていただいた。(Youさんのブログはこちら
踏み跡がはっきりしないことや、堰堤を越えるのが困難なこと、沢の遡行があることから、不案内な素人である我々が行ってもたどり着けないと判断、Youさんに御滝を案内していただくことにした。

11月19日の日曜日、朝から霜が下りる放射冷却があるほどの晴天だった。実はYouさんとの約束はこの一週間前の日曜日だったのだが、その日はいきなり真冬なみの寒さになりあられが降ったり暴風が吹き荒れたりするとんでもない天候だった。そのために一週間延期したのだ。延期して正解だった。寒さの中あられに打たれながら沢を遡行するつもりにはなれない。
Youさんとの待ち合わせは白倉の源水。柏崎市から旧高柳町に国道252号を利用して入り、そこから県道424号に進む。ところが、この国道から424号に入るとすぐの場所が工事で通行止めの恐れがあるから、と、Youさんから別のルートを教えてもらっていた。
快適にそのルートを進み、約束の少し前に源水に到着。すると、もうYouさんの自動車があった。
自動車の中で待っていたYouさんとはじめましての挨拶をして、さあ、御滝に向かう。
白倉の源水からさらに登って少し行くと道が大きく右にカーブして堰堤の前を通る。その堰堤を超えてずっと遡行した先に御滝はあるのである。
カーブの手前に自動車が5台ほどとめられるスペースがあるのでそこに駐車。
仕度を整えて御滝へと歩き始めた。
まず、林道から見える堰堤を越える。これは草が枯れた今の季節は簡単だ。これまで踏み跡は無かったそうなのだが、堰堤に向かって左側にうっすらと踏み跡があり、それを辿ってやや急な斜面を登る感じで堰堤を越えられる。
  
林道から堰堤にむかう。

  
右側の枯れた草は夏場にはジャングルのようになっている。
堰堤の向こう側はびっくりするくらいなだらかな沢になっている。
足首ほどの水面なので長靴でも充分に水の中を歩いて行ける。
じゃぶじゃぶと歩いて行くとなにやら沢の中に赤い目印のついた杭が打ちつけられていた。見上げると両側の斜面にも目印が。どうもこれは、堰堤の工事をするための最初の印みたいだ。
もしここで堰堤の工事が始まったら、御滝にはますます近づけなくなるだろう。もしかしたら、今回がラストチャンスだったかもしれない。
    
   
なだらかになる沢と、右:沢の中にあった赤い印のある杭。
少し歩くと、第二の堰堤が見えた。
Youさんの話だと、この堰堤を越えるのが難儀するそうなのだ。
まず、堰堤の上に登るのが苦労する。泥の急斜面をまく感じで登るが、わずかな足場を確保して、芦だの草だのを掴んで体を引っ張りあげる必要がある。なんとか堰堤の上まで登ったら今度は下りるのが大変だ。
堰堤のコンクリートのほぼ直角に近い急斜面に太いロープが垂れ下がっているのだが、これがまた根元がぐにゃぐにゃしている直径5センチもないような木にくくりつけられているのだ。これに体重を預けて5メートルほど下まで下降する勇気はなかなか搾り出せない。
まずYouさんが下りる。あら、ホントにこのぐにゃぐにゃした木は意外にもしっかりと支えてくれている。次にダンナだ。これも無事に着地。
しかし、2人使ったら木が疲労して、私の時にずぼっと抜けたりはしないもんだろうか。ものすごく不安になる。不安になるが、ここをおりないことには先に進めない。
ロープをつかんで、ずりずりずりーーーー。いやだだめだと言いながら、なんとか着地した。
ここをクリアできたらあとはたいした事はありません、とYouさんが言うので、とりあえずほっとする。
  
第二の堰堤を向かって右側から登る。

  
で、ロープを頼りに下る。
またなだらかになった沢を歩くと今度は右手に滝が見えた。小滝かと思いきや、正面まで回りこんでみると、かなり高い位置から落ちているのがわかる。
夏場は木々の葉っぱなどが邪魔をして上まで見えたことがないそうだが、今日は上のほうまでよく見えた。
滝のあるちょっとした広場のような場所を過ぎると、沢はくきっと右に曲がる。ここから先がちょっとした渓流のようになる。大きな岩の間を水がながれる形になり、遡行は岩を飛んだり、渕を避けてできるだけ浅い場所を選んだりして進むことになる。
Youさんがストックを持っていて、それで沢の中の浅い部分をさぐって、そこに石があるからそれを足場にして進むといい、とか指示を出してくれるので、かなり安全に進むことができた。
  
立派な沢登り。
ところが、である。
目の前にデンと滝が現れた。
滝と言っても、落差は2メートルくらいのものなのだが、それでも私には目の前いっぱいの滝である。これ、どうやって超えるのだ?
  
でーん。
と、Youさんはちょうど滝にひっかかっている流木を足場にぐいっと登ってしまった。
流木が滝の景観を損ねているが、登るのには手助けになっているというわけである。
しかし、その流木、ほとんど流れの真ん中にありませんか〜?
まず下の木に足をかけて、とか、この木に手をかけて、とか上からYouさんが指示してくれる。ダンナがクリアしたのに続いて私だ。
ほう。この私にこの流木をよじ登れ、と。この運動オンチの女によくもまあ、簡単に言ってくれるじゃないのよ。堰堤を下ってアドベンチャーは終了したんじゃないの?と、内心かなりの勢いで文句をたれているが、ここは初対面のYouさんの前なので、「きゃー、できない」と怯えてみせる。
怯えてみせるが、どのみちクリアしないと先には進めないとわかっているので、諦めて木に足をかけた。あ、ちょっと滑る。
木にのっかると、滝の上に頭が出た。頭の前にうまい具合にホールドできる岩があって、そこに手をかけて次の木に足を乗せると、手の岩に別の足が乗せられる。あらやだ、登れちゃった。
登れちゃうから次から次へと秘境の滝にチャレンジすることになるのよね、と心の中で舌打ちをして先に進む。
  
このようにして登ります。モデルはYouさん。
その後も長靴ではちょっと長さが足りない深い渕にあっちから行けこっちから行けと指示を受けながら進み、あ、そこは深いという場所にキャーキャー言いながら踏み込んでしまって長靴に浸水させ、すったもんだしながら遡行した。
途中、なれた様子でさくさく我々に追いついて来た男性がいたので、とりあえず追い越してもらう。こんな場所で他の人に出会うとは思ってもいなかった。
    
  
浅そうに見えて、渕はけっこう深い。右:矢印の先に御滝が見える。
  
ようやく近づいてきた。
ようやく滝前に到着。
うわー、これが御滝か。
すり鉢上になった空間を切り裂くように落ちている。
思ったより水の量が多い。どうやらここ数日の雨のために増水しているらしかった。
Youさんの紹介のとおり、滝に向かって左側に細い一条の水流があった。よく見てみると、本当に岩盤の途中から湧いて出ていた。地下水となって岩盤の途中から突き破って出てきているのか。あとで見てみたら、御滝の滝つぼのすぐ下の岩盤からも水が流れ出ていて、隙間のある岩盤に水が流れ込んでいる様子がわかった。
  
右側の水流の出口。いきなり湧き出ている。
さっきの男性とYouさんが話しをしている。どうも男性はYouさんがこのあたりで滝を探して沢に入っているのを聞きつけて、御滝を見られるものなら、と遡行してきたらしい。同じ日に同じ滝を目指すとはなかなか無い縁である。
さんざん滝を撮影し、濡れた足も冷たくなってきたので、戻ることにした。
またしてもきゃーきゃー言いながら沢を下って行く。のぼりの時とは違った怖さがあって、「こんな場所通っていない」と不条理な文句をたれながら歩く。
問題は例の2メートルの滝である。あれ、下れるのか?
Youさんがするするっと下ってまた下から指示を出してくれた。が、それを見ていた時にダンナが手をかけていた流木の一部がバキっという音をたてて落下。危うく下のYouさんの頭上に人の足くらいもありそうな太さの木が落ちるところだったが、すこし外れた場所だったので大事には至らなかった。
ダンナが体重をかけてその木につかまっていたら完全に落下していた。そう思うとちょっと怖い。
さて、どう見ても下りるのは難しそうな滝なのだが、これが実際に下りてみると意外と簡単に下りられた。足場になる流木に足さえかかれば大丈夫なのだ。
  
滝の上から下りて行くダンナを撮影。
下りてしまえばこっちのものである。2メートルの滝、なんぼのもんじゃという気分になってくる。気をよくして先に進むと、いきなり後ろでバキッという音とドサっという音が同時にした。
な、何?振り返ると、さきほどの男性が仰向けに転がっていた。
考えるまでもない。滝から落ちたのである。
「大丈夫ですか!?」
声が上ずる。
「大丈夫です。木がズレて・・・」
あっさり立ち上がってそう答えてくれた。
足場にしていた流木がズレてしまったらしい。どうやら2メートルの高さから落ちたわけではなさそうだ。その後ちゃんと撮影していたようなので、カメラも無事らしい。とりあえず安心だ。
それにしても、我々3人が下りた時は全くなんともなかったのに、4人目で流木はその位置をキープできなくなってしまった。そもそも流れてひっかかっただけの流木である。どんなきっかけでまた流れてしまうのか分からないのだ。それを頼りにしすぎるのも危険なのだと思い知った。
また、単独であると、もし転倒して頭を打って気絶でもした場合や足を折ってしまったりした場合はどうなるのだろう、と考えた。
必ず連絡手段を携帯することと、家族にはどこに行くのかを知らせておくべきだと思った。
  沢をおりてくる男性。大事がなくてよかったです。
   
  
最後の難関の堰堤。
滝を下ってしまって安心して、すっかり忘れていたのが堰堤の存在だ。あの頼りない木にくくりつけられたロープだけが頼りだ。ついさっき落ちてしまった人を見ただけに、2人が登ったからと言って、自分の時に木がひっこ抜けないとは限らないと思ってしまう。
が、やっぱり登らなければ帰れないのだ。心配ばかりしていたってどうしようもない。上でダンナとYouさんが心配して待っていてくれるので、完全に諦めてロープにとりつく。もし木が抜けたら、頭から落下だよなぁ。と、思いながら登って、あと一歩の所に来たら足場が無い。木を支柱にしてぐるんと回るように急斜面を移動して堰堤の上に行くのだ、と指示が出る。んなこと、簡単に言われましても。
だめ、できない、無理、と、ロープを掴んだまましばらくジタバタしたが、やっぱり無理でもやらなくては家に帰れない。なら、頭から落ちて救急車で帰るか、無事にやりとげて笑って帰るかの二者一択しか道はないのである。せえの。じたばたじたばた。
なんとか救急車に乗らずに済んだ。
これで危険は終わりかと思ったら、今度は堰堤の反対側に下るのがまた大変だった。登るより怖い。先に進んだ二人にどこに足を置くのかいちいち教えてもらいながらおりていった。
ひい。なんて大変な道のりなんだろう。この最後のデンジャラスゾーンを越えたあたりで、足はふらふらになってしまっていた。
ようやく駐車スペースにたどり着いて、ほっとする。
ほどなく、転んでしまった男性も下りてきて、全員無事遡行を完了できた。
男性は先に戻ったが、我々3人は駐車スペースにシートを広げて昼食にした。ちょっと寒かったが、同じ新潟の滝をめぐっている人との滝談議は楽しかった。
またどこかの滝でご一緒しましょうと言って別れたのはお昼すぎ。我々は白倉の源水を汲んでから旧高柳町を後にした。
今回は地図にはあるが行けそうもないと諦めていた御滝をYouさんの案内で見ることができた。おそらく案内が無ければまず間違いなく2つ目の堰堤で諦めて帰っただろう。案内してくれる人がいるのがこんなに心強いとは思わなかった。
Youさんにはきゃーきゃーうるさい歩く熊鈴の相手をしていただき、いらない苦労をさせてしまって、本当に申し訳ありませんでした。これに懲りずにまた滝に連れて行ってください。
  
記念写真。
交通
最寄ICは、北陸自動車道柏崎IC。インターを下りた場所が国道252号なので、柏崎市街ではない方向(十日町方面)に進む。
しばらく走ると鳥越という交差点で国道291号が別れるがそのまま国道252号を進む。
旧高柳町に入ってすぐに県道424号へと右折するのだが、この右折する場所が本当に分かりづらい。(合併してしまって柏崎市になったので、もしかしたらその境もよく分からないかもしれない)
国道252号が小さな川を渡る橋があるが、その橋沿いの本当に道?というあたりで右折するのだが、ここは近くの人に尋ねたほうが早い。その小川を左側に見ながら細いままの道を進み、山をどんどんと登っていく。
かなり登ったあたりで左側に四角い石の水槽に白倉の源水と書かれた水汲み場がある。
それを通り過ぎてもう少し登る。と、左側に堰堤がある沢を渡る。この沢が御滝のある沢である。
駐車スペースは堰堤の手前にある。
御滝は堰堤を2つ越えて、足首から膝くらいの深さのある沢を遡行する。
第二の堰堤は急斜面を草を掴んで登り、頼りない木にくくりつけられたロープを掴んで下る必要がある。
また、ちょっとがんばらないと登れない小滝もある。
沢に不慣れな人はやめたほうがいいだろう。
また、途中で印があったので、もしかしたら新しい堰堤の工事が始まるかもしれない。工事が始まったら沢には入れない。
慣れない我々で、Youさんの案内があって40分で御滝に到着した。
長めの長靴でも足場を選べば浸水することはない。が、泥の斜面を登ったり、ロープを使ったりするので、手袋は必要だし、汚れるのは覚悟したほうがいい。


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