71−2



吹上ノ滝
青空、紅葉、滝、
この三点セットを見たくて、
ここまでやって来たのだ。
ちょっぴり紅葉には遅い感もあるが、
大満足である。


落ち口に赤く色づいたかんざしをつけている。



ニセアイガメの滝(仮)
遠くに天狗岩を望む、ニセアイガメの滝
(すみません、こんな仮称をつけて)が
見えてきた。



ニセアイガメの滝のすぐ脇を登る。
こちらは登山ルートではない。
が、滝の横顔を見ることができる。




アイガメの滝
下流の滝から大きく曲がって登場するので、
日陰になってしまっている。
この沢登りコース最大の滝である。
滝に向かって、すぐ左側の登山ルートは、
この日はびしょびしょに濡れていて、
さぞ登りづらいだろうと思われた。
我々は引き返すので、登っていない。



滝の途中までは紅葉もチラホラ見えるが、
滝の落ち口あたりは、
木々はすっかり裸で、
冬の景色である。




こちらは、アイガメの滝の正面に落ちる、
50段100メートルの滝(笑)。
小さな段々が山頂まで続いている。



真ん中にダンナが立っているのが
わかりますでしょうか。




こちらはニセアイガメの上流に流れ込む沢。
右端下にいるダンナのかなり上が
登山ルートで、これを渡るのが怖い。
つるつる滑る。
夏場には無かったと思うんだが。
2005/11/13  巻機山割引沢の滝たち、秋  南魚沼市
2005年の新潟の秋は、とにかくよい天候に恵まれなかった。
いや、よい天候であったのだ。唯一、週末を除いては。
この年、どういうわけか、土日になると雨。平日はとてもいい天気というパターンが9月の後半から10月いっぱい続いた。我々夫婦は平日はイヤでも仕事をしなくてはならない。唯一外に出られる週末に雨となると、秋の滝めぐりをしたくてもできない状況になってしまっていた。
そして、11月。ついに日曜日に晴れの天気予報が出た。よし、行くぞ、青い空と紅葉と白い滝。このセットを見ることができる今年最後のチャンスだ。
ところが、前日の土曜日の夕方からどうもまた雲行きがおかしくなっていた。天気予報からも晴れマークが消えてしまった。
どうにか晴れ間が見られるのは上越地方だけらしい。
前日にちょっとでかけてしまい、ちゃんと行く方向を決めていなかった我々は、とにかく上越方面に行こうと自動車を発進させて高速道路に乗った。
行くとしたら、6月に行って雪のために目的地まで行けなかった海谷渓谷か。紅葉には遅いだろうし、滝もあるわけじゃないし。
高速に乗ってからもまだどこに行くか地図を広げて迷っていた。
青空が見えて紅葉が綺麗で見栄えのする滝。
新潟に限らず、滝の大半が谷間にあり、意外と暗い場所にあることが多い。スコーンと開けた空を望める滝はそれほど多くはないのである。
自動車が長岡ジャンクションに至る手前で、ハッと頭をよぎった滝たちがある。
割引沢の滝たち。
あそこの滝はものすごく明るい空間にある。紅葉には間に合わないだろうが、青空は間違いなく望める。
運転しているダンナに先週の裏巻機に続いて表巻機という手があると告げると、あっさりとそうしよう、ということになってしまった。
朝の予定なら北陸自動車道に進むはずが関越自動車道のままジャンクションを通過した。
以前行った時のレポートにも書いてあるが、巻機山登山の沢コースである割引沢は、気軽にハイキング、という感じのコースではない。充分な準備と装備のいるコースである。
そう自分で書いておきながら、ものすごく安易に行くことに決めてしまった。
そんなに歩くつもりもなかったので、フリースの分厚いトレーナーを着ていたり、スポーツ飲料を持っていなかったり。
まあ、軍手と登山靴はいつでも自動車に乗っているので、そのへんの心配はいらない。
一番上の行者の滝まではムリとして、アイガメの滝までなら日没が早いこの季節でも充分に行って戻れるだろう。
と、いうことで、自宅を8時過ぎに目的地を決めずに出て、割引沢を登ることになってしっまた。むちゃくちゃ安易である。

さて、巻機山。
登山口の集落では、雪にそなえて消雪パイプの水を出して、点検をしていた。ふと見ると、山頂は白い。もう冬は間近なのだ。
  
中央に天狗岩と真っ白なおそらく巻機山の山頂。
駐車場に着くと、10台くらいの自動車がとまっていた。雪の山頂を目指したのだろうか。以前は砂利敷きだった駐車場がアスファルトで舗装されていた。さすがにこの時期には料金を徴収する人もいない。身支度を整え、出発する。
10時を過ぎたというのに、早朝のような朝露の中、沢に向かう道を進む。この道、こんなに登ったっけか、と思うくらい以前の記憶が無い道だった。そういやぁ、このあたりでは蝶を撮影しながら登ったんだった。
今の季節はもう撮影するような蝶はいないので、サクサク登って20分ほどで河原に出た。
まずい。前回より水が多い。
赤い矢印のついている最初の渡渉場所でいきなり立ち往生してしまった。ダンナはわけなく飛び越えて行くが、私が渡れない。
後ろから登山者らしい人が一人やってきたので、先に行ってもらおうと道を譲ったら、彼は渡らないと言う。仕方がないので、きゃーきゃー言いながらダンナから手を引っ張ってもらって渡った。どうしてこういうシーンにギャラリーがいるのかしらん。かの人は、どうやら沢の写真を撮りたかっただけらしかった。
沢を右手に見ながら進む。少し行くと沢沿いのもみじが見事に黄色く色づいていた。これはすごい。もみじの廊下の下を進んで行く。
紅葉はもう終わったかと思っていたが、登り口は今が盛りのようだった。
    
  
黄葉の廊下を歩く。右手は沢である。気を抜くと、落ちる(笑)

    
  
向かいに流れ込む沢が小さな滝になっている。黄葉といい取り合わせだ。

  
  
水の上にも織る錦。
鎖やロープで沢沿いを20分ほど進むと、吹上ノ滝が見えてきた。
あ、すごい。水が多い分、跳ね具合もすごい。それに、落ち口あたりに赤い紅葉もある。空は青く、山は赤く、滝は白い。これは、この秋一番見たかった風景じゃないか。
登山道からそれて、滝の前まで行く。
秋の空はどこまでも高く、ポカポカと暖かい。しばらく滝を楽しんで、また登山道に戻った。
それにしても、中越地方の天気予報はそれほどいいものではなかったはずだ。曇りだったかなぁ。どこに曇りの雲があるんだ。こんなにいい天気なのに。
吹上ノ滝のすぐ上に前回「ニセアイガメ」と名づけた滝が見える。この滝の前にも進んでみた。
で、前回、この滝の向かって右側の斜面から登ったほうが登りやすいんじゃないか、と思った斜面から登ってみることにした。
この斜面は岩盤が階段状になっていて、いかにも登ってくださいといった状態なのである。
たしかにとても楽にアイガメの直前まで行けた。行けたが、アイガメは見えない。アイガメの滝は大きく右にカーブした先にあるのだ。そのカーブがきりたっていて進んで行けない。
唯一対岸に渡れる場所があり、ダンナはそこから行ったのだが、私は渡れなかった。水が少ない時には行けたと思うのだが、水が多くなったら足場がとても滑りやすくなっているのだ。
危うく全身水の中という状況になって、対岸に渡るのは諦めた。
  
  
ニセアイガメの脇を登って行く。でも、間違ったルートなので、行かないほうがいいでしょう(笑)

  
  
この沢が渡れないのよぅ。狭く見えるが、着地点が無い。

  
  
果敢にチャレンジするダンナ。でもこの先はさらに切り立った場所になる。
私だけもう一度ニセアイガメまで戻って、登山道に復帰する。こんな場所でいらん時間を食ってしまった。下りて登って来るのに20分かかってしまった。
しかも、正式な登山道の怖いこと、怖いこと。固い岩盤の上にやわらかい土がふわりとかぶさっているような登山道に雨やら雪どけの水やらがまざって、土砂を洗い流し、どこまでが土でどこまでが岩盤でどこまでかちゃんと岩盤にひっついている土なのかさっぱりわからいない。ちょっと足を間違った場所におこうものなら、ずるるるるるるっと滑り落ちてしまうのである。
また、あちこちから水が流れ落ちているので、その場所はつるつるに滑る。こんなことなら足を折るつもりでニセアイガメの上流のどこかでジャンプして対岸に渡ったほうがずっと楽だったかもしれない。
とにかく、ジタバタしながら途中まで迎えに来てくれたダンナと合流。さらにジタバタしながらアイガメの滝にたどり着いた。
さぁ、ここが今日の終点である。ここでお昼にしよう。
途中のコンビニで購入したカップラーメンであったまろう。と、思っていたらリュックをさぐっていたダンナが凍りついた。ガ、ガスがない。バーナーもない。水もやかんもカップもラーメンもあるのに、火が無い。
これではどうしようもない。暖かいお昼は諦めざるを得なかった。おにぎりとパンと冷たいお茶があったので、それで空腹を満たす。
ま、こんなことも毎週外に出ていれば何度かある。おにぎりとパンだけでもあってよかった。あ、あと私のポケットになぜかみかんも入っていたし。
幸い、この日は日差しがポカポカと暖かく、あったかい食べ物がなくても体が冷えることはなかった。
アイガメの滝の前でしばらくのんびりして、沢を下りることにした。
  
  
ニセアイガメの上から振り返った割引沢。それほど登った感覚はないが、かなり高度がある。
このルートを下りるのは、実は初めてである。
前回は、もう少し上流にあるエスケープルートで下りたのだ。ニセアイガメからアイガメまでの登山道の正式ルートでジタバタした登りを考えると、少し憂鬱だ。
だが、思ったより下りは大変ではなかった。
一番困ったのはやはりニセアイガメからアイガメの間のルートで、それ以外は急な場所には鎖やロープがあって、下りるのに困らない。
多少滑る場所はあったが、登りよりは楽に戻ることができた。
もしかして、ダラダラと単調なエスケープルートよりこの下山禁止の沢ルートのほうが楽かも、とも思ったが、アイガメより上流にある大岩がゴロゴロした場所や布干し岩が濡れて滑りやすくなっていることを考えるとやっぱり下山禁止にはそれなりの理由があるのだろう。
結局、1時間かからずに駐車場まで戻ってきてしまった。予定では3時までには駐車場に戻りたいと思っていたのに、まだ1時を回ったばかり。
留守番をしている猫が心配だったので、今日は温泉もパスするつもりだったが、あまりに早く戻って来てしまったので、六日町にある金城の湯に入って汗を流した。
それにしても、2度目の割引沢。けっこう難儀した。水が多いとぬかるみ、滑る。夏のカラっとした岩盤と違った危険がある。夏に渡れた場所は渡れないし、夏に歩けた場所は歩けない。
だが、開けていて、気持ちのいい場所であることは違いなかった。
青い空と紅葉と白い滝、予想どおり、割引沢の滝たちは我々に素晴らしい秋の風景を見せてくれた。
交通
巻機山清水登山口桜坂駐車場
 関越自動車道六日町ICを下りて国道253号を経て国道17号に出る。六日町駅方面へと右折。少し走って、案内板の国道291号という案内に従って左折。国道291号へは右折して入る。商店街のような場所を通り、少しすると道が開け、右側にセーブオンがある。昼食などを購入したい場合はここが巻機山までの最後のコンビニなので、通り過ぎないように。
国道291号は意外に民家が多く、どこから清水の集落なのかよくわからない。いきなり右側の川の方に小さく巻機山登山道と書かれた杭があり、左折するように指示している。これは見落とす可能性が大きいが、心配することはない。
もう少し走ると、清水のバス停がある。ここは少し広くなっているうえに、『巻機山の登山案内図』と『中部北陸自然歩道コース案内』の2つの大きな看板があるので見落とさない。この登山案内図で道を確かめ、桜坂駐車場まで行こう。
 桜坂駐車場はバス停からやや戻る感じで坂を上り、民宿兼食堂の「上田屋食堂」の右側の坂を上り、けっこう自動車を走らせた先にある。
まずキャンプ場の管理等駐車場というのが現れるがそこではない。さらに坂を上るとアスファルトの駐車場が左に現れる。そこに料金所があるが早朝には人はいない。
そこを通り過ぎ、さらに進み、小さな橋を渡るとアスファルトに線が引かれた大きな駐車場に出る。そこが桜坂駐車場である。
登山ピーク時には駐車料金を徴収されるが、我々が行った秋のこの日は、係員もいなかった。

沢登りコース登山ルートについは、2004年8月に上流の行者の滝まで行った時のレポート(新潟の滝71)を参考にしてほしい。

2004年8月の割引沢の滝たちはこちらから

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