番外

 の山

2010/7/18  妙高山(みょうこうさん) 標高2445.9m 
妙高山、火打山といえば、山好きは百名山であると連想するだろう。しかし、滝好きとしては、このあたりの山は、百選の滝である惣滝、苗名滝を落とす滝の母なる山なのである。そういう意味で新潟在住の滝好きとしては、「やっぱり登っておかないとマズいでしょう」という山なのだ。火打山は2008年に登った。(レポはこちら) 妙高山はどういうワケか残されていて、ついに今年になってしまった。登っておかないとマズい山を登らないで済ますワケにはいかない。と、いうことで、梅雨明け宣言が出された翌日の午前3時に起床。黎明の中高速道路に乗った。
          (写真数が多いので、サイズを小さくしています。花の写真は、ダンナのサイトからご覧いただけます。)
5時45分頃に駐車場到着。6時前に着けばなんとか駐車できるだろうと思っていたが、すでに満車。あてにしていた少しだけ離れた空き地も道路工事中の資材置き場になっていて利用できなかった。仕方がないので案内看板の前のわずかなスペースに駐車。駐車スペースの一番端っこである。三連休の中日なので、前日から山に入っている人の自動車も多いのだろう。
仕度をして、5時55分頃に出発。
温泉場の急な坂を登り、脇にそれてスキー場のほうに行く。登りは燕温泉登山道を利用するからだ。新道を利用する場合は脇にそれずにまっすぐ進む。
このスキー場の坂がけっこう堪えるのよね。山頂のシルエットが遠いったら。
まだ6時を回ったばかりなのに、温泉に宿泊した人たちが黄金の湯に入っているようだ。
我々はちょっとそれて惣滝さまへ。
未だに惣滝への遊歩道は通行止めで、滝を見るのはこの滝見台からしか方法が無い。
真夏の惣滝は濃い緑を裂いてドウドウと落ちていたが、やっぱり遠望だ。
ご挨拶だけして、またスキー場の道に復帰。だー、角度がきつい。
6時20分 ようやくスキー場が終わり、登山道に入る。
この先はゆるゆると登るコンクリートで整備された道だ。過去何度か滝を見に通ったことのある道なので、余裕がある。
ただし、時々崩れている場所もあるので注意が必要。
道の脇にはタマガワホトトギスやホタルブクロなどが咲いていた。
こんなに歩いたっけ〜と思うくらいの場所で遠くに称明滝が見えた。三角の妙高山の山頂も見えている。
6時40分 赤倉温泉源泉 温泉管理小屋にはベンチなどがあり、休憩している人も。泉源清水も湧き出ていて、冷たい水が飲める。ちゃんと硫黄の味のしない水だ。
コンクリートの道はさらに続いていて、やがて光明滝に近づく。
わー、滝のすぐ上を登山者が歩いているのが見える。滝を渡ることはしないが、すぐそばを登山道が通っているのである。
もう少し進むと、すぐ上流の称明滝も見えた。
称明滝まで行くと、登山者が休憩していた。
滝好きの我々は登山道から少しはずれるが、滝下まで行ってみないわけにはいかない。夏草がかなり繁っていたが、滝下まで進み、称明滝を見上げる。
ううう、硫黄臭い〜。この滝ばっかりは、飛沫を浴びるのが嬉しくない〜。
6時55分 称明滝を出発。
称明滝から上は我々は来たことのない道である。
ここから先がいわゆる登山道になっているような感じだ。
7時15分 渡渉。実はこの一跨ぎの場所が唯一渡るのが怖い場所だった。だって足場が滑るんですもの〜。
渡ってすぐに麻平との分岐。どちらかというと山頂方向より麻平への道のほうが太くて、どっちに行けばいいのか迷って地図で確認。そりゃ山頂に向かうしかないんですが。ということで河原にそって左へ。
すると、すぐまた渡渉。こっちは飛び石で楽勝。
ここを渡ったあたりに「川原」と書かれた道標があった。まんまじゃん。
少し登ると、前方がなんだかもやってきた。あらやだ、霧が出てきたわ、と思っていたら、なんと雪渓。霧ではなくて冷気で、冷蔵庫の中のようにもやっていたのだ。
ガッシリとした雪でもぐる心配は無かったのだが、この雪渓から登山道に復帰するあたりが穴ぼこだらけで踏み抜きが怖かった。
雪渓を越えると急な登りになった。岩がゴロゴロでじめっとした感じの登りである。
途中に咲いているマイヅルソウに励まされながら登る。
7時58分 胸突き八丁の道標。
えー、今までがずっと胸突き八丁じゃないのぉ〜と思わず文句をたれる。
確かに急な登りではあったし、時々ロープの補助が有難い岩などもあったが、道標の前のほうが胸突き八丁だったなぁ、やっぱり。
8時20分 岩と泥のジメっとした急坂からポンと広い場所に出た。天狗堂だ。小さな祠があり、周りは木で囲まれ泥っぽい空間があるような場所だ。数人が休憩していた。我々も水分補給などして、小休止。
8時32分 天狗堂から比較的すぐに光善寺池だ。
とりたてて何の花が咲いているワケでもなく、何かの卵があるワケでもなかった。
光善寺池から先は、それほど急な登りではないのだが、樋状にえぐられた泥っぽい道を進む。両側に木が覆いかぶさり、高い標高まで登った気分にちっともなれない。
ただ、このじめっとした道にアカモノだったりイワナシの実だったりキソチドリだったり、果てはオノエランまで咲いている。低山の趣だが、花は低山ではない。
8時53分 風穴。ちょうど私の顔くらいの高さに顔くらいの大きさの穴が2つあいている。手を近づけてみると、つめたい風がそよ〜っと吹いていた。
そこからまた低山っぽい樹林帯をちょっと登ると、あらまあ、ヨツバシオガマ。
こんな林の中で見ると別の花みたいに見える。
9時30分 いよいよ鎖場に到着。うわ〜、壁じゃん。でも、足場がくっきりついていて、それほど苦労はしなくて済みそうだ。
まず、ガーーッとロープを頼りに登り、それから少し左に横移動。そして、もうちょっとだけ登る。それで鎖場は終了。
ただ、私はその横移動の時にストックがひっかかって危うく手を離しそうになってしまって、最後の登りでいきなりものすごい恐怖に襲われた。ストックはリュックにくくりつけましょう。
鎖場を登ると、北アルプスがくっきりと見えた。うわーーー、綺麗だ〜。
そこから山頂を振り仰ぐとものすごい岩場が見える。ちょっとだけ木の生えている場所を通って岩場にとりかかる。
きゃー、まるで迷路みたいに矢印が書かれていて、それに沿って行くしかない。
途中、なんとか手を離して立てる場所があって、ふと後ろを振り返ると、あら?なんか、ものすごく整った三角のシルエットの山が遠くに見える。
「ねぇ、まさか富士山は見えないよね」とダンナに聞いたら、すぐ後ろから登って来ていた女性が「見えますよ、富士山」と教えてくれた。
えーーー、ホントにあれ、富士山なの〜?
写真、小さいんですが、
赤い矢印の先に見えているんです。
で、望遠で撮影したのが右写真。
まったく予備知識がなかったので
富士山が見えて大感激。
岩場はさらに続く。
富士山を教えてくれた女性2人組みとほぼ一緒に登り、あの花は何かしら、などと話しながら岩の迷路をクリアしていく。
テガタチドリという名まえがみんな思い出せなくて、なんだったっけーと首をかしげたりして。
白花のテガタチリドもあったんだけど、岩場の危ない場所だったので、うまく撮影できなかった。
岩場から左手遠くの岩に人が立っているのが見えた。
左写真のほぼど真ん中の岩です。
この時点ではそこが山頂だと知らないので、なんであんな危険なことしているんだ、と思ったりして。
岩をよじ登りながら、あっイワヒゲ発見。
ちなみに、左写真の岩場の向こうに見える山は火打山です。
10時05分 岩場からポンと平らな岩の上みたいな場所に出た。
おや、何か石碑があるぞ。どうやらここが南峰らしい。
ここからさらに先に進むと妙高山頂になる。
ところが、この岩っぽい場所からまたちょっとジメっとした場所になるのだ。
せっかく高い山に登った気分になったのに、すぐに低山の風景になってしまう。
どういう山なんだ、妙高山。
巨大な岩とジメっとした樹林をないまぜにしたような道を歩いて行く。
10時10分 妙高山山頂。かなりたくさんの人が休憩していた。
それでも、山頂はけっこう広く、場所を気にしなければ収容人数はかなりのものになる。
我々は巨大な岩が重なった場所の上の方に陣取った。左写真の山頂の道標を上から見下ろすような場所で、二段上の左側の写真の岩よりちょっと下といった感じ。
山頂にはあちこちにテガタチドリが咲いていた。
時折、うわっとガスがかかって暗くなったり、ガーっと太陽が照りつけたり。
さっきまで見えていた富士山はもう見えなくなったそうで(岩の上からならそっちがわが見えるのだ)その他の方向も展望はガスのためほとんど無くなってしまった。
我々が昼食をとった岩の上から撮影したのが左写真。けっこうな人数が休憩中だが、この他に岩の上にも人がいたし、南峰にもいたし。
駐車場の自動車の数は嘘でも冗談でもなかった。
11時05分 下山開始。
下山は燕新道を選んだ。あの鎖場はちょっと下りたくないし、他に道があるのなら、そっちも体験してみたいじゃないの。
下るとすぐに左手に洞窟みたいなのがあった。何かの祠らしい。
いきなり、とんでもない角度で下る。
それにしても、山頂直下からもう木が生えている。なんという木か分からないが、ぐねぐね曲がった木が両側から迫っていて、すっかり樹林帯になってしまっている。
かと思うと、笹が道を覆い、まるで藪の中を歩いているようになってしまう。
岩と泥をないまぜにしたような急坂をかなりの人とすれ違った。
この道を登るのはイヤだなぁ。
12時08分 わっ、雪渓。けっこう広い。ってか、長い。踏み跡はあるのだが、ほぼ無いも同じ状態でうっかりすると滑って下まで行ってしまいそうだ。
下りきると、黒沢・大倉分岐の道標があった。
右写真は振り返って雪渓を撮影。
ちょうどベンチがあったので一休みしていると、後ろから来た親子連れがきゃーーーっと言っている。子供が滑り下りている。完全に滑り台状態。楽しそうだな〜。
ここから火打山方面、黒沢池ヒュッテへ行く道が分けていて、そっちに行く人もいた。
我々はもちろん燕温泉方面へ。12時15分 出発。
さっきの雪渓の雪解け水が道を流れて川になっている。歩きづらい。
だが、道の両側にサンカヨウが咲いていた。
まだサンカヨウに出会えるなんて。
というか、つい最近まで雪の下で、ようやく春になったんだな、このあたりは。
いよいよ、本当に道が川になってしまった。
踏み跡を探すかピンクのリボンを探すかしないと川なんだか道なんだか分からない。
右に左に川を渡ることになった。
でも、このあたりでキヌガサソウ発見。
わー、キヌガサソウにまで出会えたわ〜。
群生、というほどではないが、忘れたころにキヌガサソウはポツポツと咲いていた。
これを見られたから、登りとは違うルートにして大正解。
ちょっと道が平らになったかな、と思ったら、目の前に白いポワポワの海が広がった。ワタスゲ揺れる長助池だ。12時47分。
思った以上に池は広く、しかも、見事なまでにワタスゲで埋められていた。こんなに見事なワタスゲの風景は、今までは季節をはずしてしまってどこの山でも見られなかった。
ここでも大感激。来てよかったなぁ。
木道が広くなっている場所があって、親子づれはそこで休憩するようだ。
我々は写真を撮影しつつ前進。
咲き残っているハクサンコザクラやもう終わりも近いイワイチョウ、それからハクサンチドリも咲いていた。
長助池を出るとまたジメっとした道を下る。が、時々キヌガサソウが咲いていたりする。急に視界が開けた今までと違う感じの場所に出た。道標には芝沢とある。13時15分。燕温泉まで4.2キロとあり、めまいがするほど遠く感じる。
芝沢をぬけると、泥道と木道が交互に出てくるようになった。木道が出てくると、両側にミズバショウの化けたやつが並んでいる。ふと木の向こう側を見てみると、そっちがわにもかなり広くミズバショウの巨大な葉っぱがあった。
あとで調べたら、そこらへんが大倉池だったらしい。
しかし、ミズバショウがなくなったら両側から笹の攻撃を受ける藪っぽい道だ。
13時30分 大倉分岐。ここから神奈山と黒沢池ヒュッテを結ぶ道に出ることができる。燕温泉まであと3.7キロだってさ。と、遠い。
さらに沢なんだか道なんだかわからない道を進む。あいかわらずミズバショウの巨大葉っぱが生えている。
13時45分 黄金清水。
ベンチがあったので、そこで休憩。清水はとても冷たくて、生き返る感じがした。
燕温泉まであと3.2キロ。
後ろから来た親子連れはきっと黄金清水で休憩すると思いきや、休憩せずに迫ってきた。我々は遅いので道を譲る。
あれ、一番後ろで歩いているお父さんがだいぶ疲れているみたいだぞ。父母息子ともにジャージにスニーカー程度の装備だし。よく登って、さらに下って来たなぁ。
さらに、もうちょっと年かさのたぶん親子連れ三人組が熊鈴の音も軽やかに下りて来たので、そちらも道を譲る。
ところが、どっちの親子連れも道の途中でへたばっていた。
そのため、遅いと自負する我々が先頭になる形になってしまった。
14時38分 川の水の音が大きく聞こえたかと思ったら、温泉っぽい川が目の前に現れた。大倉沢らしい。
地図には橋は無いと記されていたが、立派なそこらへんの枝をワイヤーでくくりつけたような橋がかけられていた。もし無かったら渡渉に難儀しただろうが、楽勝で渡る。
しばらく川を左手に見ながら河原を歩くが、すぐにほぼ垂直に登れとロープが垂れていた。泥っぽいのに〜。
後ろからの熊鈴の音に追い立てられるようにして、我々のいつものペースよりもかなり早足で麻平分岐に到着。
15時ちょうど。燕温泉まであと1.2キロ。
さすがにこちらがヘタばって、熊鈴一行に先に行ってもらう。どうやら父親が疲れていた親子連れはかなり後ろになったらしい。
それでもまた熊鈴一行が休んでいるもんだから我々が先になってしまった。
あと1.2キロなら妙仙橋まではすぐのはずなので、がんばる。
が、道が二手に分かれていた。どちらにもピンクリボンがついているし。
我々はまっすぐの階段状の道に行くことにしたが、すぐに沢に突き当たってしまい、その先どう行けばいいのか分からない。どうやらもう一方の右に曲がりかげんの泥っぽい道が正解らしかった。
後ろから来る熊鈴一行にこっちじゃありません、と言っても戻る。
熊鈴一行と背後から迫って来た若者パーティーをやりすごしてから、後ろについて行った。
そしたら、その道も結局沢に突き当たった。
何がなんでもこの岩ゴロゴロの沢を下る必要があるらしかった。
仕方がないので、先行する人たちのあとについて足場を選びながら下ると、コンクリートの道に出た。
おお、惣滝の遊歩道だ。15時25分。
右写真、分かりづらいと思いますが、赤い矢印の場所を下ってきました。
ここから少し進むと惣滝の遊歩道は崩れたままになっていて進入禁止になっている。燕新道から登る人は進入禁止の手前の沢をピンクリボン頼りによじ登り、登山道にとりつくしか方法が無いらしいが、入り口に登山道はこちらから、という案内も無かった。
ほとんど歩かずに妙仙橋になる。
ここから北地獄谷を見下ろすと河原の湯があるはずなのだが、姿形もなかった。
あとはゆるゆる歩いて、そうめん滝などを撮影しながら戻った。
多分15時30分過ぎに駐車スペース到着。
いやはや、ご苦労様でした。

下山苦手の我々の傾向がモロに出たコースタイムになった。旺文社の山地図のちょっと甘いコースタイムよりもさらに30分遅れでの下山である。ちなみに登りでは山地図より40分近く早い。どんだけ下山が苦手なんだ、私達。
それはそうと、下山に利用した燕新道はものすごく長かった。途中にキヌガサソウと長助池があったから利用してよかったという気持ちになれたのだが、もしどちらも季節をはずしていたとしたら、大失敗だったと思ったにちがいない。
ほぼ全部泥っぽいじめっとした道で展望もほとんど全く無い。しかも、距離も確実に長い。長くなったから勾配が緩いかというとそうでもない。唯一の慰めは、鎖場が無いということだけである。利用者が少ないかといえば、実はそうでもなくて、山頂でお昼を食べながら見ていたら、意外に新道から登って来る人が多く、さらに下山時にもたくさんの人とすれ違った。登りで利用する人はじめっとした登山道に気分も滅入るだろうし、山頂付近のガッツを必要とする泥と岩の急坂に気力も奪われるに違いない。
やっぱりきゃーきゃー騒ぎながらも手も使って登る鎖場と岩場が最後の燕温泉登山道を登りに利用したほうが楽だなぁと個人的に思った。
しかし、結果的には疲れたけどキヌガサソウもワタスゲの池も見られたし、こんな感じの登山道なのだ、と体験できたので、周遊した甲斐があった。しかし、また登るかと訊かれると、もういいなぁと今のところは思う。だって、いつまでたっても高い山に登った感じのしない山なんだもの。ホント、不思議な感じの山だったなぁ、妙高山。

妙高山 燕温泉登山口
  最寄ICは、上信越自動車道中郷IC、もしくは妙高高原IC。国道18号からちょうど両ICの間あたりの県道39号を利用して燕温泉へと向かう。どこから向かっても曲がり口には目的の温泉地などの案内が丁寧に出ているので間違うことはない。ゴルフ場の真ん中を突っ切り、関温泉を通り過ぎ、トンネルを越えてかなり標高を上げると燕温泉である。温泉地に入る手前、道の右がわに路肩のような駐車スペースがあるだけで、温泉の敷地内に入るとまったく駐車場は無い。おそらく50台も駐車できないので、シーズン時は午前6時には一杯になってしまう。あとは邪魔にならない路肩にとめるしかない。が、道が狭いので、なかなかその場所もみつけられなくなる。
駐車場には水洗トイレあり。お風呂も燕温泉や関温泉に日帰り入浴可能な宿があるし、入浴だけなら燕温泉のスキー場のほうに「黄金の湯」という無料の露天風呂がある。ただし、男女混浴。有名な「河原の湯」は2010年7月現在改修中らしく見当たらなかった。


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