番外

 近県の山

2011/8/13(土)  高妻山        標高2353m  長野県
      そのA一不動から山頂、弥勒尾根新道下山 (その@登山口から一不動まで はこちら) 

沢登りなんじゃないか、と思うくらいの一不動までの登山道をなんとかクリアして、一不動の避難小屋で休憩。
避難小屋に向かって立って、左側に進めば八方睨120分、右に進めば高妻山150分、と道標は告げている。八方睨って何だ?と、県外の山には疎い私は思ったが、どうもそちらに向かうと戸隠山を経て八方睨に出て、そこから戸隠神社の奥社に下るらしい。
我々はもちろん高妻山の方へと進む。
        (写真が多いためにサイズを小さくしています。花の写真は、ダンナのサイトからご覧いただけます。)
8時32分 休憩の後、避難小屋出発。
出るなり、高山植物に出会って足が止まる。
8時45分 あれ、と思うくらいに簡単に二釈迦の祠になった。
二釈迦からは下に広がる戸隠牧場と、その向こうにそびえる山がよく見えた。
雲が出て、山の全体がわからないのが惜しい。
あとで地図で調べたら、どうも飯綱山らしい。
一不動から先はとにかく花だらけの稜線歩きだ。
いわゆる痩せ尾根という感じの稜線ではなく、樹木や草花が多い。
特にハクサンオミナエシとミヤマママコナはたくさん咲いていて、ずっと道の脇を彩ってくれていた。
8時57分 三文殊。
一不動までの道標の無さに比べたら、ものすごく短いピッチで道標が出てくる。
こりゃ、十が出てくるまで、すぐかもな〜。
なーんて思っていたら、目の前にものすごい風景。がーっと下った先に山。
その向こうに山。さらに向こうに山。
え、あれをきっちり登って下って登って下るの?いったいどれが高妻山なの〜?
一番手前だと嬉しいんだけど。
そんなワケはない。
道はそれほど歩きづらくはないが、時々木の根っこを足場にして無理やり登らないとならない場所があったりする。
この木の根っこ、私の体重を支えられるのか?
9時15分 四普賢。
こんな草に埋もれている錆びたプレートじゃ、見落とすでしょ〜っ。
9時34分 五地蔵。
一応ここも五地蔵山という山のピークではある。
少し進むと、右に行くと五地蔵山の山頂だというプレートがあった。
行ってみたら、右写真みたいなちょっとしたスペースがあっただけだ。
三角点さえなかった。
しかも、霧が出てきて、眺望もない。
ちょっと無駄に寄り道した気分だった。
9時41分 六弥勒。
え、と思うくらいあっという間に六弥勒だった。登りも下りもしていなかったと思う。
登りの場合、六弥勒の祠のすぐ手前に右にそれる道がある。ピンクのリボンがたくさんついているので、道と分かる。
これが弥勒尾根新道で、沢を下らないですむ道だ。
山地図には載っていないのだが、ネットにあったので、場所が確認できればこの道を利用する予定だった。
よし、帰りはここから下るぞ。
六弥勒から先はちょっと下って、ちょっと登る。
9時50分 七薬師。
七薬師から先が、まあ、下ること下ること。
よくもまあ、こんなに下らせるわね〜っと恨み言を言いたくなるくらい下る。
だったら登らせるな〜っと腹が立つ。
なんと10分近く、ずっと下り続けた。
そこから先、きっちりその分、もしくはそれ以上に登る。
なんだか、今までと感じが違う、岩っぽい道になってきた。
木も少なく、直射日光が当たってかなり暑い。
時折、谷から吹き上げる風が涼しくて、なんとかがんばれる。
このあたり、ヨツバヒヨドリにたくさんのアサギマダラが吸蜜に来ていた。
10時22分 八観音。
いつもは沢筋で見ることの多いキベリタテハまで姿を見せてくれて、蝶好きは大喜び。
八観音の先も小さく下って登る。
10時34分 九勢至。
ここに至って、目の前にデンと高妻山が覆いかぶさる。
足、ヘロヘロなんですけどぉ。
目の前の山に登るんですか?ホントーですか?
雲で半分見えないが、おかげできっちりはっきり登るラインがよく見える。
右がわのラインの通りに登ります。
ううっ、途中からものすごい角度になっているじゃないか。
で、九勢至から20分間写真を撮っていない。足がガクガク、気持ちもヘロヘロ。とにかく、1歩ずつ無理やり足を前に運ぶしかない。
左写真が九勢至から20分後の角度が急に変わるあたりだ。
そこまでは普通に歩けたが、そこからは右写真のようによっこらしょっと勢いをつけて体重を持ち上げる必要のある場所だらけになる。
岩は土に埋もれた状態だけのものも多く、浮石になっていたりするので、危険だ。
おまけに、鎖やロープといった補助になるものは一切設置されていない。
途中、我々よりも15分ほど早く駐車場を出発した隣に駐車していたご夫婦とすれ違う。う、早い。「もう少しですよ」と言ってくれたけど、たぶん、それは嘘だろう〜。
さらに雨後は沢になりそうなジメっとした暗い石だらけの急登になる。
ここは蚊も多く、立ち止まるとたちまち餌食になる。肉体的にガタガタなのに、精神的にもダメージを受けてしまう。
なんて山なんだ、高妻山。
後ろから単独の青年が軽快に我々を追い越して行く。
「もう少しですね」と言っていたけど、たぶん、それも嘘だろう〜。
11時34分 ようやく急登が終了して、なだらかな場所になった。
11時41分 十阿弥陀。
と、遠かったぞぉ〜っ、十阿弥陀〜っ。
九から十の間の長さったら、三途の川ほどありそうだぞぉ〜っ。
しかし、山頂は十阿弥陀ではない。
まだもう少し先に行かなくてはならない。
十阿弥陀から先は、巨大な岩が巨人によって砕かれて無造作に積まれたような場所を歩かなければならない。
いったい、どんな自然の力が作用して、山頂近くにこんなにバラバラにされた大岩が重なることになったんだろう。
どこが足場なんだか分からない大岩をクリアして、ようやく道標が見えた。
11時49分 山頂到着。
道標のそばに、我々の少し先を歩いていた単独男性が休憩していて、ご苦労様と迎えてくれた。
山頂には他に2組ほどの登山者がいた。
それほど広い山頂ではないが、とにかく大岩がゴロゴロしていて、腰を下ろすのには苦労しない。
とんでもなく疲労しているのは充分承知していたので、靴をぬぎ、ついでに靴下までぬいで、どっかりと休憩した。
惜しいことに、雲が出てきて、視界はゼロ。
眺望が素晴らしい山らしいのに。
でも、直射日光がさえぎられて、休憩にはよかったかも。
我々が昼食をとっている間に先に着いていた人たちは全て下山し、入れ替わりにご夫婦が1組やって来た。
つい、戦友みたいに「すごい山でしたね〜」と挨拶をかわす。
山頂は蝶が多くて、なんだかパラダイスみたいだった。
12時47分 下山開始。
12時53分 十阿弥陀。
右写真と左写真は実はつながってます。
これから下る道のりがよく分かる。
ただし、ずーっとこの尾根を進むワケじゃなく、きっと戸隠山まで続いている尾根だと思う。たぶん。
13時45分 九勢至。
13時57分 八観音。
14時30分 七薬師。
登山時によくもまあ下らせやがって、と恨んだ場所はもちろん登りになる。
だれもが七薬師までの登り返しはへたばるらしい。
でも、実は私的には思ったよりも大変ではなかった。
14時37分 六弥勒。
六弥勒の祠の裏がわから伸びる弥勒尾根新道が下山に選んだ道だ。
我々よりも先に下っていたご夫婦がちょうど休憩を追えて、やはり弥勒尾根新道から下るところだった。
我々も小休止のあと、彼らの後を追った。
最初、笹がちで下の牧場なども見通せる道だった。
ゴゼンタチバナの実が真っ赤になっていて可愛らしい。
しかし、すぐに樹林帯に入って、うっそうとした見通しの全くない道になる。
新しく作られた道らしく、地面は腐葉土のようで、ふかふかしている。
しかし、笹の根っこ、木の根っこなどが分かりづらく地面を這っていて、それに乗ると滑るし、つまづきやすい。
意外にも急角度で下る場所などもある。
岩場や沢よりは格段に安全ではあるが、ただひたすら下るだけの道だ。
唯一、蝶好きにごほうびがあったのが、いいニオイのする木の花にたくさんのミヤマカラスアゲハが遊んでいたことくらい。
あとは、ホントーに何もない。
15時50分頃、赤っぽい杉の巨木に出会う。
見事なまでに道標も眺望も特徴もまったく何もない道をただただ下る。
「登山道」というプレートは六弥勒の入り口からすぐと、左写真の場所の2箇所だけだった。
ちなみに、左写真のプレートを通過した時刻は、16時20分。
そこから5分ほどで道が平らになり、笹が目立つようになる。
16時30分 ポン、と沢に出た。
先に下ったご夫婦が沢の水で靴を洗ったりしていた。
その先に牧場の広い牧草地が見える。
ようやくただひたすら下るだけの単調な弥勒尾根新道が終了した。
一応、沢と牧草地の境目に小さな手書きの地図などがあるが、沢から牧草地に出て、右側に行っても左側に行っても駐車スペースには戻れるらしい。
ということで、我々は沢を背にして左側を選択。沢を左手に見て、歩く。
牧草地なもんで、牛の落し物があちこちにあるので、歩くのに注意が必要だ。
すぐに道になって、右側に進む。
ちょっと歩くと、前方はすっかりファミリーのキャンプ地になっていて、とても気楽な格好の人たちが夏休みを堪能していた。
ああ、我々は汗まみれくたくたの登山者ですぅ。別世界の住民みたいだなぁ。
草をはむ牛や馬を見ながら、まっすぐ進むと、朝来た「牛放牧中」と書かれた入り口に出た。
16時52分 駐車スペース到着。
いやはや、ホントーにご苦労様でした。

実は、高妻山は、平ケ岳に登る際に訓練として登るつもりの山だった。つまり、平ケ岳よりも先に登っておかなきゃならないだろう〜、という山なのだ。が、日暮れの時間の関係上、7月に平ケ岳に行ってしまわないと、われわれは日没に負けると判断。結局、高妻山を8月に持ってくることになった。
しかし、実は平ケ岳か高妻山かどちらにするか、という状況の7月で、私が選んだのが平ケ岳。なぜなら、高妻山は登ったり下ったりがたくさんある山で、長丁場に加えてのアップダウンでは平ケ岳より大変な山だろう、と思ったのだ。
その判断は正解、というよりも、むしろかなり不正解だった。「大変な山」どころか、ものすごくとんでもなくかなり大大大変な山だった。登る人の得意分野にもよるが、我々には平ケ岳よりもずっと過酷な山だった。
何が過酷って、まず一不動までが長い。ほぼ沢という道を登るのが苦手な人は一不動で参ってしまうだろう。なにせここから先が二から十あるのだ。精神的によろしくない。さらに九勢至から十阿弥陀までも長い。長いうえに急登のうえにジメジメしていて虫だらけ。我々はまだトンボが虫を食べてくれる時期に突入していたので、多少少なかったが、それでも悩まされた。これが春から初夏ともなると、いったいどれほどの虫がいるか想像したくない。
さらに、下りに選んだ弥勒尾根新道が見事なまでに何の道標もなく、いったいいつ着くのかわからない不安感も手伝って精神的に疲弊した。
夏休みのとてもいい時期に、百名山であるこの山に、あまり登山者がいないのが不思議だったが、こんなに大変な山なら、簡単に登ろうという人が少ないのも頷ける。
だが、一不動から先はたくさんの花が咲き、景色もよく、歩いていて楽しい道である。山頂の巨岩の積み重ねもちょっと感動する。苦労して登った甲斐のある山であることは確かである。
我々はさすがに疲れたし、弥勒尾根新道を使ったので予定よりも30分ほど早く着いたので、温泉に入って帰るとにしたが、ちょっとした選択ミスをした。一番近い神告温泉の日帰り温泉に行ったのだが、なんと超満員。女性風呂に至ってはカラン待ちが脱衣室まで伸びていて、シャワーにたどりつくまで10分以上全裸で待つことになってしまった。理由は数あるキャンプ場の利用者が殺到したため。やっぱり温泉に入りたいし、ちょうど時刻的にも子供づれでお風呂に入る時間だったワケだ。もし汗を流したければ、多少自動車に乗る時間がのびても、キャンプ場の近くない温泉にしたほうがよいと思います。
お風呂に入って、帰路についた頃、急な土砂降りの雨が降って来た。ちょっと登山の出発を遅くしていたら、山中でこの土砂降りにあっていたかしらん。結果オーライだったじゃないの。ものすごく疲れたけど、いい夏登山だった。新潟県境に山頂がある百名山も制覇したし。充分な達成感を得られました。

高妻山 
新潟方面からだと最寄ICは上信越自動車道信濃町IC。国道18号を経て県道36号に入り、飯綱山のすそのをぐるっと回って戸隠牧場に行く。ナビに入れるなら、目的地を戸隠牧場にするとよい。牧場の手前にキャンプ場があって、ちょっと戸惑うが、キャンプ場をかすめて右折する感じで牧場の前まで行く。すると、食事どころが二軒道の両側にある場所になるので、そのお店の手前の砂利敷きの駐車スペースに駐車する。
トイレは牧場の中にある。
登山道入り口は牧場の中にある。躊躇せず牧場の中に入り、案内にしたがって進めばよい。
あとは、一不動までは沢登りと思ってもいいくらいの道だ。幾度となく渡渉し、幾度となく沢の中なんじゃないの、という道を進むので、スパッツをつけたほうが汚れない。ちょっと危険な鎖場もある。一不動から先も登っては下り、登っては下りの繰り返し。さらに九勢至から先は頂上に至るまで岩をよじ登るような箇所がいくつか出現する。気楽に考えては絶対に登れない山なので心して挑んで欲しい。
一不動の避難小屋には携帯トイレのブースがあり、中に凝固剤入りのシートの入った袋も用意されている。使用した袋は持ち帰り、県道36号の牧場入り口のバス停にあるトイレに設置されている回収ボックスに入れる仕組みだ。


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