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滝のほぼ全容が見えた2008年12月のレポはこちら




三十三丈滝
これが精一杯の写真である。
発見した場所からかなり下の谷底にあったために、
斜面に生えた木々の枝をかいくぐっての
撮影になっている。
滝前が開けた場所はなく、
しかも、滝つぼまで見通せる場所もなかった。



実際にはこれよりも遠くに見えている。
ダンナの一眼でマニュアルで撮影。
私のコンデジでは、木の枝にピントがきて
撮影不可能だった。



滝の上流をかろうじて撮影。
大滝として落下する前に数段落差があるのが
見てとれる。





こちらは、私がそうではないかと思った滝。
小俣川が形成する谷の側面に落ちる滝だ。
おそらく、登山道の六合目と七合目の間で
見られる滝のうちのどちらかと思われるが、
特定はできない。




見た目はこんな感じ。
滝と自分の間に枝のない視界を得るには
やはりぶなの道からそれて、
少し斜面を下る必要がある。
上の写真の滝の下の黒々とした部分が
小俣川の谷で、谷底はさらに下だ。

















この日の猿飛滝。
水量が多くて、迫力だったが、
滝下に行くには河原も水の下で無理だった。
2007/11/25  三十三丈滝(落差?) 加茂市
左の写真を見てもらうと疑問に思うことだろう。なぜ、こんな写真しか撮れないでいる滝を一つのページで取り上げるのだろう、と。
実はこの滝は、我が家では長年探し続けていた滝なのである。
こんな写真であっても、ついに姿をとらえたということだけで快挙であり、どうしても1ページを使って紹介したい事柄なのだ。
三十三丈滝。
新潟の地図を開けば、県のぼど真ん中に座する粟ケ岳の中ほどにかならず記されている滝である。
我々の住む場所からもそれほど遠い所ではないので、滝めぐりを始めた頃からこの滝だけは見ておかないといけない滝だと思っていた。
あらゆるものを調べて、粟ケ岳の小俣沢登山道から行けるかもしれない、とチャレンジしたのは2004年秋のことである。(新潟の滝80ゼンデラ滝
ところがこの小俣沢沿いの登山道はもうかなりの昔に廃道になっていて、ゼンデラ滝という滝のあたりで消滅していた。とても三十三丈滝には到達できない距離だった。
三十三丈滝の記述は、粟ケ岳を登山した人のページに時々登場する。しかし、その姿がとらえられたものはない。記述によれば、下田の五百川から登るコースの五合目あたりで三十三丈滝の音が聞こえるというのだ。
では、そちらがわからのアプローチはできないものか。2006年初夏、粟ケ岳の登山もかねて捜索。(新潟の104粟ケ岳登山道から見える滝たち) 結局滝名の入った道標は見つけたが、その存在を確認するまでに至らなかった。
もし滝を見ることができるとしたら、木々の葉っぱが落ちきった時でなければ無理だろうという結論になった。
そんなこんなで時を経て2007年の初冬、ついにその機会を得たのだった。
実はこの日の前々日、県北にある百選の滝「鈴ケ滝」でオフをする予定だった。が、突然の降雪のためやむなく中止。この日は朝からよく晴れて気温も上がる予報だったので「鈴ケ滝」に行ってもよかった。だが、滝までの林道にどれほど雪が残っているか予想できないうえに、我々のメインの自動車がメンテナンスのため使用できない。使える自動車はピンクの軽のみである。「鈴ケ滝」はちょっと無理でしょう、ということになった。
では、どこに行くのか。せっかくの素晴らしい天気を逃したら、絶対に損である。
近場でこの好天を無駄にしない滝は無いものか。あるでしょう、三十三丈滝。
前日に仕事しながらながめた粟ケ岳は確かに白かったものの、五合目くらいまでならいいお天気で雪は無くなっているに違いない。木々の葉っぱも落ちきって、きっと三十三丈滝を探せるに違いない。
今まで何度も後悔しているのだが、根拠のない確信のもとに行動するのが我々である。あっさりと前日の就寝前に行くことを決めてしまって、翌日に備えた。

11月25日は予報どおり晴天だった。
遠くない場所なので、だらだら起き、だらだら出発。登山口に着いたのは、10時過ぎである。
ふと見ると、なんだから見覚えのある自動車がある。あれ〜、あの自動車はセフコの森さんの自動車じゃないかしらん。二週間前の日曜日、寺泊でお茶した時にセフコの森さんご夫妻と三十三丈滝はどこにあるだろうか、どうやったら見えるだろうか、という話をしたのだった。もしかしたら、今日は粟ケ岳に行っているかも、という予感はあった。
果たして、ダンナが登山届けのノートに名まえを発見。おお、この出発時間からすると、登頂が目的だぞ。山頂は真っ白だったのに。さすがだ〜。
  
駐車場の自動車はこれくらいの数。
根性も雪山の経験も装備もない我々は、最初から五合目が目的地である。すっかり秋も深まりすぎて冬の様子になった登山道をのんびり歩きだした。
ところで、粟ケ岳のこのコースの五合目までは2回登っている。登っているのに、どんな道だったかものの見事に忘れてしまっていた。
なにせ、五合目粟薬師が四合目だと信じ込んでした。
途中の岩場である粟石が三合目、で、猿飛滝が二合目だと覚え間違っている。しかも、岩場と粟薬師の間がどんな感じだったのか、どんなにがんばっても思い出せない。つまり、手軽に五合目まで行けると思い込んでいるのだ。うーむ、実に都合のよい脳みそである。
駐車場は一合目なので、次は二合目。祓川沿いに歩き、この川を渡ったところで二合目になった。
「あれ、二合目は猿飛滝じゃなかったっけ」
「いや、滝はただ滝」
まだマヌケなまま進む。
その猿飛滝の落ち口の沢を渡る場所まで来て、ゲッとなった。
水が多い。ここで困ったことは過去2回一度もなかった。が、対岸の着地する部分まで水が来ていて、私の短い足ではその向こう側の水の無い場所まではとても届かないのだ。
ダンナが水のかぶっている着地する石に水しぶきをあげて着地して渡った。大丈夫、滑らない。そう太鼓判を押してくれても、私はこういうのは苦手なのだ。ダンナが滑らなくても私は滑るかもしれないじゃないか。よもやこんな場所でじたばたするとは。これくらいの沢、橋くらい渡しておけ〜。
せ、せ、せえの。で派手に水しぶきを上げて渡る。幸い滑らなかったし、靴の中にも水は入らなかった。だが、渡渉はここだけではなかった。元堂の手前にも沢を渡る場所があるのだ。こっちのほうが幅が広くてやっかいだ。だが、途中に飛び石があり、それを利用すれば大丈夫。いや、普通の人なら大丈夫。私はかなりじたばたして渡渉。ああ、こんな場所で困っていてこの先大丈夫なのか。
  
元堂近くの沢。水が多いじゃないのよぉ。
青空の下、ブナの木の林を登って行く。まだ黄色い葉っぱが残っていて、とても綺麗だ。気持ちいいなぁ、体がなまっていて、登りはちょっとキツイけど、などと思っていたら、三合目「八汐尾根」の道標。あれ〜、三合目ってば、岩場じゃなかったのぉ〜?記憶、欠落してます、八汐尾根。
このあたりから消えないでいる雪がチラホラ登山道の脇に見え始めた。
    
  
残った紅葉が綺麗な登山道。チラホラ雪もみえはじめる。
落ち葉を踏みしめながら上ると松の木が現れはじめ、ついに岩場、四合目「粟石」である。あらやだ、粟石って、四合目だったのね。じゃあ、粟薬師は五合目だったのね。ひょえ〜、目的地が一合増えた(←こらこら)
粟石からの眺めは素晴らしかった。残った雪の白、残った紅葉たち。冬の低い日差し。山並みと遠い田園風景。
    
  
岩場を登るダンナ。岩場から見える初冬の風景は絶景だ。
ちょっと危険な岩場を登ると、いよいよ雪が目立ち始めた。積雪はくるぶしほどもないのだが、一面真っ白になってしまった。場所によっては斜面にへばりつくような道もあるので、滑ると怖い。軽アイゼンなどは準備していなかったので、慎重に歩いた。
水場である薬師清水を過ぎると、ものすごい登りになった。ああ、こんな登り記憶にない。景色としては白い雪と木と青い空で素晴らしいのだが、登りがキツイ。記憶になかっただけキツイ。私のザルでできた脳みそを呪う。
しかも、雪があるので、前に進んでいるつもりなのにずずずーーーーっと後ろに下がってしまう。蟻地獄みたいだ。
    
  
いよいよ雪が目立ち始める。綺麗だが、滑る。
ひいひい言いながらやっと五合目粟薬師にたどりついた。
粟薬師も雪の中である。
  
粟薬師の避難小屋。
雪がくるぶし以上に積もっていたので、これ以上は無理だろうとダンナが言った。だが、三十三丈滝の道標のあった場所まではあと少しである。そこまで行って確認するために来たんじゃないのか。
幸いなことに、セフコの森さんはじめ積雪後に登った人たちの足跡がついている。それをたどれば、大丈夫だろう。
粟薬師を通り過ぎ、道標まで来る。
うーむ、ここからは何も見えない。木々の葉っぱは落ちているが、雑木の枝々が密にからまって視界をふさいでいる。
だが、大きな水音は聞こえる。これが三十三丈滝の音なのか、それともただの沢の早瀬の音なのかは分からないのだが。
この道標の少し手前に分岐がある。
分岐には、山頂に向かう道と粟薬師に下る道と、もう一つブナの道および加茂登山口に通じる道があることになっている。つまり三叉路である。
このブナの道方面に行けば滝が見える場所があるのではないか。
先々週セフコの森さんともそんなふうに話していた。今回はそっちに向かうつもりでいた。
こちらがわに行くとぶなの道という尾根伝いの道を3時間かけて袴腰山に行くことができる。もちろん袴腰山に行くつもりはない。
道しるべによると途中から加茂登山口の道が分かれていて、それがもしかしたら廃道となった小俣川沿いの登山道かもしれない、という期待があった。だとするなら、三十三丈滝に最も近づけるはずなのだ。
    
  
分岐から続くぶなの道。幸い踏み跡があった。
ぶなの道も雪に埋もれていた。だが明確な踏み跡があり、それを利用して行けばよかった。もしかしたら、セフコの森さんが探索に行ったのかもね、と言っていたが、どうやらそうではなくてナメコなどのキノコを取りに来ていた人のものらしい。
三叉路からは下りになる。途中途中で右側の谷に近寄っては滝の存在を探すことを繰り返して進んだ。
そんな中、木々の間に、谷ではなくて対岸の山の中腹から落ちる長い水流を発見した。
「あった、滝!」
私はそれが絶対に三十三丈滝だと思った。
なにせ、長い。
三十三丈といえば百メートルに近い。だとすると、かなり高い場所から落ちる沢滝ではないか、と推測していたのである。あの道標からもちょうど正面の斜面になるではないか。
あったあった、と大喜びした。ついに三十三丈滝をとらえた。
だが、ダンナは納得していなかった。
地図上では三十三丈滝は小俣川本流の滝なのである。小俣川に落ちる支流の滝であってはならない。それに、登山道に合った道標には、「この下に三十三丈ほどもある滝があります」とあったではないか。あの滝では下ではなく正面になってしまう。
それに、この水音。
あの滝では遠すぎてこの音を発している滝とは到底思えない。
絶対にあれだと言い張る私をほっといてダンナはもう少し探すと下り始めた。
ぶなの道を水音を頼りに下り、一番音が大きくなったあたりで道を右側にそれた。斜面がなだらかになっているところを狙って慎重に雪の上を下って行く。
いつどこで崖になっているかわからないので、常に木につかまったりしながらである。
とにかく、水の音の正体を探らなければならない。
沢の早瀬だとしても、その沢自体が見える場所はないものだろうか。
あまりにも谷が深すぎて、沢自体が見えないのである。沢さえ見えれば滝があるのか無いのかくらいの推測はできるのに。
少しずつダンナが下りて行く。
その先崖になっていそうな場所であの木まで行ってみる、と進んで行った。
そして、
「あった」
と、驚きの表情で私を振り返った。
「ほら、あそこ」
と指差すが、私の場所からは全く分からない。
ちょっと怖かったがダンナのいる場所まで下って行くしかない。
下って行くしか・・・ずるっ、ずべっ。
転んだ。
「痛い」
滝を見ていたダンナが振り返って、仰向けに転がっている私を発見。
「おまえ、いつの間に転んだ?」
・・・たった今しがたです。
この転んだ勢いで雪を滑って崖からダイブしたくない。ものすごく迂回してできるだけ斜面の緩い、木の多い場所からダンナに近づいた。
ダンナのそばまで行って、ダンナのさす指の先をたどっても、さっぱり分からなかった。
この木の枝のさらに向こうだと言われ、自分の想定していた高さよりかなり下、斜面ギリギリの場所を辿って行くと、果たして白いものが見えた。網目より細かくからんだ木と木の小枝のさらに向こうである。
「あれは、滝のかしらだね」
つまり、滝の落ち口である。水が集まって落下するほんのその場所だけ見える。
遠い。障害物が多すぎる。だが、あの水量はどうだ。ものすごい勢いで水が落ちているではないか。
どんなにがんばっても、滝の水がその先どれほど落下してどんな滝つぼに向かっているのかわからなかった。
だが、あれが三十三丈滝であることに間違いなかった。
遠く対岸に見える細い支流の沢滝とは役者が違う。本流の全てを集めた大瀑布だ。
「すごいね」
見える範囲が半分なのか三分の一なのか、それともほんの十分の一なのか、それさえもわからないのだが、それでも迫力があった。
崖を迂回して、できるだけ緩い斜面を選択して滝に近づく選択肢もあった。だが、我々は素人である。たった2人で(しかも、そのうち1人はこのお荷物でしかない私である)危険を冒して行くわけにはいかなかった。
もっとよく準備をして、どんなルートがあるか確認した上でまた来よう。今日はどこにどんな規模の滝があるか確認できただけでいいことにしよう。
一部しか見れなかったとしても、大満足だった。
どうやってこんな場所まで下ってきたんだ、という斜面をずるずる滑りなから登ってぶなの道に復帰。もしかしたら、このぶなの道をもう少し下ったら道からも滝が見えるかもしれないと思って、少し下ってみたが、滝の音さえも遠ざかって見える場所はなかった。
一番下ったあたりで諦めて、(ぶなの道は稜線を結んでいるので登ったり下ったりする道だ)粟薬師に戻った。
粟薬師の避難小屋の中で昼食。天気が好かったので外で食べてもよかったのだが、雪だらけで腰を落ち着ける場所がなかった。こんな時、避難小屋はありがたい。
雪だらけにもかかわらず、汗まみれになった上着などを乾かしながら小一時間のんびりしていたら、キノコ採りの人が通りかかった。スーパーの袋に3つもナメコらしいキノコを持っていた。すごいんだなぁ、粟ケ岳って。
その後、1時間少々かかって下山。
  
紅葉に中に戻って行く。
もう午後3時を回っていたので、セフコの森さん夫妻はいなくなっているかと思ったら、自動車がまだあった。かなり苦労して登頂された様子はセフコの森さんのレポでご覧下さい。
下山の後、夕日に赤く染まる八木ケ鼻を見ながら「いい湯らてぃ」で汗を流して帰宅。
あまりいい写真は撮れなかったが、ついに三十三丈滝を捕らえた。
んがお工房の念願が果たせた一日となった。
交通
粟ケ岳五百川登山口
最寄ICは、北陸自動車道三条燕IC。インターを出たら左折。そのまままっすぐ進み、石上大橋を渡る。この道は国道289号線である。あとは国道289号をはずれないようにひたすらまっすぐに下田方面に進む。清流大橋で五十嵐川を渡ると旧下田村である。さらにまっすぐに進むとT字にぶつかる。ここは右に。まだ国道289号である。ここから先もとにかく国道289号をはずれないようにかなり進むと、道の駅漢学の里下田がある。それを通り越してまだ進む。
ようやく前方に八木ケ鼻が近づいて来る。
右に曲がると「いい湯らてぃ」という表示が出て来るのでその通りに右に。(ここをまっすぐに行くと八木ケ鼻直下の駐車場に行けるのだが)八木ケ鼻大橋等2つの連なった橋を渡り、左に「いい湯らてぃ」の建物を見ながら通り越すと信号になる。
国道289号はここを右折する。
が、粟ケ岳登山道へはここを直進する。ちょうど「いい湯らてぃ」の遠いほうの駐車場の真ん中を通る道である。
直進しつつ集落を通りこすと、左に川が出て来る。祓川である。川沿いに少し走ると右側に第一の駐車場がある。駐車場の向こう側にマスの釣掘りの文字が見えるので目印になる。
駐車場の入り口に一合目の駐車場をご利用くださいと書いてある。駐車場の斜め向かいに祓川を渡る橋があり、そちらに向かって進む。
この先は棚田状の田んぼがつらなっている細い道である。しばらくこの細い道を登ると20台くらい駐車可の駐車場がある。

三十三丈滝
登山口より1時間強登った五合目粟薬師の少し上にあるぶなの道との分岐点近くに三十三丈滝の道標がある。
ここから滝は見えない。また、ここから滝に向かってやぶを下ろうとしては絶対にいけない
なぜなら、滝はこの道標のある斜面の下の谷から落下しているのである。もし斜面を転げ落ちたら谷に転落した上に滝からも転落することになる。この道標の場所からは滝は絶対に見えないし近づくこともできない。また、道標のある斜面はかなり急である。滝についていえば、この道標は全く役にたたないどころか、危険きわまりないことを念頭においておこう。
滝に最も近いのは、ぶなの道側に進んで下り、最初の底部まで下りきらない場所である。
ただし、ここからも遠望なうえに、雑木の枝でほとんど見えない。
本当に滝を全部見たいのであれば、小俣川を遡行するか、とんでもない長さのザイルが必要となる。素人は近づいてはいけない。


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